収用の手続き

土地収用は、特定の公益事業のために相手方の意思に反して土地等を強制的に取得したり使用したりする制度ですから、これを行なうためには法律の根拠を必要とし、かつ、法律の定める手続によらねばなりません。土地収用の一般的手続を定めているのが土地収用法ですが、昭和四二年に大改正が加えられました。同法により ますと、土地収用は、次のような手続を経て進められます。
事業の準備 - 正規の収用手続に入る前段階として、起業者は、事業の準備のため、一時他人の土地に立ち入って測量や調査をし、その際に垣、柵、植物などの障害物を除去し、土地の試掘、試錐をすることができます。
事業の認定 - 特定の公益事業のため に土地収用の必要性を認定し、起業者に土地収用の手続を進めることのできる法的地位を付与する行為が、事業の認定です。事業の認定を行なう機関は、国土交通大臣または都道府県知事です。
事業認定の告示がありますと、収用されるべき土地の範囲は、起業地を表示する図面等によって仮決定され、以後、起業地について明らかに事業に支障を及ぼすような土地の形状や地質の変更は何人に対しても禁止されます。しかし、土地所有者および関係人は、起業者に対して、土地または土地に関する所有権以外の権利に対する補償金の支払を請求することができますし、他方、起業者は、土地所有者および関係人に対して、補償等の事項について周知させるための措置をとる義務を負い、土地所有者等の請求がある場合に見積りによる補償金を支払う義務、事業の廃止、変更のため土地所有者等の被った損失を補償する義務を負います。
旧法では、土地細目の公告という制度がありましたが、改正法ではこの制度は廃止され、細目公告の効果はこのように事業認定の告示の効果の中に吸収されることになりました。
なお、起業者が、事業認定の告示のあった日から一年以内に収用裁決の申請をしないとき、または四年以内に明渡裁決の申立をしないときは、事業認定は失効します。ただし、起業者は、起業地の全部または一部について事業認定の告示の日から三年間を限度として収用手続を保留することが認められています。
調書の作成 - 事業認定の告示後、起業者は、土地、物件の調査をし、土地調書、物件調書を作成する義務があります。この手続が義務づけられて いるのは、この後に行なわれる収用委員会の審理を迅速かつ円滑に進めるためです。
裁決手続 - 次のような段階を経て進められます。
裁決の申請、起業者は、事業認定の告示があった日から一年以内にかぎり、収用しようとする土地の所在する都道府県の収用委員会に収用の裁決の申請をすることができます。
審理手続、収用委員会は、裁決の申請にもとづき、中立公正な第三者として審理を行ないます。
裁決、収用委員会の裁決には、権利取得裁決と明渡裁決との二種があります。前者においては、収用すべき土地の区域、土地または土地に関する所有権以外の権利に対する損失補償、権利の取得、消滅の時期について決定され、後者においては、権利取得裁決で示されたものを除く損失補償、土地、物件の引渡または物件の移転の時期等について裁決がなされます。明渡裁決は、権利取得裁決とあわせて、または権利取得裁決があった後に行なわれます。
協議 - 起業地の全部または一部について起業者と土地所有者、関係人との間に権利の取得、消滅についての協議が成立し、収用委員会が協議の確認をしたときは、権利取得裁決および明渡裁決があったものとみなされ、この場合は、起業者、土地所有者、関係人は協議の成立、内容を争うことはできなくなります。旧法の定めていた必要的協議の制度は廃止されましたが、任意的協議の制度は改正法のもとでも存置されています。

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土地

土地収用に対して反対意見がある場合には、手続の進行に応じて、意見を陳述し、異議を申し立てる機会が与えられています。他に共通の利害を有する者があれば、共同して起業者と交渉する方が有利であり、また、時機を失することなく反対意見を述べることが必要です。ただし、正当な収用である以上、無茶な反対は無益であり、勝ち目はありません。
事業認定を行なおうとする前に公聴会が開かれることがあります。利害関係人は、公聴会に出席して、意見を述べることができます。
利害関係人は、事業認定の縦覧期間内に都道府県知事または国土交通大臣に意見書を提出することができます。事業の認定は、しばしば収用を事実上決定的ならしめるような重大な効果をもつものですから、事業認定が行なわれる前に、この意見書を提出し、自己の立場を擁護し、その反対意見を明確にしておくことが必要です。この意見書は、補償の額が低すぎるというのでもよく、たんに事業に反対というだけでもよいと解されています。
裁決手続の段階においても、意見書の提出が認められています。収用委員会の裁決手続においては、公開主義、当事者主義が採用されていますから、当事者は、委員会の審理に出席して口頭で意見を述べることもできるのですが、補償額のような数字に開することを口頭で陳述しても記録することが困難ですし、主張の内容を全部口頭ですることは、後日の証拠の保全のためにも有利ではありません。ことに裁決手続は、訴訟と異なり、職権主義も相当加味され、当事者の活動に制約が加えられていますから、できるだけこの意見書を活用することが必要です。ただ、意見書の内容をみますと、一般に起業者の呈示した補償額の不当性の非難に終止するものが多いようですが、補償額が低きにすぎる具体的理由、積算の基礎および補償の項目をかかげ、自己の見積額を呈示することが望ましいと思われます。土地収用法は、四段階に分けて意見書の提出を認めています。
審理開始前の意見書、裁決申請の公告後縦覧期間内に収用委員会に意見書を提出することができます。意見書の内容としては、手続の違背を指摘し、収用の必要の有無、能否、収用の時期、補償の低きに失することを述べ、あるいは、理由を述べず単に収用反対というようなものでも差支えありません。
損失補償に関する意見書、利害関係人は、損失補償に関する事項については、収用委員会の審理において意見書を提出することができます。
命令に基づく意見書、収用委員会による提出命令に応じて意見書を提出する場合があります。
審理開始後の意見書、すでに主張した事項を説明する場合にかぎって、意見書を提出することが認められています。
収用委員会の裁決は終局的ではありませんから、損失補償に関して不服があるときは、裁決書の送達後三ヵ月以内に、収用地を管轄する地方裁判所に、起業者を被告として訴訟を提起することができます。損失補償以外の点で不服があれば、裁決書の送達後30日以内に国土交通大臣に審査請求をすることができます。

土地
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