建物の共有者の一人の買取請求

三〇年前に兄と二人で土地を借り、二人で金を出しあって家屋を建て、兄の家族と私の家族とが住んでいました。その後、私たちは他の町に移り、兄も最近他に土地を買ってそこに家を建てる準備中です。借地の期限もまもなく来るので、地主から明け渡してくれとの申入があり、明け渡すことには、私も兄も異論はありません。問題は土地の上の建物で、私はぜひ地主に買い取ってもらいたいと思っているのですが、兄は取り壊そうう、などといって反対しています。私の建物についての権利の分だ けでも、地主から金を取ることはできないでしょうか。
兄さんと金を出しあって家屋を建てられた場合、その家屋は兄さんの共有になり持分の割合は、それぞれの出された金額によって決まります。そして、借地権もこと同じ割合で、弟と兄さんが準共有していることになります。ところで、このような場合には、共有者各自が別々に、家屋に関する自分の持分を買収請求したりしなかったりすることは許されない、と解されます。持分は自由に処分できるのですが、本問のような場合にそれを許すと、建物は、地主と、借地権が消滅したため土地使用の権利をもたない者との共有という、奇妙な結果になるからです。
それで、判例は、買収請求の結果建物の所有権が完全に地主のものになれば、この奇妙な結果は生じないから、民法二五一条により、建物共有者の一人が他の全員の同意を得て、建物全部について買収請求をすることができる、としています。しかし、本問の兄さんがそうであるように、他の共有者が一人でも反対したときは、この考えでは、買取りを請求できなくなります。

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土地

建物の存置をはかろうとする線を進めていきますと、借地権が消滅して、買収請求をしなければ建物を取り除くよりほかない、というときは、買収請求は処分ではなくて管理行為とみるべきであって、民法二五二条により、持分の過半数を占める共有者が、建物全体について買取りを請求できる、という考えが出てきます。このようにみれば、弟の出された金のほうが多額であったなら、弟は建物全体の買収請求をすることができますが、もし、兄さんの出された金額が大きければ、買取請求を管理行為とみたところで、建物全体を地主に買わせることはできません。もつとも、もし買収請求を保存行為とみることができるならば、民法二五二条但書の定めるところから、弟一人で建物全体について買取りを請求できますが、放っておけば家屋は木と竹と紙と土になり、その価格は著しく下がるからといって、買収請求を保存行為などというのは、こじつけの感じがします。管理行為とみるのがギリギリの線というべきでしょう。
したがって、あなたの出資金のほうが多ければ、買取りを請求できるし、少なければでぎないことになるでしょう。もし、出資金が同額なら、あなたの家族のほうが争いとか、あなたの使用部分のほうが大きいときにかぎって、できると思います。その際、買収請求の目的物は家屋全部であって、持分ではない、ということになります。兄さんが、自分の分の代金をもらっては地主にすまぬと思われるのなら、その持分に相当する額を弟から取り立てて、地主に返されればよいわけです。
弟の持分の方が少ないときは、買取 請求を保存行為とみないかぎり、弟は、当然には買取請求をすることができないことになりますが、何かほかにいい方法がないものでしょうか。考えられるのは、兄さ んから持分を弟が譲ってもらうか、または、兄さんにその持分を放棄してもらう、という方法です。兄さんは弟から兄さんへ、兄さんの持分に相当する金額を渡され、兄さんが持分を放棄されるなどして、家屋全部について弟が地主に買取りの請求をされればよい、ということになります。しかし、この方法も兄さんの同意がなければ できませんし、登記料とか税金で少々面倒なこともでてきます。そんなことをするくらいなら、弟と兄さんと地主の三人で話し合って、家屋全部を弟の持分に相当する額で、地主に貰ってもらうほうが、手間もかからず、すっきりするはずです。ようするに、こんな場合には弟が自分の建物についての権利の分だけでも、地主から金を取る有効適切な方法はない、ということになるでしょう。
本問と逆の場合、すなわち、貸地の所有権が共有のとき、買収請求権の行使はどのようにするかについて、考えてみましょう。判例によりますと、この場合には、多数当事者の債権に関する規定を適用し、建物質取請求権の行使、つまり、買い取ってくれという意思の表示は、どの地主に対してしても、地主全部に対してしたのと同じ効果をもち、その結果、借地を共有する地主は、代金支払債務について、借地人に対し不可分的に責任を負う、とされています。だから、借地人は建物の代金全額を、どの地主に対しても請求できることになります。この点については、反対の学説もないようです。

土地
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