都市経済の住宅需要

地価が現在のように高騰した経済上の要因は、国民経済の成長に伴う宅地需要の増大にあることはいうまでもありませんが、その政治経済的な要因として政策的実践の怠慢を指摘せざるをえません。戦後の日本経済は、驚異的な成長をとげています。そして、その最大の原因は、敗戦によって領土の45%を失い、1億2千万人を擁する日本国民経済が、第二、三次産業に依存せざるをえない必然性に直面したことと、日本国民の技術能力ならびに素質の勤勉さとによることはいうまでもありませんが、日本の軍事費支出がきわめて少ないことによって、非生産的な消費が再生産過程や、消費生活部門にまわったという事実を見逃してはなりません。その結果は、各産業部門における生産高の伸び率を比較するまでもなく、人口と産業の都市集中となり、都市経済時代を出現するに到りました。かくて、当然の帰結として宅地需要の著しい増大となって、例えば都市近郊の農地は、物としては耕作地ではありますが、所有権の客体としての価値は宅地の素地としての商品であるという土地事情を招来しました。そして、その制度的背景は、農地に対しては占領政策に便乗して思い切った改革が断行されましたが、肝心の宅地については自由放任のままにしておいたということであって、日本現在の宅地問題を深刻化したそもそもの出発点です。

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土地

生産される商品は、需要が増加すれば価格が高くなり、価格が高くなれば利益が多くなるため生産増となって価格調整が行なわれます。ところが、この価格理論は土地には適用しません。それは、土地は生産されるものでないため、価格が高くなっても供給増加現象は起こらないことと、ほとんどの土地は何かに利用されている資産であって、売る目的の土地は至って少ないからです。むしろ反対に、宅地需要が旺盛になると、もっと高くなるという売り惜しみ心理による供給滅となって、地価の高騰に拍車をかけます。
地価問題を政府が正式にとりあげたのは、地価が物価の三倍近くに高騰した昭和35年に、建設省の諮問機関として設置された公共用地の取得に関する審議会の答申がはじめてです。翌36年には経済企画庁から、地価高騰の問題点と対策についての発表があり、地価が物価の5倍近くにはね上がった37年に宅地制度審議会が発足して、地価対策の審議が正式にはじめられました。そして、直接的な地価対策として不動産の鑑定評価制度が立法化するに至りましたが、土地市場の機能化対策として構想された地価公示制は後日にゆだねられ、不動産市場の直接的な担い手である不動産取引業者との関連のない単なる職業法にすぎないものになりました。その後、経済界の不況から地価の上昇は鈍化したとはいえ、大都市周辺の住宅地価格は高騰をつづけ、住宅対策や公共事業への影響がはなはだしく、抜本的な地価対策は重要な国家施策の一つとなるに至って、昭和40年8月には地価対策経済閣僚協議会が設けられ、41年には経済企画庁の物価問題懇談会で地価問題についての具体的提案がなされるなど、政府は地価問題の解決に本腰をいれたかのように見受けられました。ところが、政府部内や財界一部の異論からいたずらに議論がかわされるだげで今日に至っています。
以上のように、地価対策についての政治的実践が停滞する最大の理由は、所有権の客体の本質は観念的な価値であって、土地自体は、そのような所有権の客体の単なる現象形態にすぎないとする価値転倒の法律思想に基づくということができます。しかし、そのような法律思想の誤りは、土地は人間生活の基盤である自然資源としての領土の一区切りだというわかりきった事実を考えれば明らかです。
宅地の大量供給は、流通過程における地価対策の一手段ですが、宅地の素地は生産されるものでないため、その需要増となって、原料としての素地の価格をつり上げて、宅地供給事業そのものの行詰りを招来するに至っています。このような制度的矛盾を要約すると、流通過程での地価対策以前に、流通機構の確立を忘れているということです。それでは、合理的な流通機構の確立を指導する考えは何かというと、土地は生産される商品でないという土地本来の性質の理解です。しかし、土地は商品でないという否定命題だけでは、合理的な流通機構の構想は生まれてきません。
土地は生産されるものでないため本質的には商品でない。土地は生産的、消費生活的な価値を生産するものであるため、経済上の本質は生産要素だということが、これがその回答です。そして、このわかりきった事実から土地制度の一切は引き出されます。つまり、資産としての土地の流通機構は、資本市場であって商品市場であってはなりません。しかもそれは、観念的な証券市場と異なって、実体としての資本市場です。したがって、その市場の担い手は不動産仲介業者であって、土地を買って売る価格差利益目的の不動産取引業者でないことは、証券市場が媒介とプローカーを分離したことをみても明らかです。
また、資産としての土地の正常な市場価格は、複雑な価格要因の判断と、高度な鑑定評価手順を尽くして、はじめて求められるものであるため、恣意的、個別的な取引価格を正常化せしめるための不動産鑑定人制度が必要となります。

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