日照をめぐる法規制

 日照をめぐる法規割には、二つの側面があります。
 第一に、建物等の建築についての、国や各自治体による建築行政上の取り締まりの法律があります。都市計画法、建築基準法およびこれらの法律にあるいろいろの基準を各地域に具体的に割りつける各自治体の条例などがそれです。ただ、これらの建築規制は、商業地域、工業地域、住居地域など、各種の用途地域を指定し、それに応じて建物の大きさや用途を定めることを主な目的としており、しかも、建築行政の担当者である建築主事は、申請のあった建築計画がこれらの諸規制に適合しているかどうかを確認するだけであって(建築確認)、それ以外の政策的配慮を加えて裁量によって許可、不許可を決する権限をもつものではない、とされております。
 したがって、これらの建築行政上の規制が日照の保護を十分に考慮していない場合には、建築行政にすべてを期待することはできない、ということになります。建ぺい率、容積率、北側斜線制限、さらには日影規制と、日照にかかわる規制もだんだん整備されてきましたが、個別具体的なケースでは、必ずしもその規制は十分でないこともありうると思われます。そこで、自治体によっては、地域住民の強い要望もあって、さらにきびしい基準ないし規制方法を指導要綱で定め、建築主に対してこれをも守るよう行政指導しているところもありますが、ただ、これは法律ではなく強制力がありませんので、いろいろ問題もあります。

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 第二に、国や自治体による取り締まりとは別に、私人間の日照紛争を、典型的には民事の裁判所を通じて調整するための法律が考えられます。これは、被害者が建築主を相手どって訴え、加害建築の差止めや損害賠償を求めた場合に、裁判所がその判断の基準とする法律です。近年は、逆に、建築主が、建築工事を阻止しようと現場に坐り込んだり、極端な内容のビラを貼ったりした住民運動の人たちを相手どって、これを行き過ぎだとして建築妨害の禁止や損害賠償を求めて訴えることもあります。
 ところが、このような私人間の日照紛争を調整するための法律としては、一応民法が考えられますが、この法律には、とくに日照を配慮した特別の規定はありません。そこで、裁判所は、一般規定ないし一般の制度にいろいろの解釈論なるものを加えて判断するほかはない、というのが現状です。
 そこで、日照妨害の法的なしくみですが(後に述べる眺望妨害もそうですが)、伝統的な土地所有権という観点からは、消極的侵害と特長づけられます。すなわち、日照や眺望の侵害は、従来、他人の土地の上を利用してこれを享受していたのに、その他人が自分の土地を建物等の建築に利用したためにこれを消極的にさえぎられた、という性格をもちます。そして、他人の土地の上をこのように利用することは、当然には自分の土地所有権の内容には属さないのです。
 それにもかかわらず、日照その他の生活利益をめぐる近隣者相互間の利害を調整するために土地の利用を規制するものとして、第一次的には公共の福祉の観点からする前述の建築行政上の規制があるわけです。この建築行政上の規制を上廻って、さらに日照権や眺望権を主張することは、ヨーロッパやアメリカでは原則として認められていないようです。
 しかしながら、第二に、比較的日照に恵まれ、したがって日照に大きく依存する生活様式を伝統的にとってきているわが国では、これだけでは必ずしも十分ではありません。そこで、前に述べた土地所有権の範囲という観点のほかに、日照被害者の人格権など、その快適な生活をする利益を前面に押し出し、日照妨害はこれを侵害するものと捉え直されてきました。そして、被害の程度、地域性をはじめ諸般の事情を総合的に考慮して、がまんすべき程度(受忍限度)をこえると判断される場合には、建築の差止めや損害賠償を請求することが認められるようになりました。その際、その建築が建築行政上の規制に適合しているかどうかは、重要ではありますが、必ずしも決め手にはなりません。
 最後に、建築行政上の規制と、私人間の紛争解決のための民事の裁判との関係について一言しますと、前者は、一定の政策的方向をもった都市づくりのための長期的、巨視的な観点からの、したがってある程度画一的な規制をするものであるのに対し、後者は、それでは汲みつくせない近隣者相互間の個別具体的な事情のもとでの妥当な微調整をする役割をもつ、といえましょう。したがって、前者の日照保護の規制が不十分なときは、裁判所の関与する必要が大きくなるし、遂に、前者の規制がきめ細かくなれば、それだけ民事裁判のそれとのギャてフも小さくなるという関係にある、といえましょう。

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