建物の滅失と借地権

借地権は、その存続期間中に借地上の建物が滅失しても消滅しません。火事で焼けたり、台風で壊されたり、家を建て直すために取り壊したりしても借地権はなくならないのです。このことは、借地権が一定期間他人の土地を使用する権利だと考えれば、むしろ当然のことです。しかし、このことには例外があって、借地権の存続期間が当事者の合意によってでなく法律の定めによって決まったものである場合には、借地上の建物が朽廃すると借地権は存続期間中でも消滅することになっています。
なお、借地権の設定後に地主が所有権を第三者に譲渡した場合でも、借地人が借地上の建物を登記しておけば借地権を新しい地主に対して対抗できるのですが その後建物が滅失したり朽廃すると、その対抗力はどうなるかということが、従来、しばしば問題となっていました。
というのは、昭和四一年七月に法律が改正される前には、建物保護法一条二項が、「建物が地上権又は土地の賃貸借の期間満了前に滅失又は朽廃したるときは地上権者又は土地の賃借人は其の後の期間を以て第 三者に対抗することを得ず」と定めており、このような新地主も、この条文中の第三者に含まれると考える余地があったからです。ところが、昭和四一年七月の改正で建物保護法一条二項を削除しましたので、今では、登記した建物がなくなっても借地権はこのような新地主に対抗できるものとなりました。つまり、この点でも借地権は借地上の建物の滅失によって影響を受けないことがはっきりしたわけです。

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借地法は様々な点で借地人の利益をとくに保護する規定をおいているのですが、当事者がこれらの規定の内容と異なったことを合意で決めてそれが有効だとすると、せっかくの借地法の規定がその目的を達成できないことになります。というのは、通常借地権設定のときには地主の方が優位にたっているので、当事者間で自由に決めうるとすると、実際には地主の意向どおりのことが取り決められるであろうからです。そこで借地法は、一定の条項を強行規定とし、このような規定に反する契約条件であって借地人に不利なものは、たとえ当事者の合意で定めても法律上は定めなかったものとみなすことにしています。
そして、借地法は、借地権が期間中に消滅する場合としては、期間が法律の定めによって決まった借地権において建物が朽廃した場合だけをあげているのですから、建物が滅失した場合にも借地権が消滅する旨の特約は、借地法の規定するところ以上に借他人に不利なことを定めることになります。したがって、このような特約は無効であり、なかったものとみなされます。これに対して、借地権が建物の朽廃によっても消滅しないという特約は、借地人に不利な条件を課するものではないから有効です。
存続期間を合意で決めた借地権は、その期間中に建物が朽廃しても消滅しませんが、存続期間が法律で決められた借地権は、その期間中でも建物が朽廃すると消滅します。朽廃とは、建物が自然の推移により腐朽廃しその効力を失うことで、建物が老朽して使用不能になった場合がこれにあたります。このような建物の朽廃によって借地権が消滅する場合を存続期間が法律の定めにより決まった借地権に限ったのは、法律で一律に存続期間を定めることにした理由が、前述のように建物の効用をなるべく全うさせ、建物が使える間は、土地を使うという借地人の期待に沿うようにしようという見地から、借地の場合に特に長い期間を保障するということであったのに、建物が朽廃によってなくなったのなら建物の効用は全うされたのだから、もはや特別に借地人の利益を考慮しなくてもよい、との考えにもとづくものです。これに対して、合意で期間を定めた場合には、地主としては一定の期間土地の使用権を借地人に与えるという意思をはっきりもっているのだから、法律はその意思に従った効果をそのまま認めればよいというわけです。建物が朽廃しているかどうかは、建物を具体的かつ全体的に観察し、社会通念に照らして判断されます。建物のある部分が腐触していても全体的にみてその建物がなお本来の効用を持続しているという場合には、まだその建物が朽廃したとはいえません。また、借地上に数棟の建物があってそれらの間に主従の序列があるときは主たる建物について借地権の消滅をもたらすような朽廃があったかどうかをみなければなりません。
なお、建物の朽廃時期は、建物に事前に修繕を施すことによっておくらせることができるわけですが、それが建物の利用に必要な通常程度の修繕であれば、それによって建物の寿命がのびることになっても、借地権は建物の寿命が実際につきるまで消滅しません。これに対して、建物の寿命を著しくのばすような大修繕が加えられたときは、やや事情が違います。このような場合には、やがて借地権が消滅するだろうとの地主の期待が裏切られることになるから、そのような期待を保護するために、借地権は、そのような大修繕がなかったならば朽廃したであろう時期に消滅したものとする、とした判例もあります。しかし、現在では、むしろ、いかに大規模な修繕がなされても、それによって建物の寿命がのびたら、朽廃すべかりし時期というようなことは考慮せず、現実に建物が効用を持続する問は朽廃を理由とする借地権の消滅という事態はおこらない、とする考え方が有力です。

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