地主が使うまで貸すという契約

空地を所有している人が、当面自分でその土地を使用しないけれども、近い将来、そこに家を建てる予定があるので、それまでの間、その土地を他人に貸すなどして、有効に利用しようとすることは、経済的にも有意義なことです。
他面、土地を借りて、そこに家を建てる人は、そこを社会生活の本拠とし、できるだけ永続して使用することを期待しているものですから、その立場も考えなければなりません。また、家を建てるということは、経済的には、資本を投下することですから、特に、そこで借地人が事業を営んでいる場合には、投下した資本の回収ということにも考慮を払う必要があります。
そこで、このような地主の立場と借地人の立場を併せ考え、地主が使うまで土地を貸すという契約に、どのような効果を認めるのがよいか、また、このような契約をする場合には、どのような事柄に注意したらよいかという問題について考えてみましょう。

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土地

一般的にいって、家を建てるための借地権の存続期間について、一年とか三年とか短期の約束をしても、その借地権が一時使用のためのものとはいえず、借地人は、借地法の原則に従い、少なくとも二〇年以上にわたって、その土地を使用しうるものです。しかし、地主と借地人との間に、短期間に限って借地権を存続させようという明確な合意が成立し、しかも、その合意をすることについて相当な理由があるとき、いいかえれば、短期間で借地権を終わらせても、借地人に不当に不利益を与えることにならず、もしくは、短期間で借地権を終わらせて、地主にその土地を使用させる必要があるときには、その短期間内だけ存続する一時の借地権を認めることができると考えます。
判例の態度をみますと、約束した短期の期間が経過した時期において、地主が自らその土地を使用する必要があるなど、借地権の継続を拒否することを正当づけるにたりる事由が予期されているときは、その期間だけの一時使用のための借地権を認めております。例えば、もと材木商を盛大に営んでいた甲が、その所有地上の建物を戦災で焼かれたので、将来同所で材木商を再開する予定で、空地にしておいたところ、乙から材料置場として使用するのであり、建物としては、その置場に必要な仮設建築物を建てるにすぎないから、三年間でもよいから貸してもらいたいと懇請されたので、材木商再開までは、相当の準備期間も要することなので、三年くらいならば支障をきたすこともないと考えて、その土地を材料置場とその飯場に必要な仮設建築物の敷地以外の用途には使用しないという条件で、三年間乙に借した場合。
生命保険会社が、事務所、無料診療所などを収容する高層ビルを建築する計画をもち、その予定敷地を所有していたが、この計画が実現する見込がたつまで、しばらくの間その土地を信頼できる人に借すこととし、期間を二カ年と定め、同会社が必要なときには、いつでも明け渡すという条件で貸し、裁判上の和解調書を作った場合。
その所有地で、資金繰りなどを考え、二、三年後に旅館を営みたいと考えてい たAが、Bから借地を申し込まれたので、事情を述べて拒絶したが、一時的でもよいから貸してもらいたいと懇願され、その趣旨で、特に期間を三年と定め、地上に建てる家も、木造平家バラック建一時的仮住宅に限定して貸した場合などには、一時使用のための借地権を契約したものであると認め、約束の期間が過ぎたならば、借地を返さなければならない、と述べております。
これに対し、地主が、なるべく近い将来に、借地の返還を受けて、自分でこれを使いたいという考えをもっていても、その実現が具体性をもたず、特にその実現の時期が明確でないとき、あるいは、この点について、当事者間に了解がないときは、一時使用の借地権とはいえない、とされています。というのは、この場合には、借地人としては、地主がいつその土地を必要とするかということについて明確な認識がないのですから、このことを考えないで家を建ててさしつかえなく、この借地人は借地法の原則に従って保護されなければならないからです。
まず、地主が、将来その土地に自分で家を建てるのだが、それまで一時的に捉す、という場合をとってみますと、そこで問題になるのは、約束の期間が経過したときに、地主が家を建てることが具体的なものとして決まっているか、ということです。将来いつかは建てることにしているが、それは、三年先になるか、一〇年先になるかわからない、というのであれば、地主が、その土地を必要とする事由は、具体化されていないのですから、このような場合には、借地の期間を短期のものとする合理的理由がないことになります。したがって、地主が、その土地をいつ必要とするかはわからないが、ともかく貸しましょう。しかし、自分の方で必要とするようにたったならば、催促しだい、いつでも明け渡すという約束をしてくださいというのであれば、この約束は、借地法に決められていることよりも、借地人に不利益な特約として、無効なものとなり、通常の借地権として、六〇年もしくは三〇年間土地を使えることになります。
次に、三年とか五年とかほぼ確定した時期に、地主が、その土地をどのように使うかということについて、ある程度具体的な案があり、その時期まで一時的にその土地を使わせるという場合であっても、土地を借りたいという人に、その事情をよく話し、その了解を得て、それまででもよいから借ります、という確約をうるのでなければ、一時使用のための借地権とはいえません。したがって、地主が、三年とか五年後に、自分が使うために土地を返してもらえるようにするには、このようなごとき了解をとっておく必要があるのですが、できれば、契約書の前文にその趣旨のことを記載しておくのがよいと思います。

土地
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