建物の滅失と再築

甲地をAに貸し二〇年後にそれに隣接する乙地をBに貸しました。どちらの場合も、別に、どんな建物を建てるかなどの取決めはしませんでしたが、建物滅失の場合には、借地権は消滅する、という特約がしてありました。AとBがそれそれこの土地の上に建てていた建物がともに六年後に火事で焼失しました。私としては、この機会にどちらの土地も取り戻して、こちらで建物を建てたいのですが、借地人は、自分の家を建てるつもりのようです。どうすればよいのでしょうか。
借地上に所有されるべき建物の種類、構造を当事者が定めておかなかった場合、その借地権は堅固でない建物の所有を目的とするものとみなされます。建物の種類、構造の定めが黙示的なものでよいのですが、本問の場合はそのような黙示の定めもなかったものとして、借地権は堅固でない建物の所有を目的とするものと考えます。この借地権の存続期間を合意によって二〇年以上と定めたのなら、そのような定めは有効ですから、合意で定めた長さが借地権の存続期間になりますが、当事者が合意で期間を定めておかなかったとすれば、借地権の存続期間は三〇年です。そして、本間の借地権の存続期間がどちらも三〇年であると仮定すれば、甲地の借地権は建物が火災で滅失したときにはなお四年くらい残存期間があり、乙地については残存期間は二四年くらいであったことなります。
借地権は、その存続期間か合意によってでなく法律によって決まった場合で建物が朽廃したときにのみ、期間満了前に消滅するのであって、建物の滅失によっては消滅しませんから、滅失後再築することはできるはずです。そして、建物滅失の場合には借地権は消滅するという特約は、借地法の規定に反する、借地人に不利なことを決めるものなので、なかったものとみなされます。ようするに借地人は、その土地の上に再び建物を建てることができるわけです。

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土地

このように、借地人としては残存期間中は土地を使用する権利があるのですから、残存期間の間だけ存続するような建物を建てるのなら、そのことに対しては地主は何の異議も唱えることができません。
しかし、借地人が建てる建物が残存期間を超えて存続するようなものであるときは、地主としてそのような建築に対して異議を述べておくことには重要な意義があります。第一に、借地権の更新を阻止するという効果を生じます。つまり、借地権が消滅する前に建物が滅失した場合、そのあとに残存期間をこえて存続するような建物を建てるのに対して地主が遅滞なく異議を述べないと、借地権は前の建物が滅失した時から、再築される建物が堅固な建物なら三〇年、堅固でない建物なら二〇年の期間のものとして更新されたこととなるからです。ただし、元来の借地期間の残存部分がこの期間よりも長いときはこのような更新は生ぜず、借地権はその残存期間の満了によっていちおう消滅することになります。
なお、このような借地権の更新を阻むための地主の異議が遅滞なきものであるかどうかについては、借地権消滅後の土地使用の継続に対する異議の場合よりもゆるやかに解され、地主が再築のあったことを知らずにいたため異議がおくれたという事情がかなり大きく考慮され、そのような事情があっておくれたが、知ったのちにすぐに異議を述べた、ということであれば遅滞はなかったものとされます。このように、借地権消滅後の土地使用の継続の場合よりもゆるく解される理由は、地主は旧建物の滅失、再築という事実を短時間のうちには知りえない場合が多く、特に取壊しや大改修の場合はそうであり、さらに再築の事実を知ったとしても新建物の耐用年数が残存借地期間をこえるものかどうかも容易にはわからないからです。
再築に際して地主が異議を述べておくことの意義の第二は、期間が満了して明渡請求をする場合の正当事由の有無の判断において、異議がのべられていたということが一つの要因として考慮されることがあるからです。また、買収請求権の行使についても意義をもつことがあります。
また、借地権が堅固でない建物の所有を目的とするものであるのに、滅失後新築される建物が堅固な建物であるという場合には、地主は借地人に対して、定められた土地の用法に違反した責任を追及することもできます。このような用方違反の責任も追及せず、また再築に対する昇級も述べないでおくと、更新される借地権は堅固な建物の所有を目的とするものとして扱われ、その存続期間は三〇年のものとなります。
ようするに、本問の場合、元来の残存借地期間が短い甲地については、地主が再築に対して昇級を述べないと家が焼けたときから起算して堅固の建物なら三〇年、堅固でない建物なら二〇年の期間のものとして借地権が更新されるから、異議を述べることに大きな意味があります。また、その異議は期間満了のときに問題になる正当事由や建物買取請求についてもある程度の意味をもちます。また、再築される建物が堅固な建物なら借地権はもともと堅固でない建物の所有を目的とするものなのですから、借地人に対して用方違反の責任を追及することもできましょう。
これに対して、乙地の場合、再築される建物が堅固でない建物ならば、元来の残存借地期間の方が二〇年よりも長いので更新は生ぜず、したがって異議を述べる必要はありません。しかし、再築される建物が堅固な建物ですと、法定期間の三〇年の方が残存期間より長いため借地権の更新が生ずることになります。したがって、更新を阻むために異議を述べておくことが意味をもちます。用方違反の責任を追及しうることももちろんです。

土地
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