土地税制の方向

土地税制の今後の方向としては、地価の動向に留意しつつ、土地政策全般の整備に応じてその実現を図るべきものですが、土地の供給の促進と土地の需要、特に仮需要の抑制とが主眼となります。土地税制対策のほかに、なお検討すべきものとして、空閑地税、高価譲渡税、開発利益税などが考えられます。土地の有効利用を図る見地から、空閑地税、未利用地税あるいは高度利用促進税といった特別の政策目的をもった税を創設して、大都市およびその周辺において、空地のまま保有されている土地や、土地政策上の見地から有効な利用がなされていないと考えられる土地について、平面的あるいは立体的に有効な利用を行なうことを間接的に強制する考え方は従来から検討されていました。この場合、例えば空閑地として、既成市街地内の更地のみを対象とするものから、宅地介在農地や都市近郊農地までも対豪として含めるものまで、その具体的内容は多岐にわたっているようです。

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この考え方の根底には、いわゆる土地問題の重大性からみて、値上りを待って慢然と保有されている土地に対する強い社会的批判と国民感情があるものと認められます。しかし、この種の税が税として成立するための前提条件としては、課税対象である土地または課税標準の算定の基準である土地の利用度の判定について、税務の執行を可能にするだけの具体的な基準が設定され、かつ、その基準の客観性が納税者および第三者の批判にたえるものであることが必要となります。例えば空閑地を、都市計画法に規定する市街化区域内の土地で、建築基準法に規定する建築物または工作物の敷地の用に供されていないものと想定し、その固定資産税評価額の一定割合を税額とする空閑地税を考えたり、また、土地の上に存する建物の延べ面積が建築基準法による建ぺい率の一定割合に満たない場合に、その不足分を基準とする空閑地税を考えたりすることはい゛きますが、現行法制の下では、土地利用計画が、このような空閑地税の実現を可能にする程度にまで確立されていないのです。つまり、いわゆる市街化区域内の土地について定められる用途地域区分にしても、例えば住居地域は、その地域内の土地をすべて宅地として利用することを要求し、または宅地以外の用途に供することを直接に制限するものではないとすれば、市街化区域内または用途地域内の農地等を空閑地税の対象とすることは、税制において独自に、その土地をその区域または地域内で農業の用に供することが、土地政策上不過当であるという判定を下すこととなります。また当面、既成市街地内の更地のみを対象としてでも空閑地税を課税すべしとの議論もありますが、これについても既成市街地内の更地は、現実に量的には少ないという問題は別としても、課税回避のため、簡易な工作物例えばバラックが無秩序に建築される結果、逆に非効率的な土地の利用をひき起こすおそれが強くなります。要するに,ある特定の土地を空閑地と判定して課税するためには、少なくとも課税主体である国または地方公共団体が、その土地について、それがどのような目的に利用され、またはどの程度に利用されることを要請しているかということが、土地を現に保有している者や今後取得しようとする者に客観的に明らかになるような土地利用の計画が示されていなければならないと思われます。したがって、空閑地税は,今後の土地税制こおいては、大都市およびその周辺における土地の有効利用を税制を通じて促進する観点からは、有力な手段となりうるものですが、そのためには大都市およびその周辺区域内の土池について、土地の用途別に例えば建物面積の敷地面積に対する割合の最低限が定められる等、土地利用に関する積極的な立法措置が必要であるといえます。
土地の譲渡益をなんらかの方法によって、一般に妥当と認められる価格部分と、それを超える価格部分とに区分できるならば、その超過的部分について高率の課税を行なって、土地売却に伴う異常利益を吸収し、開発利益の社会還元と仮需要の抑制を効果的に行なうことが可能となります。この場合、一般に妥当と認められる売買価格以下の部分、いわば正常収益部分を逆に低率の課税とするならば、同時に土地の供給の促進にも効果を期待しうることとなります。これは、土地政策上望ましい税制措置と考えられますが、一般に妥当と認められる土地の価格水準の決定は現実にはきわめて困難であり、地価問題そのものの根本命題なのです。
将来、地価公示制度が全国的に確立されるに至った場合に、これが公共用地の取得価格の基準とされ、また、保有課税もこれを基準として行なわれることになるのであれば、実質的に公示地価が妥当な地価水準を示すとみることも可能であり、これを超過的利益の算定の基礎とすることが考えられます。その場合には、超過的利益に対してはきわめて高率の課税を行ない、仮需要を抑制することが望ましい税制の一つのあり方となります。
公共事業が施行される場合に、周辺の土地所有者が結果的に享受するいわゆる開発利益を社会、公共に還元する見地から、一定規模以上の公共事業等を個別に定めて、その対象地域の周辺にある土地について、その事業終了後の固定資産税評価額を課税標準として、土地所有者に開発利益税を課する万策も考えられます。しかし、この場合に税の対象となる土地の範囲や具体的税率を個々の具体的場合に応じて決定することはきわめて困難であり、一律に決定すべき性格のものでもありません。例えば施業者、関連土地所有者および学識経験者等の関連利害関係者の意見調整を、諮問機関等の組織を通じて円滑に行なうことが必要となります。しかし、このような協議方式による課税は、税としては全く異例であり、むしろ税よりも受益者負担金方式の改善による方が望ましいといえます。また、このような開発利益の吸収については、公共用地取得方式を先行取得や超過収用等の型で合理化し、発展させることが過切であるとも考えられます。
以上のことから、今後の土地税制の方向としては、空閑地税と高値譲渡税の組合せを主体として、土地の供給促進と仮需要の抑制を図ることが望ましい姿であることが明らかとなりますが、同時にそれは現状の法制のもとでは具体性をもちえないものであり、やはり土地問題の根本的対策である土地利用計画の確立と地価公示制度の完成に伴って、はじめて現実的税制改革案となりうるものであることも否定できません。したがって、当面の情勢下で、税制として何ができるかという設問に対しては、すでに述べたように、今回の税制調査会の答申に示されているような項目の措置を、土地税制の現実的なあり方として答えるべきです。

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