宅地開発と交通計画

急速な都市化時代には、広域にわたり総合的かつ戦略的な都市計画が必要であるにもかかわらず、都市のエネルギーを軽視し、その発展動向を見誤り、古い固定的な計画技術で対処しました。また産業優先で生活環境を疎かにしたことが大きな前提となります。例えば大都市の場合、その基本構想の中心課題の多くは、大都市抑制論や都市産業機能の再編成であって、いかに多くの人口を快適に住まわせるかといった住を中心の計画が少なく、住宅不在、市民不在の都市機能論の誤りが、問題発生の一因になっていることは否定できません。公に実施される法定都市計画においても、土地利用計画の実態は地域地区制のような規制が主で、立地を含んだ住宅建設や宅地開発の計画はありません。団地開発のような事業も土地利用計画と無縁に住宅供給が主眼でした。その結果は市内では低層過密の混合市街地を形成し、市外では公共施設がないままにスプロール現象を生じています。

スポンサーリンク
土地

また行政のタテ割りから、都市計画に総合性が与えられず、公共輸送機関であるべき鉄道は、土地利用計画や市街地開発事業との関係よりも経営採算の立場から整備が図られます。皮肉に考えれば高い混雑度ほど採算が良く、その結果は通勤地獄といわれるほどの混雑ぶりです。
さらに背後にある問題としては、すべての基礎となる土地について、用地対策、地価対策など宅地対策がなかったことです。これが計画の実現を阻み、問題をさらに悪化させていきました。しかし問題の発生に対して傍観されていたわけではありません。それに対し種々の対策が考えられ、計画が立てられ、その一部については実施もされました。ただ問題の発生に先行するのではなく、たいていは事後対策で後手にまわることが多く、対策も個別的、部分的でした。このため、計画は立てても現実の圧力に崩され、事業を実施すれば逆効果となることもありました。
通勤輸送対策のために、鉄道の整備が行なわれれば、通勤圏はますます拡がり通勤難の悪循環をきたします。住宅団地や新駅が建設されると周辺の地価がたちまち上昇し、それ以上の開発は行なえなくなります。街づくりを目指して住宅団地が大規模化することは良いのですが、新駅を造っても通勤人口の急増に鉄道の輸送力が追いつきません。宅地開発と鉄道整備との関係は次第に改善されてきましたが、まだこのような問題が多く残っています。
意欲的な大規模開発を目指しているニュータウンでは、母都市への足は一応確保されてはいても、既設線を利用するだけに輸送力に限界があり、混雑度は高くなります。また、宅地開発と鉄道の経営主体が異なっているため、両者の開発と整備の間に時間的なずれがあり、混乱をきたすおそれが多くあります。宅地開発と鉄道輸送の総合経営は、私鉄によって戦前にも戦後にも行なわれてきました。戦前はむしろ沿線開発による運賃取益が主たる目的でしたが、戦後では地価の値上り収益を主目的としています。これを大規摸に行なっているのが多摩田園都市です。用地の一部分を先行買収し、地元と一緒に土地区画整埋を実施して要所の土地をまとめて取得し、そこへ鉄道を敷設してさらに地価上昇を図り、鉄道建設費を償還しながら収益を上げる手法です。これは、経済法則にのっとった巧みな開発経営で、一つの方向を示すものといえます。土地を大規模に先行取得し、それを保有しながら好機に分譲するというのは大資本がゆえに可能です。また民間経営であるがゆえに、地価が相対的に高いことはゆがめず、区画整理後の一般地主の持地の将来の値上りを待つため売却されず、空閑地のまま残されて市街化の速度が計画より遅れている点や、学校その他公共施設の建設が、市と財源、資金負担の面で調整がつかず遅廷している点などに問題があります。
しかしこのような計画的開発は全体からみれば量においても、開発場所においても限られ、宅地供給の大部分は依然個人にまかされていて、地価の高騰とスプロール化がなお続いています。法定都市計画もようやく土地利用計画を確立し、市街地開発事業を推進し、現状の無計画な市街地の拡大を防止することを一つの主目的として、法律の改正を行ない、新しい制度の導入を図りました。昭和43年5月に公布された改正都市計画法は、宅地開発、土地利用の面で、おおむね10年間に公共施設を整備しながら計画的に市街化すべき市街化区域と、これとは反対に公共施設の整備を行なわず、市街化を抑制すべき市街化調整区域とに分けています。そして市街化区域においては、さらに一定規模以上の宅地の開発について、開発基準に適合しない場合には禁止するというように、新しく開発許可制度を設けました。また、都市計画事業の実施を容易にするために、土地の先買権を事業施行者に認め、土地の買取りのための財源として土地基金制度を創設しています。今後は、これら新しい制度の運用が期待されるところですが、むしろその成果は地価対策にかかっています。市街化区域を設定すれば、逆に地価が上がるおそれが多く、また小規模の宅地開発については無力に近い。しかしいずれにしても、規制による都市計画だけでは、過去の例からみても、十分な成果を上げることは難しい。都市計画、宅地開発にも戦略が必要であって、単に規制するだけではなく、誘導、誘発を図ることのできるほどの大規模な開発事業が行なわれることが必要です。

土地
都市経済の住宅需要/ 時代と土地市場/ 公示価格/ 不動産取引価格の調査要領/ 標準価格地域/ 宅地開発事業の到達点/ 適地が不適地化する状況/ 住宅の適地条件/ 住宅立地と交通/ 住宅立地の特徴/ 通勤圏の拡大/ 通勤輸送と通勤混雑/ 通勤時間と通勤費/ 宅地開発と交通計画/ 都市再開発の要因/ 交通の混乱と公共施設/ 都市再開発の手法/ 都市再開発と業務施設/ 空間利用と開発価値/ 土地所有権/ 借地権および地上権/ 建物所有権と管理方法/ 都市整備の方向と再開発/ 土地利用計画と土地問題/ 土地利用計画と概念/ スプロール防止と広域土地利用/ スプロール規制と都市計画法/ 住宅地の土地利用計画/ 住宅地の立地条件/ 居住環境悪化の防止と土地利用/ 住宅地の密度規制と居住環境/ 住宅地の用途規制と居住環境/ 住宅地における相隣関係の規制/ 地価対策としての土地利用計画/ 土地利用の計画的促進/ 土地政策と土地税制/ 土地税制について検討すべき各面/ 固定資産税の評価の適正化/ 土地税制の方向/

       copyrght(c).土地の買い方ガイド.all rights reserved

スポンサーリンク

プライバシーポリシー