競売と目的物の焼失

競売で土地とその上の家屋を一括競落しました。裁判所から競落代金を支払うようにとの通知を受けましたので、その用意をしていたところ、近所からの出火でこの家屋が焼失してしまいました。土地も家屋もすでに競落で所有権は当方に移っているとのことですが、焼失した家屋の代価を支払わなければならないのでしょうか。
競売期日に最も高い値段で競買の申出をした人に対して裁判所が競落を許すことを競落許可決定といいます。競落許可決定により競落人が当然に競売の目的となった不動産の所有権を取得するように見えますが、必ずしもそうとは限りません。競落人がいつ競売の目的不動産の所有権を取得するかについては議論のあるところですが、判例は、強制競売と任意競売とでは、所有権の移転の時期をそれぞれ別に解しています。
強制競売の場合には、競落許可決定の言渡により、競落人は競売の目的不動産の所有権を取得すると解されています。しかし、競落許可決定か利害関係人の不服申立によって取り消されたり、債務者以外の第三者所有の不動産を誤って競売したような併合は、所有権移転の効力が生じないことはいうまでもありません。そして強制競売においては、強制執行の基本となった債務名義に表示された債権が実は存在していなかったり、弁済等により消滅したりしていても、競落許可決定が不服申立により取り消されることなく確定してしまえば、後で競落人の所有権取得が覆るおそれはないといえます。
ところが任意競売の場合には、民事訴訟法六八七条一項と競売法三三条一項を根拠として、競落代金の全額が支払われた時その効果として競落人は競落不動産の所有権を取得する、というのが確定的な判例になっています。しかも任意競売では債務名義が要求されていませんから、競落代金が完納されても、競売の基本となった抵当権や被担保債権が最初から不存在または無効であったり、競落代金完納前に弁済等により消滅すると、競落許 可決定は取り消され、競落人は所有権を失うこととなることを、注意する必要があります。
本問の場合は、まだ競落許可決定があった段階ですから、強制競売で競落したのならば、目的不動産の所有権を取得したといえますが、任意競売で競落したのなら、まだ所有権を取得していないといわなければなりません。

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土地

例えば建物の売買において、売主の建物引渡義務と買主の代金支払義務とが完全に履行される前に建物が風水害や類焼など売主の責に帰することができない事由により履行不能となって消滅した湯合に、買主の代金支払義務がどのような影響を受けるか、という問題が危険負担の問題です。      民法五三四条一項は、特定物に関する物権の設定または移転をもって双務契約の目的とした場合において、その目的物が債務者の責に帰すべからざる事由によって滅失または毀損したときは、その滅失または毀損は債権者の負担に帰す、と規定していますから、債権者は代金支払義務を免れないことになります。買主としては、建物の引渡を受けえないうえ、代金の支払を余談なくされるわけですから、全く損な話ですが、民法が債権者に危険を負担させる例外を広く認めているためやむをえないとされています。
競売も広い意味では売買の一種ですから、民法の危険負担の規定の適用を受けます。そこで問題は、いつから危険が競落人に移転するかということです。民法五三四条一項は、特定物の売買においては、契約が締結された時に危険が債権者に移るとみております。所有権の移転時期とは必ずしも一致しておりません。競売の場合には、競落許可決定の言渡をもって売買契約が成立したとみるべきですが、競落許可決定は即時抗告により取り消される可能性もありますから、競落許可決定の言渡のみでは売買の成立はまだ不確定な状態にあるともいえます。そこで、競売の場合の危険の移転時期については、競落許可決定の言渡の時 と解する見解と、競落許可決定が確定した時と解する見解とがあり、後者の立場が有力です。そしてこの点については、強制競売も任意競売も同様に考えてよいと思います。
本問の場合は、建物が焼失した時に競落許可決定が確定していたかどうか明確でありませんが、前説によれば、競落許可決定の確定の有無を問わず危険は競落人に移転していますから、代金を支払わなければならないこととなります。また後説によれば、競落許可決定の確定前の焼失なら危険は競落人に移転しませんから代金の支払を免れますが、確定後の焼失なら代金を支払わなければならないこととなります。
理屈ではこのとおりなのですが、建物が焼失している以上競落人はなかなか代金の支払をしないことが予想されます。通常は、競落人が代金の支払期日までに競落代金の支払をしないときは、再競売といって競売のやり直しをすることになりますが、建物がすでに焼失していれば競売の目的物がないわけですから、もはや再競売の余地はありません。そこで債権者としては次の方法をとることになります。強制競売の場合は、そのまま配当を実施し、確定された配当表に基づいて、債権者は各自競落人に対し配当額を請求し、競落人が任意に支払わなければ訴えを提起してその支払を求めることになります。任意競売の場合は、競売申立人である抵当権者は、民法三七二条、三〇四条に基づく物上代位権により抵当権の変 形物あるいは代表物の上にその効力を及ぼすことができますから、競売の目的建物の所有者が競落人に対して有する代金支払請求権を差し押え転付命令または取立 命令を得て債権の満足を得ることとなります。

土地
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