住宅立地の特徴

戦前の住宅市街地の発展、拡大の形態と、戦後とくに最近のそれとを比べてみると、その間に大きな相違が見られます。戦前では大都市においてさえも、市街地は放射状ではありますが、鉄道沿線にほぼ連担しながら外周部へと拡大し、また、各駅を中心に同心円状に発展するのが一般的傾向でした。それが戦後では、マクロ的に見れば鉄道の影響をうけて市街地は拡大していますが、内部に空閑地を残しながら分散的に拡大を続け、いわゆるスプロール現象が生じています。ミクロ的に見ても、例えば郊外の駅では、市街化は駅前から始まらず駅から相当離れた区域において行なわれる例が多く、また戦前では、交通に多少の時間と費用がかかっても自然環境のよい郊外部は、比較的高所得者の住宅地として発展したものです。現在では、通勤時間と通勤費が相当に負担となっても、一般庶民の住宅地として開発されつつあります。このように最近の住宅立地の傾向が変化した理由は、様々な原因が考えられます。そのうちでも素因となるものは、いうまでもなく人口の急激な集中増加であり、さらに世帯の分化や都市内部における企業の集中増大があげられ、これらが重なり合って、厖大な住宅需要、宅地需要を生んだとみることができます。

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土地

都市内部への企業の集中拡大は、都心等を業務地として専用化し、職住分離を促し、その結果、追われた市民は新しい住宅需要を生みます。このような人口増加以上の住宅需要増に対する宅地量に加わって都市発展に伴い新規に立地し、あるいは都市内部から分散してくる工業に対する土地需要また、都市化に対処して急遽整備されはじめた公共施設に対する土地需要が加わって、宅地を含め土地の需要量は近年急増を続けています。
地価の高騰は異常といわなければならず、最近まで公に地価対策が取り上げられなかった理由はなぜでしょうか。インフレ時代に財産価値があるのは土地であり。土地で儲けるには物価が上がったほうがよく、また、地価が上がればそれだけ担保能力がふえ信用を増し、大企業にとって好都合であるからです。しかし近年では、地価の高騰も別の面で大企業に不利となってきました。新規に工場を立地したとしても、建設費の10%を占めるような高い用地費はコストに大きく影響します。市街地を通る道路などでは、極端な場合用地費が建設費の80%を占めるなど、社会資本の充実が要望されているとき、大きな阻害要因となってきました。その結果、地価対策が各方面で叫ばれるようになりました。要因は色々あるにせよ、現実には地価はこの十数年間急騰を続けています。マクロ的には先に述べた住宅立地の経済理論に従いながら、ミクロ的には時系列的な地価の投機的上昇や売手市場の売り情しみに歪められています。これが、土地利用、市街地形態の面において、無秩序とも見えるスプロール現象や住宅地の遠距離拡散となって現われてきます。
住宅立地が後退したなかでも、特に目立つものは公営・公団などの公共住宅です。民間の住宅であれば、地価が高ければ敷地の面積を滅らして質の低下を図ることができますが、公共住宅では敷地規模の基準や用地費の基準単価が決まっているので、安い地価を求めてさらに遠隔の場所に立地せざるをえません。立地を東京都内に限らない公団住宅についてみると、入居者の7割から9割が東京通勤者でありながら、年次によって増減はありますが、東京、神奈川方面から次第に埼玉、千葉方面へと建設地の重点が移りつつあります。これら公共住宅の立地をさらにミクロでみると、鉄道沿線から外れた中間地帯に、周辺の市街地とは無縁に孤立して立地するのが大部分です。公共住宅はいわゆる団地の形式をとり集団的に建設されるので、一度に取得すべき土地は大規模となります。この土地の規模と地価の安さを必要とするため、鉄道沿線間の中間地帯に残っている農地、山林が、公共住宅の建設地に当てられやすく、このような中間地帯に立地す開設る団地では、新たにされるバス路線によって、最寄の鉄道駅への交通を確保することになりますが、このバス路線の開通は道に団地周辺の住宅地化を促進します。この点から考えると中間地帯における近年のバス交通の発達も、スプロールを促進したといえます。これに対して住宅建設の大部分を占める民間住宅の立地は需要よりも宅地供給の形態にかかっています。宅地供給は、地主が個別にかつ全く恣意的に行なう場合、一般不動産業者が地主に代行あるいは地主から買収して比較的まとまった宅地を供給する場合、電鉄会社などの大資本が大規模に行なう場合など、多様な形態をとります。
宅地の供給といっても、そのほとんどが農地、山林を転用するもので、全く整地造成をしないままの土地の場合もあり、宅地の名に値するように造成工事が行なわれ、道路や排水施設を完備したものもあります。しかし、一般業者の分譲地では、上下水施設についての配慮があまりなされていません。個別の地主直接による場合は、これら施設は全く宅地需要者にまかされるのが通例です。民間供給の宅地の立地は、供給者の形態によって異なります。農民等が自ら個別に供給する場合は、土地を売らなくとも生計を保てるぐらいの農業収入や兼業収入があるので、強い需要があり、望む地価でなければ、将来の地価の上昇を期待して土地を容易に手放そうとしません。また、売る動機も、古くなった農家を近代的な住宅に替えるとか、臨時のまとまった現金収入が欲しいときで、それが達成されれば土地を売ることを止めます。したがって、交通が便利で需要が多い鉄道沿線でも、各農家が生活の近代化を図ってしまえば、宅地供給は停止するため、各農家の持地の一部が宅地化するだけで、宅地は農地の中に点在し、零細スプロールの状態となります。
資本力が小さい一般不動産業者の分譲宅地は、立地的にみると最も適地条件が悪く、一般に彼らは短期高利の資金を借りて経営するので、できるだけ安く購入し、土地造成を少なくし、できるだけ早い機会に高く売却しなければなりません。比較的良心的な業者は、公共住宅団地の予定地周辺に目をつけ、団地ができればそれが市街地隣接ということになり、団地内の施設や派生する店舖が利用できます。またバスの便もよくなり、他力本願によって完成した市街地価格の近くまで分譲価格をつり上げることができます。しかし一般的には、交通条件その他適地条件の良さより、不便で狭くとも庶民に持家階層になれる願いをかなえさせるよう、地価の安さが看板です。このため、これら業者の分譲宅地は、当分周辺が市街化しそうもない遠郊部に孤立し、スプロール区域の最前線となっており、また、往々にして災害のおそれがある場所もあります。電鉄会社や大資本系の不動産会社は、資金をねかせることができるので、宅地造成を十分に行なう期間と資金があり、比較的高級住宅として造成し、十分の値上りを舞って売却しています。そのため、適地条件を重視し、各種の供給形態の中でも交通条件、自然環境条件にすぐれています。特に電鉄会社は自社沿線に宅地分譲を行ない、それによる収益のほか、鉄道やターミナルなどにある系列デパートなどによる収益も合わせた総合経営を行なって、所得上昇、持家建設の雰囲気に乗っています。しかし、需要層は限られており一般庶民には縁遠いが、供給量を少なくし即時売切れという商法によって、潜在需要を引き出し、それは逆に次回分譲宅地の価格を上げうる理由となります。

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