土地税制について検討すべき各面

土地政策上要請される政策目的は、究極的には地価の抑制にあるといえますが、その具体的政策目標を、土地の供給ないし有効利用の促進、土地に対する需要、特に仮需要の抑制および開発利益の吸収、還元の三点に集約することができます。したがって、土地税制について検討する場合、政策目標に対応して、税制に期待しうる政策効果の限界や、他の政策に担当させる方が適当な分野等を明確に認識することが必要です。内閣総理大臣の税制に関する諮問機関である税制調査会は土地税制のあり方について答申を行ないました。現段階における土地税制問題についての唯一の公的見解です。それによれば、土地税制として当面実施すべき対策としては、次の項目にわたる措置が勧告されています。

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税制調査会は、土地の供給を促進する見地からの対策を考えるにあたり、今後の土地供給の中心をなすものは、主として大都市周辺を中心とする個人の長期保有地であるとし、その早期供給を促すための税制措置を当面土地税制の基本としています。そして、その具体案としては、個人の長期保有土地に係る譲渡課税方式について、現行の総合累進課税を時限的に分離比例課税に改め、あわせて当初軽滅税率を導入して土地売却に伴う税負担額を明確化するとともに、いわゆる切り売りの防止に役立てることとし、二年間程度の期間をおいて、順次その税率を高めてゆく仕組みを設けることが指摘されています。
土地の譲渡所得課税に土地政策の政策目標実現のうえで、いかなる役割を分担させるべきかという点については、土地の供給促進に資するものとする考え方以外に、むしろ供給促進や有効利用の促進には保有課税の強化によって対処することとし、譲渡所得課税については、土地の値上り益の社会還元に資する見地から、一般的に現行より重課すべきものとし、あわせて今後の投機的な土地取得を抑制する仮需要抑制の効果を期待すべしとする考え方があります。しかし、この考え方によるときは、何が還元すべき異常利益ないし開発利益であるかが、きわめて問題であり、地価のあるべき水準が地域に応じて社会的に客観的に確定していることが前提となるのであって、税制のみがこれを独自に悪定するわけにはゆかず、いわゆる地価公示制度、あるいは適正地価制度の完成を待たなければなりません。したがって、制度改変の基本的な適否は別としても、当面の対策としては、個人の長期保有土地について、分離比例課税を時限的に導入し、土地の一般的供給を促進するという前記の案は適切だといえます。すなわち、宅地の大量供給や住宅の供給が民間自力に大部分を頼らざるをえない土地政策の現状からみれば、税判に供給面の誘導を期待せざるをえないものと考えられます。また,このような税制調査会の提示した具体案が実行を挙げるためには、時限的期間における土地の値上り益の期待が、2年間に5%程度の税負担の漸増の程度を上回ることのないよう、税制以外の措置をあわせて実施することが肝要となります。さらに、これと併行して、租税を通じる管理費用の増加によって、土地の供給および有効利用を間接的に促進することを基本的な方針として、保有課税の強化の検討も必要です。この場合、空閑地税等の新たな租税の創設や、固定資産税の土地評価について最近の地価の動向に応じて適正な評価の実施や適正な負担の実現が検討されなければなりませんが、新税の創設は土地利用制度に関する立法借置の推移と並行して考えられるベきものです。
なお、都市中心部における高層住宅の建設等いわゆる都市再開発は、既成市街地の空間的利用を効率化する点において重要な意義をもっており、土地の高度利用が特に必要とされる地区について、利用度の低い土地に高度利用促進のための特別課税のようなものも検討されてよい。
土地の需要特に仮需要の抑制面については、税制調査会の指摘する具体案では、個人の短期保有土地に係る譲渡所得課税の方式について現行方式を変更し、個人が保有期間5年以下の土地を売却して得た議渡益に対する所得税および住民税について、長期保有土地売却益の課税の特例を設ける期間中、他の所得と分離して相当高率の課税を行なうことを示しています。
需要抑制のため税制を利用するには、個人ばかりでなく、法人の保有土地特に短期保有土地の売却益について特別な重課を行なって、土地値上り益の吸収を図り、法人による投機的な土地取得の抑制手段とする考え方も有力な提案です。しかし、これについては法人税制の本質にも関連する、法人自体の負担とその株主負担との問題等複雑な問題を伴うものであり、また、個人のたな卸資産である土地について、現行のまま総合課税をすることとの権衡もあり、むしろ、法人の投機抑制を積極的に行なうためには、税制ではなく、より直接的な取得規制によるべきものと考えられています。
さらに、土地の需要とくに仮需要抑制の見地から、譲渡所得課税全般についてこれを強化する考え方については、さきに述べたように何を異常利益とみるかという困難な問題があり、いわゆる地価公示制度の整備、確立をまって本格的な分析が行なわれることが期待されます。
税制調査会は当面の措置として、個人のみについて譲渡課税方式の変更を行ない、長期保有土地課税は供給促進面に短期保有土地課税は需要抑制面にその役割を区分して、前者については負担を軽減し、後者については負担を重加することにより、それぞれその政策効果を期待する方法を示しているのですが、現実の土地供給の問題を、果たして税制だけでどの程度解決できるものであるかは、かなり疑問であるといわざるをえません。特に仮需要抑制の直で税制が果たしうる役割は、現状ではかなり限られた範囲にとどまらざるをえず、具体的な方策としては、上に述べたような短期保有土地および今後の取得土地についての高率課税や、後に述べるような個人、法人を通じての買換制度の合理化が示されている程度となっています。
現行税制上、土地政策全般に反する結果を生じ、税負担の不公平をもたらし、税務執行上多くの難点を有しているといわれている事業用資産の買換制度や個人の居住用財産取得のための買換制度について、その合理化を図るべきことが指摘されています。これらの租税特別措置は、従末から、土地の不急需要を刺激しているばかりでなく、土地対策上は好ましくない都市過密地域内での買換えや、過密地域内への買換えが目立って利用される状況を招き、居注または事業の規模を継続あるいは拡大する場合に課税の繰延べが認められる一方で、その規模を縮小あるいは整理するように担税力が滅少する場合にかえって課税されるという不合理、不公平を生ぜしめ、さらに税務執行面でも事業用の判定等で種々のトラブルをひき起こしているものです。

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