住宅の適地条件

近代の都市社会では、社会組織の分業化や生活内容の多様化によって、個人生活や家族生活を営む場である住宅と、社会生活が行なわれる場である職場などが分離しています。一部ではなお、零細な企業で家族労働の形をとるもの、労働時間が不規則なものでは、例えば住宅と商店とが、また住宅と工場とが併存するなど、住宅と職場とが未分化のものがみられますが、社会が高度化するほど住宅と職場との分離傾向が強まって行きます。企業経営がより能率を高めるため近代化され、人的には俸給生活者が増え、物的には施設が大規模となり業務環境が整備されてゆくと、職場は住宅を排除して集団化し、都市内に商業地、工業地その他の業務地を専用的に形成します。一方において、住生活が向上し、私生活が重んじられ、労働から解放された自由時間が増え、居住環境が整備されるようになると、住宅は職場から分離してゆき、都市生活者の住宅地が都市内部を占める業務地の周辺部に形成されてゆきます。このように住宅と職場とが分離していった結果は、その両者の間に体日を除いて朝夕、大量の通勤交通を周期的にかつ集中的に発生するようになります。この通勤交通は都市の規模が大きくなるにつれて遠距離となり、通勤圏を拡大し、交通機則を利用せざるをえなくなります。したがって、住宅と職場とを合理的に配置するための土地利用計画と同時に、住宅と職場を結ぶ交通網計画の良否は、通勤時間や通勤費などを通じ、市民の住生活に大きな影響を及ぽしてきます。住宅を社会生活の基地として、そこから発生する交通は通勤以外にも通学があり、また買物やレジャーのための外出による交通もあります。これらも社会の進展や都市の発展に応じ、交通量は増え、通学圏や消費圏などの生活圏が拡大してゆき、これに関する問題解決や対策が必要となります。しかし、生活の糧を得る労働の一部とみられる通勤行為は、市民の日常の住生活において大きな比重を占め、職場との関係における住宅立地の問題につながっていきます。

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土地

住宅は土地のうえに固定して建てられ、土地は場所としてその位置が決められ、場所は自然的条件や社会的条件によって環境が形成されます。私達が住宅を建てようとするとき、また貸家を深そうとするとき、自分の職業、収入、家族構成あるいは生活習慣などに対応させて、住宅そのものの規模や間取りや設備などを考えると同時に、住宅が建つ土地、場所、環境の条件を検討します。都市における住生活を安全に便利に快適に充足させるためには、ただ住宅の内容だけではなく、それを取り巻く生活環境として自然的なものから社会的なものまで必要です。住宅を居住性からみた適地の環境条件には色々あります。まず安全 性からみれば自然災害に対する安全性があげられます。これは誰にとっても差のない共通な条件であり、またいうまでもなく最小限の必要条件です。それでも現実には、災害のおそれが多い地域は、地価の安さといった経済面や、通勤の利便などから、往々にして低所得階層の住宅地となりやすい。経済的な面から住宅の位置を決めることを住宅立地といえば、所得水準が低い場合には、しばしば立地条件が適地条件を抑えてしまい、住生活水準を低下させることが多く、都市活動が盛んになり交通量が増えるにつれ、町の騒音も大きくなります。公害はいますぐ防除できないにしても、技術的に解決できる問題です。
緑が多く空気が澄んで自然環境が良好な場所に住むことは、誰しも望むところであっても、高度に利用される都市の内部にそれを求めることは次第にできなくなります。それを望むとすれば郊外に居住を求めることになりますが、現状では通勤条件や生活施設の条件が不利となります。また郊外で得られた自然環境も、都市化の強い圧力の前には失われてゆくかもしれません。都市化のなかで自然環境を保全しようとするならば、公園のように施設緑地の形で、公共的に確保することが適当です。住宅の適地条件に、付近に学校や商店があること、また上下水道が整っていることなど、目常の生活を営むために必要な施設の条件がありますが、これらの施設は局地的に整備することが可能であり、また住宅地が成熟して、それらの経営が成り立ってゆけば自然に備わってくるものもあります。その質的内容は居住者の階層によって多少異なっていても、利便性からみれば、新開地を除いて大差はありません。
通勤は住宅と離れた職場で労働するかぎり、体日を除いて毎日、避けることができない生活行為であり、労働の延長ともいえます。しかもこの通勤労働は職場での労働と逆に、時間をかければかけるほど、出費がかさみ疲労を増し生産的ではありません。市民の大多数を占める勤め人にとっては、職場が彼らの生活にきわめて大きく影響します。一つの都市内では住宅が先に決まり、そこからの通勤条件で職場を決めるということはまずできません。職場が先に決まり、その職場への通勤条件を考えて住宅を求めようとします。このように通勤条件は、生活の必須条件である労働に伴うものであるため、一般勤労者にとっては、住宅適地の他の条件、自然環境や施設の条件よりも第一義的に重視する傾向があります。

土地
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