建物のない借地と期間満了

Aの隣の土地を借り、家を建ててずっと住んでいました。そしてAの家の失火で私どもも類焼してしまいました。再建の資金あつめに手間どっているあいだに、今年になって借地の期間が満了になったから、土地を返せというのです。そちらの不始末で迷惑をかけておきながら、あまり身勝手だと思うのですが、返さなければいけないのでしょうか。
借地法四条一項は、借地権の存続期間満了時に借地上に建物が存在する場合に限って借地人に契約の更新請求権を与え、地主は正当事由がなければ更新を拒絶しえない旨を規定していますし、借地法六条は、存続期間満了後も借地人がその土地の使用を継続するのに対して、地主からの異議申立が認めら れるために正当事由が必要なのは建物が存在する場合に限るとしています。これ裏替えせば、借地上に建物が存在しない場合には、地主は正当事由がなくとも借地契約の更新を妨げて明渡しを求めることができることになりそうですが、疑問の余地がないわけではありません。
借地法がこのように建物の存在する場合に限って、借地権の存続を容易にしているのは、建物の保護が借地法の目的であるからだとも考えられます。そう考えれば、建物が存在しない以上借地権の存続を認める必 要がないのは当然だということになるでしょう。しかし、他方では、借地法ことに四条一項但書や六条二項の規定は借地上に居住用の建物を所有する、いわゆる小市民的借地人の居住利益の保護を主たる目的とするものであるから、建物の存在を必要とする趣旨もまた、借地上に建物がなければそこに借地人の生活の本拠があるとは考えられず、保護の必要がないというところにあるのだ、と主張する学者もあります。この考えによれば、建物の存在は、その土地に借地人の生活の本拡があり、借地人の居住権の保護のためには借地権の存続が必要である、ということを示す一つの資料にすぎないことになり、借他人を保護する必要があることが別の資料で示された場合などは、必ずしも建物の存否にこだわらなくてもよい、ということになります。

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土地

このケースと比較的似たものに次の判例があります。これは、借地上の建物が戦災で焼けてしまった後、地主がその土地を占拠してバラックを建て、借地人から明渡しを請求したのにも一向に応じないで明渡訴訟をひきのばしたため、借地人の勝訴判決が確定したときには借地権の存続期間が満了してしまった、という事件です。最高裁判所は、借地権消滅の際に建物が存在しないときは、その理由がどのようなものであるかにかかわりなく、借地法四条は適用されない、として地主を勝たせています。しかし、このように地主自身の不法な行為によって借地人の保護が拒まれる結果を認めるのは不当だとして、同じような事件で信義公平の見地から借地人の契約更新請求権を認めた下級裁判所の判決の方を支持する学者が多いようです。本問の場合の事情は、この判例とは少し違っています。借地人の場合建物が存在しないのはAの過失によるものであって、判例のケースのように地主が故意に借地人の建築を妨げているのではありません。それだけAの態度が信義公平に反する程度は低いともいえそうです。しかし、他面において、判例のようなケースならば、借地人は地主の不法行為によって借地権の消滅という損害をこうむったものとして損害賠償がとれますが、借地人の場合はAに重過失がなければ焼けた家の損害賠償も借地権の損害賠償もとれないのですから、借地人の方がお気の毒だともいえます。ただ、今までの間、兎にも角にも、ほかに住むところがあったわけで、それだけ保護される必要性が薄いといえるかも知れません。しかし、そのような事情は正当の事由の判定に当たって考慮されればいいわけですから、一般的な原則としては、地主の故意または過失によって建物が存在しない場合は信義公平上借地法四条一項あるいは六条二項の適用があるものと解し、建物の不存在をめぐる具体的な事情は正当事由の判定で考慮される、とするのがよいのではないかと思われます。ただし、ここにお話した裁判所の態度からすると、 このような解釈は下級裁判所では通っても最高裁判所では認められないおそれがあります。
なお、期間満了後に借地人が建築をはじめた場合に、Aの方がただちに遅滞なく異議を申し立ててこなければ、契約は更新されたことになりますが、この法定更新の成立のためには借地権消滅当時建物が存在したことは必要ではありません。借地権の消滅前に借地権が消滅したら明け渡すように申し出たというだけでは異議を申し立てたことにならない、とされていることを申しそえておきます。

土地
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