借地人の破産と借地権

一〇年ほど前に所有地を権利金をとって、ある会社に賃貸し、その会社はそこに工場を建てていました。その会社は数年前から赤字続きで、特に最近になって多額の手形を不渡りにして倒産し、工場も閉鎖されています。こんな会社を相手にしていては、地代もとれませんので、借地契約を解除し、土地を取り戻したいと思いますが、可能でしょうか。
民法六二一条は、賃借人が破産宣告を受けたときは、たとえ賃貸借の期間が定められていても、賃貸人または破産管財人は、六一七条の定める条件のもとに賃貸借契約を解除することができる旨を規定しています。破産するような賃借人は信用できないし、賃料の支払もあやしくなるので、賃貸人の利益を守るためにこのような規定がおかれたのだと説明されています。本問の場合、土地を貸してから一〇年ですから、借地権の存続期間はまだ残っていますが、借地人である会社が正式な手続によって破産を宣告されたのであれば、この規定によって解約の申入ができ、一年たてば契約が終了することになりそうです。しかし、借地権、借家権、小作権のような破産者の生活の基盤となっている権利までこれによって消滅することは、これらの権利を特に保護している法律の趣旨に反するおそれがあります。そこで、これらの権利を六二一条の解約申入によって消滅させるためには、それぞれ特別法に規定されている正当の事由がそなわっていることが必要ですが、賃借人破産によって賃料の支払があやしくなるおそれが多分にあるため、賃借人の側で担保を提供するというようなことをして賃貸人に賃料を確保させる措置をとらないかぎり、正 当の事由が認められる、と考える学者もあるようです。

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土地

このような考え方によれば、借地人が破産した場合は比較的たやすく解約の申入が認められそうです。そうすると、その場合借地人(破産管財人)側は、借地法四条二項の建物質取請求権をもつかどうかが問題となります。学説では、借地人の契 約違反による借地契約の解除の場合にも買取請求権を認めるものもありますから、これによれば、借地人の責任が契約違反よりは軽いと思われる破産の場合にも、買取請求権を認めてもよさそうです。しかし、判例は契約違反の場合には買収請求権を認めませんから、破産の場合にどうなるか確かなことはいえません。
一方、よく考えてみると、借地人が破産した場合、借地人が借地上に所有している建物は結局競売されることになるわけですから、仮に正当の事由を問題にするにしても、破産者(借地人)の事情を考慮することは無意味になります。また、解約の申入が認められない場合に、建物が換価(競売)されると、その借地権が地上権であれば問題はありませんが、本問の場合のように賃借権であるときは賃借権の譲渡の問題が生じることになります。このようなことを考えると、借地権の場合には民法六二一条の適用はなく、建物が競売されたときに、地主が競落人への賃借権の移転を認めればそれまでだし、もし認めなければ相手方から借地法九条の三の裁判を申し立てることになる、というように考えた方がよいのではないかと思われます。
いずれにしても、この問題についての判例は一つもなく、裁判になった場合にどうなるかは全く不明です。
会社更生法にもとづく更生手続が開始した場合も、大体破産の場合と同様に考えてよいでしょう。ただ、この場合は建物が換価されるとは限らないので、会社の借地権が存続することになることも起こりうるでしょう。
借地人が正式な破産宣告を受けた場合は以上の通りですが、このお話だけでは正式の破産ではなく事実上倒産した場合であるとも考えられますので、その場合ならどうなるかもお話しておきます。
借地人が事実上倒産した場合には、地代も支払えなくなるのが普通ではないでしょうか。もし地代を滞納したとすれば、それを理由にして賃貸借契約を解除することができます。しかし、地代の滞納のない場合には、単に借地人の経済状態が非常に悪くなったというだけでは、契約の解除はできません。

土地
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