建物の朽廃と大修繕

祖父が土地を借り、それ以来五十七年間、建物を建てて往んでいます。今では建物の土台がすっかりいたんでしまって、危険な状態ですので、大規模な修繕をしたいと思いますが、地主に文句をいわれる心配はないでしょうか。また、修繕をしたとしたら、借地期間はいつまで続くことになるでしようか。
借地権を設定したときに合意で決めた存続期間が五七年よりも長い期間であったとか、合意で決めなかったが堅固の建物の所有を目的とする借地権であったとすれば、はじめの借地権が現在まで存続しているわけですが、それ以外の場合には、設定から現在に至るまでの間に借地権の更新があったことになります。本問の場合には更新があった可能性が大きいので、ここで更新された借地権の存続期間はどうなるかという問題をまとめて述べておくことにします。
存続期間が満了するとき借地人が一方的に借地権の更新を求めたり期間満了後借地人が土地使用を継続するのを地主が遅滞なく異議を述べずに放任しておいたりして、借地権が更新する場合、新しい借地権は以前のものと同一の条件のものとされますが存続期間だけは違って、更新以前の借地権の存続期間が何年であっても、新しい借地権は、堅固な建物の所有を目的とするものは三〇年、堅固でない建物の所有を目的とするものは二〇年となります。これに対して、地主と借地人とが合意によって借地権を更新する場合には、いろいろの契約条件と同様に存続期間についても一応自由に新たな取決めができるわけですが、この場合にも有効な合意たりうる最低限が法律で決められています。それは、堅固な建物の所有を目的とする借地権については三〇年、堅固でない建物の所有を目的とする借地権については二〇年です。なお、更新された借地権の場合も、その存続期間がこに述べたように、合意によってではなく、法律の定めによって決まった場合には、その期間中でも建物が朽廃すると借地権は消滅します。

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借地権の更新があったにせよなかったにせよ、借地権が現に存在しているのであれば借地人は建物を修繕することができます。ところで、本問のような場合、まず問題になるのは、建物の老朽度です。存続期間が法律の定めによって決まった借地権は建物の朽廃によって消滅し、その後に修繕しようとしても地主としては借地権がすでに存在していないことを理由にして異議を述べることができるからです。もっとも、建物が朽廃したかどうかは建物が全体としてその効用を失ったかどうかによって決められるのであって、建物の土台が朽ちたというだけではまだ朽廃したとはいえません。次に問題になるのは、行なおうとする修繕の程度です。修繕によって建物の朽廃時期が先にのばされ、それが地主の利益に影響しますが、のほかにも次のような問題があります。すなわち、存続期間が 満了するときに建物が現存する場合に地主が借地権の更新を阻もうとするときは正当の事由がなければならないので、地主としては期間満了時に建物がなければそもそも正当の事由の有無と関係なしに更新を阻みうるのでこのうえなく好都合ですし、かりに存在していても修繕の行き届いた建物でない方がよいかもしれません。というのは、正当の事由の有無の判断にとって借地人の土地建物の利用状況やその必要性も一つの資料になり、その際には現存する建物がどのようなものであるかも考慮されうるからです。また、かりに正当の事由があって借地権の更新を阻むことができても、借地人からその土地の上の建物を買い取ってくれといわれたら、地主は時価でこれを買い取らなければならないので借地人がどんな修繕をするかによって地主の出費が増えることもあります。さらに最近では、建物の大改修ともいえるほどの修繕は、建物の取壊し、新築と同様に考えて、地主がこれに対して遅滞なく異議を述べないと、借地権は、取壊しのときから、堅固の建物の所有を目的とする借地権は三〇年、堅固でない建物の場合は二〇年のものとして更新されることになるとする説が有力です。この点でも、地主としては借地人の行なう修繕がどの程度のものであるかについて利害関係をもっているわけです。
ところで、あなた借地人が行なおうとする修繕が建物の利用上通常必要と思われる程度のものなら問題はないのですが、かなり大規模な修繕のようなので地主としてはなんらかの異議をとなえるかもしれません。その異議は、ここに述べた点に関連して、次のような法律上の効果をもたらします。
すなわち、将来期間満了の時の地主の更新阻止、明渡請求の際の正当事由の判断資料となる可能性があります。例えば、存続期間もわずかしか残っていないのにさして必要もない大修繕を地主の異議にもかかわらず行なったという場合には、将来正当の事由が問題になった時、建物利用の必要上土地を明け渡せないという借地人側の主張を弱める一つの要因になるでしょう。また、このような場合、借地人のやり方に著しく信義に反するものがあったと認められる場合には、土地を明け渡すときの借地人の買取請求そのものが否定されることにもなりかねません。また、大改修の場合にも、借地法七条が適用されうるとすると、地主の異議にはそのような借地権の更新を阻む効果もあることになります。
修繕をしたら借地期間はどうなるか、という点については、取壊し、新築といえるほどの大修繕でないかぎり借地期間は変わりません。

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