明渡請求のない場合の買取請求

二九年前に土地を借り、居宅を建てて住んでいます。借地法によると来年は借地契約の期限が切れることになるらしいですが、地主からはべつに明け渡せといった話はまだありません。そろそろ引き払って故郷に帰りたいと思います。建物は地主に買い取ってもらうのが一番よいと思いますが、建物質取請求とができるのでしょうか。
借地人は、借地権の存続期間が経過したときは、借地契約の更新を請求することができ、特に借地上に建物があるときは、地主が、その土地を自分で使用する必要があるなどの正当な事由にもとづいて異議を述べた場合にかぎり、契約は更新されないことになります。
そうして、借地契約が更新されない場合には、借地人は、他主に対し、借地人が自分の権利にもとづいて造った建物その他の物件を、時価で買い取るように請求することができます。これを、建物質取請求権といっています。
このように、借地権が消滅する際、借地人に地上に在る建物などの買取請求権を認めたのは、民法の規定のままだと、借地人は、地上の建物などを取り払ったうえ、空地にして土地を地主に返さなければならないのですが、それでは、使える建物を壊してしまうということになり、借地人にとっても、また社会経済的にも、大きな損失をまねくこととなるので、建物などを地主に買い取らせることとし、これを存続させて、その価値をそこなわないようにするとともに、借地人がその建物などを造るために費やした資金を回収し、他にこれを利用できるようにしようとするものにほかなりません。
また、借地人に建物買取請求権が認められる結果、地主が借地契約の更新に応じないと、建物を買い取らざるをえなくなるので、間接的には、更新に応ずることを促すことになるという効果もあるといえます。そうして、借地人がこの買取請求をしたときは、地主にこれに応ずる意思があってもなくても、時価でその建物を買うという売買が成立したことになります。ここにいう時価とは、建物が現存するままの状態での価格をいい、借地権の価格は含まないが、建物の場所的環境は参酌されます。

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土地

建物の買取請求権を定めた借地法四条二項は、借地権者は、契約の更新がない場合に、建物質取請求をすることができると規定していますので、これを文字どおりに読みますと、同条一項に定められている更新の請求があったことを前提とし、その請求があったにもかかわらず、更新されないときにだけ、買取を請求することができるようにも解釈されるでしょう。
本問では、借地人の方から借地契約の更新を請求しないで、借地権を消滅させ、建物を地主に買い取ってもらおうというのですから、このような解釈によると、地主が承諾しないかぎり、建物を買い取らせることができないことになるでしょう。
しかし、現在の借地法になってからは、地主は、貸している土地を自分で使う必要があるなど、正当な事由がないかぎり、更新を阻止することができないことになりました。そうしますと、建物買取請求権を認めることによって、借地契約の更新を間接的に強制するという意味は、きわめて薄いものになってきます。そうすると、建物の買収請求と更新の請求とを必ずしも結びつけて考えなくてもよいことになります。のみならず、借地上の建物の価値を維持し、借地人に建物のために投下した資金を回収させるみちを開く必要のあることは、更新を拒否された場合にかぎりません。例えば本問のように、故郷に帰るため借地を必要としなくなるので、建物を売って、これをもとにして、新しい生活を始めたいというような場合には、建物をそのままにしておいて、借地人に資金を回収するみちを開いておく必要があるといえるでしょう。
このように考えますと、借地人が更新の請求をしないで、借地契約が終了する場合にも、借地人は地主に対して、建物の買取りを請求できると解釈するのが適当と考えます。
このように、借地人が建物などを造るために費やした資金を回収する方法として、地主に対して、建物の買取請求をするという方法があるわけですが、それが唯一の方法ではありません。すなわち、建物をそのままにしておいて、投下資本の回収をはかる方法としては、その建物を借地権付で売る、いいかえれば、その建物を第三者に売却するとともに、借地権を譲渡するという方法もあるのです。
この場合、借地権が地上権であるならば、借地人(地上権者)と建物の買主との間の契約で、全く有効に借地権を譲渡することができるのですが、借地権が賃貸借契約によるものであるときは、借地権(賃借権)の譲渡について、地主の承諾をえなければなりません。もし、地主の承諾をえないと、建物の買主は、自分が借地権者になったと主張することはできませんし、また、借地契約を解除されることになります。もっとも、その賃借権の譲渡によって、地主が不利益とならないにもかかわらず、地主が賃借権の譲渡を承諾しないときは、裁判所に訴えて、地主の承諾に代わる許可の裁判をもらうことができます。
このような方法によっても、賃借権の譲渡について地主の承諾をえられないときは、建物を買った第三者は、地主に対して、建物を時価で買い取るように旱水することができます。この買取請求も、借地契約が更新されない場合の買取請求と同じ趣旨のものです。
したがって、仮に更新の請求をしない場合には、建物の買収請求をすることができないという解釈がとられるとしても、借地人は、地主の承諾をえて借地権付で建物を売ることによって、投下資本の回収をはかることができるわけです。
この場合には、地主に名義書換料などを支払わなければならないにしても、借地権の価格を含めて、建物を売ることができるわけですから、買取請求により、時価で売るよりも有利なわけです。また、地主の承諾をえないで建物を売ることもできますが、この場合には、買主が地主の承諾をえられないで、地主に建物だけの時価で買い取ることを請求しなければならないこともありうるので、結局時価以上で売ることが事実上困難となるでしょう。

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