通勤時間と通勤費

通勤交通に関する問題点の一つは、通勤圏の拡大、住宅の遠隔立地による通勤時間の延長と通勤費の負担です。通勤時間の限界はしばしば片道1時間以内といわれていますが、もちろん個人差はあります。各人の生活時間の内容や労働条件、また交通手段の種類や混雑度、さらに個人的な肉体、心理状態によって若干異なってきます。肉体労働をする人などは30分程度が限界かもしれません。外国の例では、ストックホルムの調べでは20分から25分ときわめて短時間の例があり、また最大許容時間40分という説もあります。一つの例として都営住宅居住者を四つの階層に分けて、通勤片道何時間ぐらいから時間がかかり過ぎて困るか、居住者の主観的判断の結果をまとめたものです。これによれば、居住者の階層によって若干の違いが表われています。一般的傾向としては、1時間から1時間半の範囲で、通勤時間がかかり過ぎるとする者の比率が60%から80%となっています。1時間半以上でもかかり過ぎないとする者があることは、住宅難の事情からやむをえないと諦めているのでしょう。

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居住者の階層別にみると、第2種都営住宅に住む低所得階層の者ほど通勤時間が短縮されることを望み、また事務系通勤者に比べ労務系通勤者の方が同じ通勤時間でもかかり過ぎるとする者が多い。次に通勤時間の実態として、京浜地帯にある主要産業の労働者の平均通勤時間を、事業所の所在地別、すなわち通勤先別に調べた結果の一部では、都心3区に通勤する者(主としてホワイトカラー)の通勤時間は、40分から1時間20分圏に約7割が集中していることは、都市周辺部に多く居住していることを示しています。これに対し下町方面に通勤する物(主としてブルーカラー)は20分圏以内に5割近くが集中し、職住が比較的接近していることを示しています。しかし通勤時間が1時間以上のものが、前者の場合に約4割、後者の場合2割もいることは、大都市の通勤難を物語るものです。
居住者の相当数が東京区部への通勤者で占められながら、最近の用地難からますます遠隔地に立地している住宅公団の賃貸住宅居住者について、片道通勤時間をみると、1時間から1時間半に集中しています。しかし、1時間半をこえるものが約2割を示していることは驚くべきことです。これでは住宅難は解決されたが通勤難を生み、結局居住難は解決されないことになります。通勤不便による住宅変更希望者をみても1時間半の通勤時間になると急に増えており、定住観念が少なくなります。
給与住宅のように職場との関係がはっきりしている場合には、一般に適当と思われる通勤時間圏内に立地しています。東京区部内の数事業所を調査した結果では、労務系従業員用の住宅では、徒歩圏内と考えられる15分以内が最も多く、約7割が30分圏内に立地していました。これに対し事務系従業員用の住宅は30分から1時間圏が多いが、用地の取得難からアパート形式のものでも1時間以上の場所に建てざるをえなくなっています。通勤時間が長いことは、労働のための準備拘束時間が長いことであり、それだけ私生活の余暇時間や自由時間が奪われることになります。
通勤費は家賃と同じで、一度居所を決めれば毎月定額を支出しなければならないもので、家賃と密接な関係があります。一般に都心に近く通勤費が安い場所の住宅は家賃が高く、逆に通勤費のかさむ場所にある住宅の家賃は低く、家計においては通勤費と家賃とを合わせて負担を考えるべきです。公共住宅などでは、建設費さらに家賃を安く抑えるため、地価の安い場所に建設することが多いのですが、居住者の負担では通勤費がそれだけ多くかかることになります。居住者の側に立って建設場所を選定すべきです。家賃の負担能力については、しばしば議論されます。その場合には通勤費の負担をも合わせ居住費用として検討することが過当です。家賃の負担限界は家計の15%から20%程度ではないかといわれていますが、理論的に解明の難しい問題です。通勤費の場合も同様に負担限界を出すことは難しく、むしろ両費用を合わせた居住費の実態から考察する方が実際的で、居住費の負担限界は家計の20%25%程度であろうと考えられます。
ただ近年はこのような原則を乱す条件が多く、その一つは地価の急騰によって、新築住宅の家賃も急騰するため、住宅の建設場所、償却年数以外に、変動する地価に関係がある建設時期が家賃に大きな差をつけます。民間住宅の場合にはこれがある程度是正されますが、原価方式に基づく公共住宅の場合には、建設時期の方が建設場所よりも家賃に大きな影響をもっています。次に通勤費については、最近通勤費の全額あるいは一部について、通勤手当を支給する企業が多くなりました。しかし結果的にみるならば、通勤費の企業負担は、その分だけ家賃上昇に転化されやすいので、居住者にとっては居住費は安くなりません。通勤手当を支給されない世帯の場合には、かえって居住費が増大するおそれがあります。またこれとは別に、通勤手当の支給は、表面上は速距離通勤による経済的負担を軽滅するので、通勤時間の制約はあるにせよ、住宅立地の拡散を助長し、通勤需要を増大させます。
鉄道側にとっては通勤需要が増えるほど、通勤輸送費用が長期的に上昇するといわれ、これが家賃値上げの口実となります。定期旅客には運賃の割引が行なわれています。もとを正せば沿線への人口誘致からスタートしたものです。今日では公益企業として社会政策的に決められており、将来はますますその色彩を強めるべきです。通勤者は好んで交通機関を利用するのではありません。都市、特に広大な生活圏をもつ大都市において、公共交通機関は一般道路と同じ機能をもち、利用せざるをえないのです。

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