契約解除と建物譲受人の買取請求

土地をAに貸していましたが、ここ三年ほど地代を払いませんので、とうとう先月に、月末までに地代を全額払え。払わなければ契約を解除するという内容証明郵便を送ってやりました。ところが、今月はじめになってBという男がやってきて、土地の上の建物を先日Aから買い取って、登記も終ったから、借地の名義書換えをしてくれ、というのです。私が断ったところ、それなら建物を時価で買い取ってくれ、というのです。こんな場合にも、建物を買い取らなければならないのでしょうか。
地代滞納(債務不履行)によって借地契約の条件つき解除がなされた後で、借地上の建物の所有権を取得した者には、建物買取請求権が認められるかどうか、という問 題です。これは本問の前提問題ですが、まず何日までに支払わなければ、契約は当然に解除されたものとする旨の条件つき解除が有効なことは、いうまでもありません。むしろ普通には、そういう趣旨で内容証明郵便も出されたものと考えられますので、Aとの借地契約は先月末でなくなっているわけです。ただ、しばしば争いになるのは、その何日までにというのが相当の期間かどうかです。もし相当でなければ客観的に相当と認められる期間が経過するまで解除権は発生しないことになりますが、判例をみますと、昭和二九年当時で八〇〇〇円の延滞賃料を二日後に払えと催告した事案、一年ほど地代滞納があった場合において三日以内に支払わなければ解除すると通告した事案など、二日や三日しかないときでも、不当ではないと判断されています。したがって、本問のように半月も猶予期間を置いた催告は、たとえ三年分で仮りに相当な額になっても、むろん民法五四一条にいわゆる相当の期間を定めた適法な催告です。

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建物譲渡、買取請求および借地権消滅という三つのものの時期的先後によって、次のようにわかれて問題となります。
借地権消滅から建物譲渡から買取請求の場合。賃料不払いで解除された後に、建物を競落した者が買取請求をしたケースですが、判例によれば「借地法一〇条は借地権の存続中に第三者がその地上の建物を取得した場合に関する規定であって、建物取得が借地権消滅後という場合は同条の関するところでない、また、取得当時にその第三者が借地権の消滅を知らないときでもこの点に変りはない」とされています    建物譲渡は催告以前であるといちおう認められても、解除されるまでは事実を秘密にするなど解除当時には地主に対して譲渡を主張できる状態になかったと判断されれば、やはり同様です。
したがって本問で、Bの建物買受けがAの借地権消滅時より以後であれば、たとえBがその事実を知らなくても、彼には買取請求権がありません。Bが善意の場合は気の毒なようですが、だいたい建物を買うときは、当然敷地の問題も十分調べておくべきでして、Bが被った損失はAとのあいだで補ってもらうほかはありません。なお、もしBが実は解除より以前に建物を買っていたのだと主張しても、下級審の立場では、やはり買収請求が認められないわけです。
建物譲渡から借地権消滅から買取請求の場合。実際の事例は、表題の建物譲渡の上へさらに 催告とつけなければなりませんが、地主がある月の二二日に、延滞賃料を五日以内に払わなければ契約は当然に解除される旨の催告をしたところ、借地人のほうは同月二四日に地上建物および借地権を他の者に譲渡し、譲受人がかなり後に明渡請求に対して借地法一〇条の買取請求をした、というものです。裁判所は、借地権そのものがすでに消滅している以上、買取請求権の存在する余地もありえないとして、建物取得者を敗訴させました。したがって本問で、Bが、先月一五日から月末までの間に建物を買い受けたと主張しても、買取請求は今月になってですから、やはりだめです。
ただし、建物および借地権の譲渡前すでに地代の滞納があったといっても、前述のように条件つき催告後ただちに建物を売却した場合と異なり、建物譲渡後に条件つき催告によって借地権が消滅して買取請求の問題となった場合は、つねに述べたのと同じに解すべきか問題の余地があります。すでに地代滞納が存在する点を強調すれば、買取請求は否定されましょうし、逆に、建物譲渡当時にはとにかく借地権が存在しかつた催告もまだなかった点を重視すれば、肯定できないでもありません。
建物譲渡から買取請求から借地権消滅の場合。地主が借地権譲渡を承諾しなかったため建物取得者が買取請求をしたところ、地主は建物譲渡以前から地代滞納があったことにもとづき契約を解除すると主張してきた、といった場合です。これは買取請求を認めてよいかとも考えられますが、事実がある程度似ているものはあるにせよ、適切な判例はみあたりません。

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