建物買取代金の不払い

知人から建物を譲り受けましたが、敷地が借地でしたので、地主に借地権譲受けの承諾を求めましたところ断わられました。やむなく、地主に建物の買取りを求めましたが、買取資金の調達ができないせいか、その後音沙汰もなく、私がその家に住みついて以来、もう五年にもなります。放っておいても、買取代金が時効で取れなくなるといった心配はないのでしょうか。また、これだけ長いあいだ音沙汰がないのだから、地主が私の借地権を認めたことになる、といった理屈は成り立たないでしょうか。
地主に建物の買取りを求めると、その建物について売買が行なわれたような結果になり、建物およびその敷地の引渡義務と、地主の代金支払義務とは、お互いに引換えに履行しなければなりません。ですから地主が建物、敷地を引き渡せと請求したときは、代金を支払わなければ応じられない、という抗弁を出すことができ、裁判所も、この抗弁権が行使されたならば、代金と引換えに建物の引渡しないし登記をせよと判決することになっています。このことは、本問のように買取請求があってから五年もなるのに、音沙汰がないという場合にでてくるいろいろな問題を解決するための、基本的考えになると思われます。

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土地

一般に債権は一〇年間行使しないと時効にかかって消滅しますが、同時履行の抗弁権がくっついた債権についても、やはりそのようにいえるのかどうかには、問題があります。このような債権は時効にかからないとまではいえないにしても、債権は時効により消滅しても同時履行の抗弁権は消滅時効にかからない、と考える余地は十分にあります。つまり、本問であと三年間このままの状態が続いたとすると、あなたの方から地主に対して代金を支払えと請求することはできなくなります。しかし、地主から家屋の引渡しや土地の明渡しを請求されたときは、代金と引換えでなければ応じられない、と主張することができると考えるべきでしょう。したがって、代金もとれず、家も引き渡さなければならない、という事態は絶対に生じない、と断言できると思います。
次にこれだけ長い間音沙汰がないのだから、地主が借地権を認めたのではないかという疑問ですが、認めたことにはならないでしょう。というのは、地主に地代相当額を支払われたこともかく、いわんや地主の方からそれを要求したこともないのですから、たんに、家に住みついて五年になるという事実だけから、金を取って土地を貸す意思が地主にあると推定するのは、いかにも強引すぎるからです。それでは、このょうな中途半端な状態を打開するには、どうしたらょいでしょうか。もちろん、代金さえ取れるなら家を引き渡してよいとお考えるならば、ことは比較的簡単で、買取代金の請求訴訟を起こされればよいのですが、通常はこのまま家に住むのを望んでいるはずですので、それを前提に話を進めたいと思います。
先きにもふれたとおり、地主の代金提供があるまで適法に建物に住むことができ、したがってまた、その敷地を適法に占有することになりますが、その間の地代相当額は不当別得になります。なぜそうなるかといえば、仮に本問の家を他人に貸しているとすれば、建物代金の支払をうけられないことによってその間の利息を取得することができない反面、その埋合わせとして家賃を取得できます。この家賃には、建物代金を元本とする利息相当額のほかに、敷地の地代額も加算されているのですから、家賃全部を取ると地代額だけ取りすぎということになるからです。つまり、買取請求権を行使したことにより、家屋の所有権は地主に移転し、地主は賃貸地上に自己の建物を所有することになり、譲渡人すなわち知人の借地権も、土地を賃借した目的を失って消滅するわけですから、土地使用につき法律上の原因をもたないことになり、地代相当額は、地主の損失により利得している、といえるからです。だから、地代相当額を地主に払わなければなりません。しかし、これを払わないといっても、家を引き渡さなければならなくなるわけではありません。ただ、地代相当額を払わなければならないことを知っているべきですから、民法七〇四条により、この相当額に年五分の割合による利息をつけなければならないでしょう。今までの分については仕方がないとして、これからは地代相当額につき利息を払うのは馬鹿らしいというのなら、今までの分と、今後の分を地主に支払い、地主が受け取るのを断れば、供託されたらよいでしょう。
地主が代金を払うから家を引き渡せと請求してくれば.一般諭としてこれを拒絶することはできません。しかし、五年以上も経つと貨幣価値も下がり、家の価格も土がっているでしょうから、地主がどのようなつもりで代金支払を延ばしていたかなど、地主とあなたの間の一切の事情を考慮したうえで、地主の引渡請求が信義誠実の原則にてらし権利の濫用とされたり、または引渡請求権が失効の原則により消滅した、という判決のでる可能性もあります。

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