通勤圏の拡大

交通機関の発達や交通施設の整備は、都市の勢力圏を拡げ、都市に集中する人口を広い区域にわたって居住させ、職場と住居の分離を促進し、市街地を周辺部へと拡大させます。一方で都市に隣接する区域をより近づけて、そこに居住している人口を都市に引きつけます。私達は交通機関を利用することにより、通勤圏、通学圏その他の生活行動圏を拡げることができます。交通機関、交通施設の整備は単に配置だけでなく、速度、輸送能力も重要であり、これらの程度によって人口分布や市街地の形態も変わってきます。東京において、地下鉄を除き現在の鉄道網がほぼ形成されたのは明治末期から大正時代です。しかし、当時の鉄道はもっぱら地方都市との連絡あるいは周辺農村との間の物資輸送を目的に敷設され、市街地の形態や人口分布にはほとんど影響を与えませんでした。それは市街地特に下町では職住の分離が行なわれず、人口密度がきわめて高く、コンパクトな市街地を形成し、速度の遅い市内路面電車でも十分に通勤圏をカバーできたからです。しかし、大正時代にも相当の混雑があったといわれています。山手線外部へ市街地が拡大したのは大正12年の関東大震災後です。震災を機会に土地利用の専用化、過密人口の分散が行なわれ、まず都心に直結していた中央沿線に郊外住宅地を拡大していきました。そして、大正後期から昭和前期にかけての東京の人口集中は、既設の郊外電車の整備や新線の敷設など高速電車の発達とあいまって、主要私鉄沿線の郊外住宅地化を促進しました。しかし、当時の市在街地の限界が区部内に収まったのは人口数にもよりますが、郊外電車が山手環状線でとまっていたために都心への1時間圏が区部内にあったことによります。当時の都市計画において、都心から1時間圏を東京都市計画区域と考え、これを基礎に、昭和7年旧15区に周辺町村を合併したのが現在の区部であるため当然です。

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土地

戦後、東京が内部の復興に追われているうちに、経済、社会の大きな発展変革は激しい都市化をもたらし、それを受ける十分な都市政策がないままに人口、産業の急激な集中が行なわれました。それは、都市建設の基盤である土地に関し、先に述べたように地価の高騰をもたらし、これが市街地の無秩序な拡大の要因となりました。戦災による復旧を終え、次第に輸送力増強のために整備されはじめた郊外高速電車が通勤圏の拡大を促したことは事実ですが、急連な大都市圏への人口集中と、それに伴う宅地需要を予測し、前もって通勤圏あるいは市街地の拡大に対し、土地利用計画、交通機関の整備が行なわれなかったところに、近年の通勤を中心とする都市の交通問題を激化させた一因がありました。戦後東京都市圏内をみても既設線の増強は行なわれましたが、その既設の鉄道網は約60年以前のままでした。路面電車の代替として内部に地下鉄の建設が行なわれましたが、届辺部において通勤輸送のための新線建設はほとんど行なわれていません。これは、都市の発展、変貌の予見を誤り、観念的な大都市抑制論によって、大都市周辺の計画的開発が行なわれなかったことによります。しかし甘い予測や計画とは別に、現実には人口はますます大都市圏内に集中し、市街地は残すべきとされた緑地帯をいや応なしに侵蝕していきました。
東京大都市圏を10km圏ごとに分けて、それぞれの圏内の人口増減傾向をみてみると、都心から10km圏では昭和25年から35年間に約120万人の増加があったにもかかわらず、36年以降は滅少しはじめ、いわゆる都心の空洞化現象を示しています。これにひきかえ人口増加が著しいのは10kmから20km圏であり、各期とも100万人から130万人の増で、大都市圏内の人口増加の約5割前後を受け持っています。しかし、人口増加率からみれば20kmから30km圏が最も高く、これについで30kmから40km圏であり、人口分布の広域分散化が急速に進んでいることを物語っています。一方で職場となり通勤先となる事業所の就業者数の増加傾向につき、2次産業就業者についてはなお10kmから20km圏の都市周辺部に増加が多いのですが、昭和35年を境として,0kmから10km圏、10kmから20km圏内の増加率はやや鈍化し、これに対し20km圏外の区域の増加率が大となっています。2次産業は、都心に近い区域において分散滅少とはいきませんが、安い土地が得られないこと,公害に対する反対が強いことなどから、停滞しはじめてきたことは事実です。これに対して3次産業就業者は、各圏内の人口の伸びに応じていずれも増加しています。都心からの10km圏内ではますます増加傾向を強め、大都市における3次産業的機能の激しい集中がますます進行していることを示しています。一方では夜間人口が外周部へと拡散し、他方では逆に、就業人口は都心近くになお集債するということは、当然通勤距離が長くなり、また通勤交通量を増大させる結果となります。周辺部に職場が増えることによって人口も増えるのであれば、このようなことは生じないのですが、増大する都心近くの職場への通勤人口が周辺部に溢れ出て、その区域の人口増加となっています。
東京周辺の都市について、東京区部への通勤、通学依存率30%の区域は30km圏に及び、また、50km圏でも依存率55%を示すものがあります。この依存率はまた年ごとに増加していることは、増加人口の大部分が、東京の内部に本来ならば居住すべき人口であることを示しています。最近の区域別人口増減を表面上からみて、都市の内部人口が滅少し、周辺部が増加する現象を必然の法則と即断することは誤りです。確かに、都市内部0kmから10km圏内の人口数の合計においては滅少傾向をみせていても、局地的にみると人口が集中的に急増している区域がみられます。山手線の外側、中央沿線において特に密集化が激しく、このことは、都心への交通条件がきわめて良く、それを条件に人口が増加しているのであり、またその住宅需要に応えて木造賃貸アパートが密集しています。市民の階層によって、居住地の職場への接近度の強さは違ってきますが、職場の労勘条件、例えば早朝勤務、深夜勤務などにより、職場への接近度が強く、居住地が限定される階層が相当数あることに注目すべきです。

土地
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