明渡判決確定後の建物買取請求

所有地をAに貸し、Aはそこに建物を建てていました。昨年、借地期間が満了しましたので、Aに明渡しを求めましたが、Aが応じませんので、土地明渡しの訴訟を起こし、Aが建物買取請求をすることもないうちに、私の勝訴の判決が出され、Aが控訴しなかったので判決は確定しました。ところが、この期に及んでAは私に建物を買い取れ、と請求してきました。建物を買い取らなければならないでしょうか。
借地契約の更新が認められなかった場合の建物買取請求権は、借地人敗訴判決の確定後にもなお行使できるか、というのが本問の内容ですが、この点は、借地法一〇条の建物質取請求権においても同様ですから、二つのものを特には区別せずに説明しましょう。
なお、かような問題を生ずるのは、借地人ないし借地上建物の譲受人が買取請求という制度を知らず、敗訴して始めて教えられることがあるためだといわれていますが、はじめに、判決確定より以前の質取請求について少々ふれておきます。
建物買取請求は、裁判外でも自由に行使できますが、地主から建物収去、土地引渡の訴が起こされた場合に関しては、次のような判決例があります。すなわち、
賃貸借が終了したという事実に対しては争いつつ、もし終了したというのであれば建物の買取りを請求する、と条件的に主張することも適法です。
また、いわゆる仮定的抗弁として買取請求権の行使が主張された場合でも、その時点において権利行使があったものとみられ、原則として撤回できません。
さらに、訴訟上、いわゆる時期におくれた抗弁は、故意または重大な過失にもとづいており、かつそういう抗弁のために訴訟の完結をおくらせるときには、裁判所が却下できることになっていますが、判例は、建物取得者の買収請求が重過失で時期におくれたとされる案件につき、特別の証拠しらべが必要になったりして訴訟の完結をおくれさせるものではないから却下できない、としています。

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土地

勝訴判決が本問のように確定した場合、いざAに対し建物収去、土地明渡しの強制執行をかけようとする段になって、Aは、建物買取請求権を行使し、いわゆる異議の訴で執行を阻止できるでしょうか。
この問題で登場している判例は、いずれも下級審ですが、Aの起こす異議の訴を適法とし、あるいは適法であることを前提としています。肯定した例をやや立ち入って紹介しておきますと、まず、判決確定後でも、もちろん買取りを請求できるとした例示あります。ただし、これは、期間満了を理由とする地主の明渡請求が認められたら買取請求権は使えなくなるではないか、とする借地人の抗弁を斥ける際の説示です。
次は、判決確定後に買取請求をしたケースにつき、もし買収請求権の行使を許さないとすれば建物譲受人に酷であり、建物の効用維持をはかる制度の趣旨にも 反するとして、口頭弁論終結後も買収請求権の行使を認めた例ですが、同時履行ないし留置権の抗弁は異議の訴では提出できないとしています。この判決の考えによると、それらの抗弁は地主からの建物収去、土地明渡しの訴訟がなされているときに使うべきもので、地主のこの請求がいったん認められたのち、建物譲受人が買取請求をする段階ではもはや役に立たず、建物明渡しとは別に、代金請求するより仕方がない、ということになるわけです。
また、同じく判決確定後に建物取得者が買取請求をしてから異議の訴を起こした事案について、口頭弁論終結前に買取請求権の行使が期待されないときは民事訴訟法のいう終結後に生じた原因にあたる、とした例もありますが、この判決は、前の判決と異なり、建物取得者の留置権をも肯定しています。本問で最後の点が問題になれば、裁判所の判断を待つほかはありません。けだし、認否の基準となる公平は多少ズレるものだからです。
最後は、借地上建物の譲受人でなく彼から建物を賃借した者が訴訟当事者となっているケースですが、建物譲受人自身が敗訴判決確定後に買収請求をし、これを借家人が異議訴訟で援用したものです。この判決は、原審と異なり、借家人の上告を容れましたが、その前提として、建物買収請求権は「地上建物保護の政策的理由から建物の買主に認められた対価的取引の強制締結の効果の主張たるに止まるから、口頭弁論終結時までに当然その行使が被告たる買主に期待されるわけのものではなく、従って、口頭弁論終結前にその行使が可能であったとの一事を以て、終結後に行使された場合の法律効果が爾後の訴訟において主張されることを禁ずるのは失当」だと述べています。
買取請求者からの異議訴訟を許さないものは一つだけであり、しかもここにみましたとおり上告審で破棄されていますが、もし口頭弁論終結後の行使を許せば「訴訟において確定せられた権利に変動を生ぜしめることを認めることになり不当であるから」としています。
借地人ないし借地上述物の譲受人に対する問題の判決は、建物の収去と土地の明渡しを命じていますから、その後の買取請求で建物の所有権が地主に移ったときは、以前のままの債務名義で買取請求者つまり本間のAを建物から退去させうるかどうか、前問題となるわけです。もっとも、判決例では例外なく肯定されています。すなわち、建物退去は建物収去に包含され、その質的一部をなすから、後者の債務名義によって前者の強制執行をすることもできます。建物収去の前提として退去させうると解するの相当であり、買取請求があったというだけでこのことに変わりを生ずるものではありません。
建物収去の債務名義は、全く無効とな るものではなく、退去の限度でなおその効力を保有します。

土地
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