通勤輸送と通勤混雑

職場が居住地に近く徒歩圏内にあれば、通勤問題は生じません。また、職場が遠く、なにかの交通機関を利用する場合でも、耐えうる通勤時間内で混雑しなければ通勤問題は生じません。今日のように土地利用が専用化し、市街地が拡大し、職場と住宅とが分離し、住宅不足により適当な場所に住宅を選ぶことができない大都市においては、徒歩で通勤できる人はきわめて限られています。大部分の人はなにかの交通機関を利用せざるをえません。この場合においても、日本でも自動車の普及が著しいのですが、道路、駐車場等の不備な現状では自動車通勤は例外であり、大部分の通勤者はなお鉄道、バスなどの大量輸送機関にたよらざるをえません。自動車通勤は、通勤者個人からみれば、住宅と職場とを直接結び、コンベアーのように機械的に運ぶ大量輸送機関と違って、道路網の制約や交通渋滞はあっても、自分の意思が働く点から都合のよい乗物にちがいありませんが、公共的に考えるならば、大都市における自動車通勤は道路上の輸送能力、駐車場の確保の点から困難であり、一部のものか一部の区域に限られます。特に日本のような高密度都市である場合には、通勤に不適当な乗物といわざるをえません。

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土地

都市交通機関の輸送能力の比較や、それに必要な土地面積の比較からみて明らかなように、自動車の輸送能力は極端に小さく、また輸送能力を増そうとすれば、広大な土地面積を必要とします。大量輸送機関がなく、すべてを自動車交通にたよっているロスアンゼルスでは、道路や駐車場等の交通用地が市街地の2/3を占めているといわれ、そのため市街地は周辺に広く拡がり、交通量の激増、それに対する交通施設の拡充、そして市街地の拡散とが悪循環となっています。その結果ようやく大量輸送機関の建設計画が考慮されるようになりました。サンフランシスコでは、激増する自動車交通に対して、高速道路を造るのがよいか、高速鉄道を造るのがよいか、建設費さらにその住民負担を比較した結果、高速鉄道の建設に踏みきっています。
日本の都市内道路事情は外国の都市にくらべて極端に悪く、外国なみに道路率を上げたとしても、自動車がさらに普及すれば、混雑状態はその限度まで続くこととなります。最近では大都市内部への自家用車乗入れ共止という方策まで考えられるような状態です。一度自動車に乗りなれると、公共輸送機関を利用することは拘束を受けるようで、自動車通勤から電車、バス通勤に変わることに抵抗があります。サンフランシスコの高速鉄道の場合でも、駅まではバスではなく自家用車で通うパーキング・アンド・ライドの方式をとっています。
個人的通勤手段として、他に自転車、モーターバイク等があります。日本でも地方都市によっては盛んに利用され、また外国でもオランダあたりでは自転車通勤が当然のようになっています。オランダで自転車通勤が盛んであるのは生活習慣にもよることですが、街がきわめてコンパクトにできており、職場と住宅とが近いこと、既成の市街地は道路が狭く駐車場も取れないこと、また全国土が平担なこと、さらに施策として次点者専用道路が完備されていることなどによると考えられます。日本の大都市でも、自転車専用道路を指定し、短距離の通勤、通学に自転車を利用することが考えられますが、通勤圏、通学圏がきわめて拡がり、通勤、通学人口が多く、今後も急増すると考えられるので、通勤、通学用の交通機関は鉄道に依存せざるをえず、現在でも鉄道が特に通勤交通の主役となっています。
東京における交通機関別の輸送人員の比率をみると鉄道、地下鉄で約70%を占め、またその70%が定期客です。また、周辺から区部内へ通勤、通学する者の98%が鉄道を利用しています。現在の通勤問題の一つは、市民からみれば通勤地獄ともいわれる混雑であり、鉄道側からみれば輸送効率の低さがあります。
混雑を招いた理由は、通勤人口の増加に対して施設面の整備が著しく遅れたということはいうまでもありません。しかし、なぜ遅れたかという問題を明らかにする必要があります。一つの原因は戦後当分の間は復興に追われたということもありますが、大都市対策として、将来の市街化の動向に対応した鉄道輸送に関する考え方が甘く、また計画の内容が適切でなかったことによります。例えば東京に関する他の諸計画も同様でしたが、過大都市論が出て大都市を抑制すべきであるとの計画、方針が、現実の都市化の動向を十分見きわめないで打ち出されていました。このため、大都市の通勤交通の発生源である人口や市街地の将来についての判断、対策を過ったことにあると考えられます。
当面、既設線の増強、すなわち車両の大型化、編成車両の増結、運転間隔の短縮、速度の向上、線増に重点がおかれ、将来の市街地がどう発展するか、土地利用計画と関連した新線計画はほとんど立てられませんでした。既設線の増強だけでは、急増する通勤人口やふくれ上がる市街地に対処できなくなり、新線計画を立てることが必要なときには地価が上がり、用地の取得が困難となりました。例えば新線ではありませんが、線増の場合の用地費がいかに高く、それが建設費を多額にしています。地価が上昇しつつある時、新線の場合でも計画が発表されるだけで、期待価格から地価が急騰し、また地価をつり上げるための反対から、用地取得が著しく困難になり、膨大な建設資金を必要とするようになります。一方で通勤運賃は割引率が高く、収益は上がりません。むしろ通勤客の増大に応じ、朝タだけ車両を増し、遠距離まで通勤電車を走らせば、車両の運転効率は下がり、ますます経営が困難になります。運賃、建設費、経営など各種の問題があったにせよ、公共輸送機関の整備が遅れていたことは確かです。市民の通勤において、公共輸送機関を利用するしないとかの自由はありません。代替手段はなく、また住宅不足のため移転することも困難であるからです。今日の大都市においては、公共輸送機関は一般道路と同様の意味をもつものになっています。

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