抵当権の負担ある建物の買取請求

友人Aが転勤するので、頼まれてその居宅を一五〇〇万円で買いました。Aは、この建物を建てるとき、住宅金融公庫から金を借り、五〇〇万円の抵当権をつけました。譲渡のときにはまだ借金が四〇〇万円残っていましたが、公庫の諒解をえて、債務は私が引き受ける形にし、Aには、実際には一一〇〇万円を払っただけでした。 ところが、敷地が借地でしたので、地主から無断借地権譲渡ということで、契約を解除するから明け渡せといってきました。私はもちろん明渡し自体についても争うつもりですが、最悪の場合、解除になるとすれば、建物を地主に買い取らそうと思います。この場合、金融公庫の抵当権との関係はどうなるでしょうか。
借地人が抵 当に入れてある自分の建物を他へ譲渡したところ、敷地賃借権の譲渡に対する地主の承諾が得られなかったという場合において、建物取得者に買収請求を許すならば、 地主はひどく損をしそうです。しかし、負担があるからといって「必ずしも競売その他の方法により換価せられ買収請求の相手方である賃貸人において取得した物件の所有権を喪失するものとは限らず、殊に抵当権については不動産の買受人において抵当権の滌除をなすことができ、また滌除の手続を終わるまでは代金の支払を拒むことができるから抵当権の登記ある場合においても買取請求を以て信義誠実の原則に違反し無効であるとはいい難い」とされ、さらに、根抵当の極度額が建物時価の約五倍であるというように「抵当建物の時価が抵当債権より少額であり、これを完済できない場合においても、この抵当建物につき借地法一〇条の買収請求をなすことは、必らずしも土地賃貸人の不利益に帰することなく、権利の濫用とはならない」ともされています。
本問での買収請求が認められることは、まず問題がありませんが、買取請求は、こういった抵当権の負担がある場合のほか、
税金を滞納したり、一般債権者に対して債務を履行しなかったために、差押がなされている場合。
いわゆる代物弁済の予約や売買の予約などにもとづいて、請求権保全の仮登記がなされている場合
抵当物件となっている建物に借家人が居住している場合 などにおいても認められます。
また、本問は借地法一〇条関係の建物買取請求についてですが、同法四条二項の場合の場合、すなわち借地契約の更新がなかったた めに、借地人が、抵当に入れてある建物の買取りを請求する場合でも、同様に買取請求権はあるとされています。

スポンサーリンク
土地

抵当権の負担がある場合。建物のいわゆる完全価格から負担の価格を差し引いたものだという考え方もありえますが、判例では「借地法一〇条に基づく買収請求の対象たる建物の時価は、建物に抵当権の設定があっても鍼額されるべきではない」と解されています。したがって本問で、建物の客観的にみた時価がAから買った一五〇〇万円どおりだとしますと、四〇〇万円を差し引いて請求する必要がなく、買取価格を一五〇〇万円にしてよいわけです。ただ、後で述べますように、買取代金を払ってもらえる時期については注意してください。
差押がなされている場合。買取請求できることは前に説明しましたが、買取代金についても、他の場合と区別する必要はありませんから、完全価格を基準にしてよいと思います。
請求権保全の仮登記がある場合。これも、「そのようなことは、売主の担保責任の問題として考慮されるべき事項であって、建物の時価を定める場合には斟酌する必要はない」というように考えられています。
建物に賃借人がある場合。もし買った家に借家人がいたとしたら、買取代金は、下級審の判例によりますと、地主に対抗できる借家人であるときは、彼が占有している「部分の時価は賃借権の負担付のものとして評価すべきであり」借家契約や借家権承継の立証がないため、彼に対してあなたといっしょに明渡判決をするときは、空家としての価格によるべきです。この借家人ないし居住者がある場合だけは、その者を追い出せる理由がないかぎり、完全価格を基準にするようなことはできません。
一般の場合には、建物買取請求権を行使しますと、建物の引渡しと買取代金の支払は、買収請求者が主張したならば、いわゆる同時履行の関係に立ち、また留置権も認められますが、負担のついている場合は、少し違ってきます。抵当権のある場合を中心として説明していきましょう。
抵当権の負担がある場合。判例は、建物買取請求権の行使によって成立する売買にも、民法五七七条の適用ありと解しており、下級審では、五七八条も適用されるとしています。この結果、買収請求者つまり問題の建物の売主は、買主つまり土地所有者に対して、遅滞なく滌除の手続をせよとか、代金を供託せよと請求することができます。そして、この請求に土地所有者が応じなければ、彼は代金支払拒絶権を失って、建物の引渡しと代金の支払とは同時履行の関係に立つこととなりますがそういう請求がない以上、土地所有者は、滌除の手続が終わるまでのあいだ代金の支払を拒むことができ、買取請求者は、なにか特別の事情があると立証できないかぎり、同時履行の抗弁権も留置権も認められずして、無条件で建物を引き渡さなければなりません。
したがって本問で、買取代金を確実に取れるようにしようと思えば、買取請求とあわせて、地主に対し滌除または代金供託をせよと内容証明郵便で申し入れておくことが大切です。
なお、ここでは、抵当に入っている建物の買取りが問題になっていますが、買収請求者が買取請求後に建物を抵当に入れたという場合も、土地所有者は五七七条により滌除の手続きが済むまで代金の支払を拒むことができる、とされています。

土地
借地関係の終了/ 借地明渡請求の正当事由/ 借地の営業上利益の衝突/ 居住の必要性の衝突/ 借地人の必要性の稀薄/ 環境に不適合な借地利用/ 新地主による明渡請求/ 建物のない借地と期間満了/ 地主、借地人間の感情の対立/ 借地人の破産と借地権/ 更新料と立退料/ 明渡請求のない場合の買取請求/ 買取請求の対象/ 建物のないときの買取請求/ 二つの土地にまたがる建物の買取請求/ 建物の共有者の一人の買取請求/ 再築建物の買取請求/ 合意解消と買取請求/ 債務不履行による解除と買取請求/ 契約解除と建物譲受人の買取請求/ 抵当権の負担ある建物の買取請求/ 借地上建物の買取価格の計算/ 建物買取代金の不払い/ 明渡判決確定後の建物買取請求/ 借地人の必要費と有益費の償還/ 借地訴訟事件/ 借地非訟事件とその手続の特色/ 借地非訟事件の手続と費用/ 鑑定委員会/ 土地明渡しの即決和解/ 土地明渡の調停/ 地代滞納と仮処分/ 土地買収と借地権/ 区画整理と借地権/ 国有地の賃貸借/ 公園の一部を借りている場合/

       copyrght(c).土地の買い方ガイド.all rights reserved

スポンサーリンク

プライバシーポリシー