借地明渡請求の正当事由

借地権の存続期間が満了すると、借地権は一応消滅することになります。しかし、借地人がなお続けてその土地を借りたいと希望している場合には、土地を明け渡してもらうのはなかなかむずかしいのです。期間の満了などによって借地権が消滅したときに、引き続いて借地権を設定することを借地契約の更新といいますが、借地法によれば、地主の意思に反してこの更新が成立し、引き続いて少なくも二〇年または三〇年の借地権が認められる場合があることになっています。
借地法四条一項は、存続期間の満了その他で借地権が消滅したときに借地上に建物が存在する場合は、借地人が契約の更新請求権を有し、借地人が更新を請求すれば当然に借地契約が更新されるものとし、ただ地主が正当の事由にもとづいてただちに更新を拒絶した場合に限って、例外として更新が生じない旨を規定しています。だから、借地人から更新請求の意思表示があったときに、地主これを拒絶しないか、拒絶してもその意思表示がおくれたとき、またはただちに拒絶しても正当事由がないときには、地主がいくら明け渡してもらいたいと思っても、契約が更新され土地は返してもらえないことになります。

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土地

民法六一九条は、賃貸借契約の存続期間満了後も賃借人が目的物の使用収益を続けているのに対して、賃貸人がそれを知りながら異議を述べないときは、従前と同一の条件で契約を更新したものと推定する旨を規定していますが、借地法六条一項はこれを一歩進めて次のように規定しています。すなわち、存続期間満了後も借地人が引き続いて土地を使用している場合に、地主がただちに異議を述べなければ、前の契約と同一の条件でさらに借地権を設定したものとする、というのです。民法の場合には、地主の方で、借地人の土地利用の事実を知らなかったこと、あるいは契約更新の意思がなかったことを立証すれば、契約の更新を否認できるのに対して、借地法の場合は、このようなことを立証しても契約の更新を妨げることはできません。しかも、借地上に建物が存在しているときは、やはり正当の事由がなければ異議を述べることができないのです。また、一旦は正当事由をそなえた更新拒絶によって借地権が消滅しても、借地人が土地を明け渡さず使用を継続し、地主がただちに異議を述べなければ、法定更新が成立してしまいます。
正当事由の認定の一般的な原則についてもともとは、借地法四条一項の文言のとおり、地主の方に自己使用そのほかの必要があれば正当事由あるものと考えられていたのですが、現在では借家法一条の二のそれと同様に、地主と借地人との双方の事情、特にその土地を必要とする程度を比較して判定すべきであるとされています。借家法の正当事由についてはきわめて多くの判例があり、正当事由の判定に当たって考慮されなければならない諸要素もかなり明らかにされて来ていますが、借地法のそれについては判例はあまり多くありません。これらを整理して学者の説を加味してみると、借地法の正当事由の有無の認定については、ほぼ次のようにいえると思われます。
まず第一に、借地人の借地の目的、すなわち彼がその土地の上に所有している建物が居住用のものか営業用のものかの区別が重要です。前の場合を小市民的借地人、後の場合を資本家的借地人とよんでおきます。
小市民的借地人の場合は、借地権を失うと生活の本拠である住居を失うことになりますから、借地権の存否は彼の居住利益すなわち一種の生存権だとされる居住権を左右することになります。その点では借家関係の大部分と同じように考えられるわけですが、ただ借地人の場合はまがりなりにも自分の家を所有する資力をもっている点で借家人よりもやや高い経済力があり、そのことが正当事由の認定にも若干の影響をもつと思われます。
これに対して資本家的借地人の場合は営業利益が問題になるわけですが、経済的に考えてみると、地上建物に投下した資本が回収できるかどうかの問題になります。もっとも、日本では一個の建物が住居と店舗とを兼ねるいわゆる併用住宅が多く、このどちらかに簡単に割り切ることが困難なケースが、少なくありませんが、それぞれの具体的な事情に応じて、居住利益と営業利益の比重を考えることになりましょう。
これに対して、比較考量される地主側の利益も、居住利益と営業利益とにかけて考えられます。つまり、地主はその土地を居住のために必要としているのか営業のために必要としているのか、を考えねばなりません。地主と借地人との必要度の比較考量には、このような双方の必要性のいわば質と強度とが問題になるわけです。
正当事由の認定基準としては、このような必要度の比較のほかに、地主、借地人との関係から生ずる具体的な諸事情、例えば契約成立のいきさつ、地主からの代替地または立退料の提供、借他人の態度などが加味されることになります。

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