時代と土地市場

人間生活に必要な材は物やサービスです。しかし、交換経済社会では,他人の欲する物やサービスを生産提供して、それに対応する額の貨幣を受け取り、その貨幣で自分の欲する物やサービスを他人から買いとって生活しています。したがって、貨幣によって媒介される物やサービスの交換比率は過正妥当でなくてはなりません。その交換比率が価格であるため、価格の社会的表現としての物価は、単なる交換比率にとどまることなく、その公正な秩序が要請されるのです。人々は価格をみて生産し、価格をみて消費しているからです。このような価格を社会的機能としてみると、個々の経済主体の行動能率を高め、復雑きわまりない経済現象を巨視的に均衡せしめる作用です。したがって、価格そのものの本質を要約すると社会的な手段価値ということができます。いまや、貿易の自由化によって、それは国際的なものにまでなっています。例えば1930年頃のアメリカにおける失業者1400万人というような社会不安を招来する時代が到来しました。かくて、アメリカが経済政策の全体系としてニューディールを展開したように、世界の各国は、各種の経済政策を実践するに至って、アダム・スミスの個人的自由を金科玉条とした経済社会から、社会的自由をモットーとする高度資本主義社会へと移行したのです。それら一連の経済政策を反面からみれば、価格の社会的機能を効果あらしめる流通政策の実践ということができます。流通政策は、流通過程での各種の価格対策の実践と、財の種類に応じた流通機構を確立して合理的な価格形成の場をつくろうとする方法の二つがあります。この二つは車の両輪に等しく、ともに実施しないと効果は期待できません。そして、土地の場合もその例外たりえないのです。

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土地

社会的自由をモットーとする経済社会では、それぞれの財の物理的性質と、社会経済的関係によって異なる流通機構を確立して、価格秩序の保持に努めています。例えば野菜、鮮魚のように貯蔵の困難な腐敗性物質は、中央卸売市場法に基づいて、生産者が直接参加する卸売市場で、実物取引による価格形成が行なわれています。綿花、生糸、ゴム、大豆などの品質が比較的均等であって大量取引に適し、かつ貯蔵性を有する物は、商品取引所法に基づいて設立される商品取引所で、標準物取引による価格形成が行なわれています。また、擬制資本としての株式証券は、証券取引法に基づいて設立される資本市場の一種、証券取引所において、投機売買による価格形成が行なわれています。独占的で公共性の大きい電気代、交通料金などは、それぞれの財に応じて制定された経済法に基づいて、価格決定は所管大臣の認可を必要としています。さらに、生産者保護を度外視しえない米、麦などの主要食料は、会糧管理法に基づく管理価格制度がとられています。
ところが、不動産についてみると、宅地の流通に秩序を与えることを目的として昭和27年に制定された、宅地建物取引業法があります。しかしそれは、直接的な価格形成機構としての配慮はおり込まれておらず、それどころか、土地市場の担い手は公平な第三者としての仲介業者でなくてはならないにかかわらず、売買利益を日的とする業者までを一括した制度になっています。この法律の制度的欠陥は、証券市場における媒介とブローカーの混在をみれば判ります。また,昭和38年には不動産鑑定法が制定されましたが、土地市場の担い手としての不動産取引業者との結びつきが全く講じられていないことは、前述のとおりです。これらは、土地政策の貧困以外の何ものでもありません。
不動産の法律上の定義は、土地とその定着物です。しかし、経済財としての不動産は、土地と定着物とを区別しないと明らかではありません。つまり、土地は自然財ですが建物、工作物など大部分の定着物は資本財です。それらは、土地に定着してはじめて不動産と称されるものであるため、その価格問題は自然財としての土地の価格を度外視しては意味をなしません。また、資本や労働の投下による農地における肥沃や造成された宅地などは、自然財としての土地の改良にほかなりません。不動産価格の問題を基礎づける土地の特性を要約すると、土地は自然財だということにつきます。土地は本質的に地球表面上の拡がりにすぎないのであって、そのような自然としての土地が法律によって個別性が与えられて独立の物になるのです。しかし、それだけでは経済財としての価格は生じません。そのような自然的、法律的な具体の土地が、位置によって異なる有用性を具備して立地している状態を価値判断することによって価格が生じるのです。私達それを山林、農地、宅地などと称しています。
このように経済財としての土地は、位置によって定まる個別的な面積です。したがってその価格は、規格化して生産される一般財のような銘柄がないため、実際に取引された価格があっても、それをそのまま他の土地の価格とすることはできません。生産される商品の市場価格は、一般的にいって個々の経済主体の単独行動では左右することのできない価格であるため、人々は市場価格を与えられたものとして受け取っています。いうまでもなく土地にもこれに似た市場価格はありますが、それは生産される商品の場合のような需要供給の調節者ではありません。土地需要が旺盛な時代は需要者だけが受けなくてはならない売手価格となり、不景気が深刻な時代は換金に追られる土地所有者の投売り価格が出現します。このことは、土地の大部分は売るために所有している商品でなく、生産または消費生活のために利用する資産だということにも起困します。土地価格は需要供給関係で形成されますが、その市場価格は需給両面の調節者でないということは、土地には一物一価の法則といわれる価格形成はありえないということです。したがって、意識してするかどうかは別として、個々の土地取引が行なわれる都度、売り手と買い手との間で鑑定評価を行なっています。しかし、成立した価格は当事者間の掛引だとか、売る目的は何か、買った土地をどうするかなどの異なる取引事情できまる価格であって、同じ土地であっても他の当事者が取引する価格とは違ったものです。土地を公共のために取得する場合など、公平な第三者の専門的な鑑定評価が必要になります。

土地
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