借地人の必要性の稀薄

借地を五〇〇平方メートルほど所有しており、借地人は、そこに一〇〇平方メートルほどの居宅を作り、他は庭や自家用事のガレージに使っています。勤めていた会社が倒産したために、家計を支えるために店舗を構えようと考えていますが、ちょうど借地の期間がきれるので、ガレージの部分三三平方メートルほどを返してもらい、そこに店舗を建てたいと思い交渉しましたが、借地人は自家用車は現代の必需品だから、ガレージは壊せない。裏手の一〇坪ぐらいなら返してもよいという返事です。ガレージは通りに面しているのですが、裏手などでは商売になりません。明け渡さすことはできないでしょうか。
正当事由があるかないかを判断するに当たって、対立している丙当事者それぞれの利益の質を区別する必要があります。そして、地主の側の利益が営業利益であるとき、すなわち明渡しを受けた土地を地主が営業のために利用しようとしているときは、一般に正当事由は認められにくく、また借他人の側の利益が居住利益であるとき、すなわち現在借地人が借地上に所有している建物が住宅であるときも、正当事由は認められにくいということができます。しかし、このような利益の質の区別も、決してそれだけで正当事由の有無を決定してしまうほど絶対的なものではありません。

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土地

地主は店舗という営業目的のためにこの土地を必要としているのに対して、借地人の方は住宅の敷地として利用しているのですから、一見、地主の営業利益と借地人の居住利益の対立として、利益の質の点では、地主には非常に不利なように見えますが、決してそうではないと思われます。
その理由の第一は、地主の方の営業上の必要性の度合いが非常に高いということです。家計を支えるためにはこの土地を利用して店舗を 構えるほかには手段がないようです。また、表通りと真手では店舗の収入がどれくらい追ってくるのか不明ですが、奥手では商売にならないとのことですから、表通りに面した土地を返して貰ってそこに店舗を建てることは、一家の生活のためにどうしても必要なことのように考えられます。このような場合には、たとえ地主が建てようとされているのが商業専用の建物で純粋に営業用のものであるとしても、地主の方の必要性はもはや単に営業上の必要にとどまらず、むしろ生存権的なものだといえましょう。一般に営業上の必要性であっても、それが営業そのものの生存率生活の維持にかかわってくるような場合には、もはや質の問題をこえてしまうと思われます。
第二には、借地人側は、一応その土地を居住用に利用しているとしても、明渡しを要求している部分はガレージの建っている部分だということですから、彼の利益が果たして、どこまで居住利益だといえるかが問題でしょう。たしかに最近の日本での自家用車の普及率の伸びは目ざましいものがありますが、必需品といえるところまで来ているかにはまだ疑問があります。少なくとも、自家用車のための必要性というものは、借地法が地主の利益をある程度犠牲にしてでも保護すべきだと考えた利益には、まだ当たらないのではないかと思います。その土地の位置や文通事情または職業の関係などで、自動車がなければ生活に支障を来すような特殊な事情が現実にあるのなら別ですが。仮にこのような特殊事情があるとしても、ガレージが必ず現在建っている場所になければならないのかにも問題がありそうです。裏手の方に、ガレージを作ることはできないような状態になっているのでしょうか。裏手に作ってもガレージとして使える状況だとすれば、借地人の必要性はきわめて低いということができます。
さらに、地主が要求しているのが借地の全部ではなく一部であるということも地主にとって有利な事情です。この部分を明け渡したとしても、借地人の住居は確保されていて、ただわずかに不便を生ずるだけです。
以上のように考えて来ますと、本問のケースでは、地主の方に正当事由が認められる可能性が非常に強いといってよさそうです。借家法一条の二では、営業上の必要は以前はなかなか正当事由に認められなかったのに、最近では認められるケース が増えて来ていることも、有利な予想ができる一つの資料です。

土地
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