地主、借地人間の感情の対立

二九年前にAに土地を貸し、Aは木造の店舗兼住宅を建てて、商売をしています。私も同じ町内で商売をしているのですが、数年前に意見が対立して以来、Aとは不仲となりました。来年は借地期間も切れますので、たとえ少々の立退料を払ってもよいから、Aに立ち退いてもらいたいと考えています。うまくいくでしょうか。
借地の明渡しを求めるのに必要な正当事由がそなわっているかどうかを判断するに当たって考慮される要素について、この判断に当たっても最も重要な要素となるのは、地主、借地人のそれぞれが問題の土地に対してもっている必要性の質と程度の比較です。その必要性は営業上のものと居住のためのものとにわけることができますが、いずれにしてもその中には感情的な要素は入っていません。もともと借地法の四条一項但書や六条二項の規定は、借地の上に居住用の建物を所有するいわゆる小市民的借地人の居住利益を厚く保護するために設けられたもので、借地法が借地人の類型を特に区別するような規定をしていないために、資本家的借地人の資本家的な利益をも保護するように機能する結果となっているのだと考えられます。そのようなことから考えても、また、正当事由の有無が借地権の運命を左右し、地主、借地人双方の 経済的利害にきわめて大きな影響を及ぼすことから考えても、感情的対立は正当事由の判断にとり入れられるべきものではないでしょう。実際の裁判にもこのような感情的対立が問題とされた例は見当たりません。そもそも、土地の明渡しについて訴訟が提起されるまでには、地主からの明渡しの請求、借地人の拒絶、再交渉、最終的決裂というような段階を経て来るのが普通ですから、地主と借地人との間になにほどかの感情的対立が生じるのは避けがたいことではないでしょうか。もしそうだとすれば、正当事由の有無の判断に当たって感情的要素を重く見ることは、むしろ好ましくないことだといわねばならないでしょう。このように見てくれば、感情的対立があるというだけでは、おそらく正当事由があるとは認められないと思われますし、また認めるべきではなかろうと考えられます。

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土地

正当事由の認定に当たって感情的対立が全く考慮されないかというと、そうもいいきれないようです。一般に借地、借家関係のような一定期間継続する契約関係においては、当事者の間に信頼関係が存在するとせられており、当事者の一方ことに借主がこの信頼関係をこわしてしまうような行為をした場合には、契約関係を終了させるべきだという考え方が有力です。この信頼関係は物的、経済的なものと考えるべきであって、人間的、人格的なものと考えてはならないと主張する学者もありますが、必ずしも一般の学説、判例のうえでそのように明確に考えられているとはいえないようです。借家の例ですが、明渡しを請求された借家人が、家主の植え付けた稲の上にごみをすて、家主の老母にどろ土をけりかけ、幼いこどもを路上にころばせ、排水をとめ、家主に表道路からあざけりの声をあびせ、壁板を無断で叩き割ったとして使った場合、借家人が、夜中に家主の寝室に侵入し、暴力をふるい、全治二週間の傷を負わせた場合、借家人が家主に金銭をだましとられたと思いこんで深く恨むようになり、毎日家主の店先にきては激しい調子で家主をののしったため、家主が信用を保つことがむずかしく、みずから転居するか借家関係を断つかのどちらかを選ばなければならなくなった場合などに、借家法一条の二の正当事由があると認定されています。ですから、借地人の行為があまりにもひどいときは、借地法でも正当事由ありと認められる可能性が全くないとはいいきれないでしょう。
また、他に正当事由の認定資料となるような事実がある場合に、借地人の行動がなされたときは、正当事由を認める方向への補強的な作用を営むだろうとも思われます。
もし正当事由が認められないとすると、地主としてはAの行為を黙って見すごさなければならないのかと、強い不満をいだかれるのではないかと思います。しかし、Aの言動によってお店の信用を傷つけられたり、お嬢さんの縁談をこわされたりして、家族の方が物質的または精神的な損害を受けられたときは、Aに対して不法行為の訴訟を起こして損害賠償の請求をなさればよいわけです。

土地
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