日本の土地法制

 日本の土地法制は、明治以降、地租改正を出発点として、近代的法形態を導入し、それ以前のもろもろの封建的規制を撤廃し、近代化への道を歩むことになった。しかしそれにもかかわらず、戦前の土地制度は、いまだ基本的には、農業社会にふさわしい土地制度であったといえよう。そして、それは日本の農業社会の構造的特質を反映して、前近代的性格を色濃く残存させていた。その主要な特質は次の三つの点に要約することができる。

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 その第一の特質は、戦前の土地制度が、農村を中心に形成された地主的土地所有によって決定的影響を受けていたということです。戦前の地主階級は、今日の土地所有者屑と異なり、政治的に支配階級の一つを構成していたから、土地制度に関する諸立法も結局は地主階級の動向によって左右されるところがきわめて大きかった。衆議院の方は、時代の推移と共に資本家の代表が多くなり、地主の意向が必ずしも反映しなくなり、また議会から相対的に独立した天皇制官僚の意向も反映したから、土地の法律がすべて地主階級の要求どおりに実現したわけではなかったが、少なくとも昭和初期くらいまでは地主の要求が一番重要な立法のファクターであり、それ以降も資本家や官僚・軍部の要求とからみあって重要な役割を果したことは否定しえない。
 戦前の土地制度の第二の特質は、それが伝統的家族制度と結びつく家的所有の制度であったということです。この制度の下では、土地を典型とする不動産は、単に無業経営にとっての生産手段であるわけでなく、また自由に処分できる商品であるわけでもなく、それは「家」の格を象徴する財産であると考えられていた。同じ財産といっても、土地は、貯金や株のように他人に見えない財産でなく、他人に対してむしろ誇示しうる財産であり、土地面積の大きさが、その「家」の身分的高さを示していた。それゆえ、「家」の財産イコール家産としての土地は、よほどのことがなければ手放すべきではないものと考えられており、それを失うことは、家格の低下ないし「家」の崩壊を意味していた。もちろん、このような家産意識も、時代と共に弱くなっていったが、総体としていえば、やはり戦前の土地制度の大きな特色の一つであった。
 戦前の土地制度の第三の特質は、農村共同体の支配・管理下にある共同体的土地所有が広範に残存していたことです。いわゆる村落住民の共有地、入会地などがその典型的なものであり、歴史沿革的には、徳川時代の「村」イコール村落共同体の支配進退に委ねられていたものが、明治期以降も、その形を変えて、基本的には維持されたものです。それは、もともとは、自給自足経済の下で農業経営や生活のために不可欠な肥施料・燃料用の草木を共同で採取し、また牛馬を共同で放牧するための土地であったが、明治以降、金肥の導入、林業の発達、貨幣経済の浸透などの結果、採草放牧地から森林へ(農用林から経済林へ)と転換した。その転換の過程で入会共有地の中には個人分割されて個人有になったものも多く、前近代的共同体的所有の解体も一定程度まで進んだが、それにもかかわらず、戦前の貧村社会の中で、この種の共同体的土地所有は、なお重要な役割を果していた。
 以上見たように、戦前の土地制度は、地主的土地所有、「家」的土地所有、共同体的土地所有と、三重の意味で、戦前の農村社会の特質を反映し、これを支えていた。

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