区分地上権と借地人

繁華街で土地を賃借し、商店を経営していますが、このあたり一帯に地下街を作る話がもちあがり、地主はこの計画に大乗気ですが、私は工事のために営業が妨げられたり建物が損傷したりしないか、と心配です。どうしても地下街を作るなら、会社から相当な権利金をとりたいと思いますがどうなのでしょうか。
土地の地下に地下街を作るとしたら、考えられるのは、地下街会社がいまの地主からこの土地を譲り受けて自己所有地の地下に地下街を作ろうとする場合と、地主がこの地下街会社のために地下利用についての区分地上権を設定し、地下街会社がこの区分地上権にもとづいて地下街を作ろうとする場合の二つでししよう。主として問題になるのは、後者の場合でしょうが、順序として前者の場合を簡単に検討することからはじめましょう。
この場合には、借地人が対抗要件を備えていれば、つまり借地権の登記をしているか、または借地上の店舗建物の登記をしてあれば、借地権は第三者に対抗する力をもち、したがって、新地主つまり地下街会社に対しても、あなたは自分の借地権を主張することができます。さて、借地権は、多分賃借権ででしょうが、たとえ賃借権でも、特にその賃借権が地表部分だけの利用を目的とするもので地下の利用はしないという特別の約束でもあれば別ですが、そうでないかぎり、土地全体つまり地下も空中も含めて利用する権限を含んでいます。たとえ現在は地表部分だけしか利用していなくても、将来、例えば地下室のある建物を建てるという権利を借地人はもっているわけです。そして、借地人であるあなたは、この権利を新地主つまり地下街会社に対しても主張できるのですから、地下街会社が地下街を作ろうとすれば借地人は自分の賃借権を主張して、この工事の差し止めを要求できるわけです。
なお、やや余談になりますが、前段では、借地人が対抗要件を備えているときにだけ、彼はその借地権を新地主に対して主張できると申しました。一般論としてはまさにそうですが、本問のケースでは、もしかすると、仮にあなたは対抗要件がなくても、地下街会社に借地権を対抗できるということになるかもしれません。というのは、現在の地主は新地主つまり地下街会社の大株主で地下街建設促進に活躍しているようですから、旧地主と新地主との間には同一性があるからとか、新地主は甚しい悪意の譲受人だからとかいう理論で、借地人は対抗要件がなくても新地主に対抗できると裁判で判断される余地も、かなりありそうだからです。もっとも、この点は具体的事情いかんでどう判断されるか前もっては明らかでありませんから、借地人としては、建物の登記がしてなかったら、いそいでそれをすることが必要です。

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土地

地主が地下街会社のために区分地上権を設定する方法によろうとするときも、借地人であるあなたの承諾がないと、区分地上権の設定はできませんから、借地人の意向を無視して地下街が作られるという心配はありえないことになります。
もっとも、正確にいうと、借地人の承諾がなくても、地主と区分地上権者との間では、区分地上権は有効に成立するわけですが、別の借地権がすでに登記されていると、借地権者の承諾書がないかぎり、区分地上権設定登記の申請を登記所が受け付けてくれませんから区分地上権は、結局、第三者につまり借地人に対して対抗力をもちえないということになります。これに反して、借地権の登記がされていない場合には、区分地上権設定の登記がなされ、区分地上権は対抗力をもつことになるのですが、その前にすでに借地権者が借地上に登記のある建物を所有することによって借地権が対抗力を有しているならば、借地権の対抗力の方が優先して、やはり借地人が勝つことになります。ただ、借地権者が借地上に登記ある建物も所有していない、という場合にだけは、建前論としては、登記された区分所有権が借地権に勝つことになるはずです。しかし、この場合にも、具体的な本問のケースについては、区分地上権者である地下街会社の置かれた特殊な事情から、対抗要件がないにもかかわらず借地権者であるあなたが裁判で勝つことになる余地があることは、前に述べたのと同じです。しかし、そこでも述べたとおり、借地人としては、所有の店舗の登記をしておくことがまず肝心で、そうすれば、自分の権利は安全ということになります。
しかし、近時、部市中心部の再開発、土地の立体的利用の促進ということが大いに叫ばれており、本問の場合の地下街建設も、そのような社会公共の見地から本当に適正な企画であるかもしれませんし、さらには、借地人自身も大局的にはそれによって利益をうけるような企画であるかもしれません。以下ではそうだと仮定して考えることにしましょう。しかし、だからといって借地人が自分に損害が及ぶのを我慢してまで、この企画に従う必要はもちろんありませんけれども、損害がほとんどなかったり、あってもこれをカバーするに足る補償を地主ないし地下街会社が提示しているのに、これに応じないとすれば、借地人の態度は社会的にみて適正とはいえないでしょう。法律的にも、地主や地下街会社を困らせるだけの目的で、ないしは補償を不当につり上げる目的で、借地権者が区分地上権設定の承認を渋るということは、場合によっては、裁判所の判断で承諾権の濫用とされ、承諾がなくてもあったと同じように取り扱われて、借地権が地下街会社の区分地上権に負けることになる場合も、考えられないではありません。そこまでいかなくても、この借地人の社会的にみて不当な態度が、その後の借地権の存続期間満了、更新拒絶が問題になったときの正当の事由の判断の際に顧慮されて、借地権消滅の方向へ裁判所の判断をもっていく結果になるおそれは十分にあるといってよいでしょう。ですから、十分に損得を考慮したうえで、地主ないし地下街会社の申入条件が合理的であると判断したならば、区分地上権の設定に承諾を与えることが、借地権者の取るべき道でありましょう。
この場合の申入条件の合理性とは、第一に、地下街建設の工事中および工事完成後の借地人の地表利用の権利との調節の問題であり、第二に、経済的条件が問題となり、区分地上権問題を承諾すること、つまり告他人が将来の地下の利用を断念することの代償として、地代の適当な値下げや借地人への適当な額の補償金の供与がなされるかの問題です。この二つの点が満足のいくものなら、借地人に不利はないのだし、街の発展にもなることですから、承諾した方がよいように思われます。

土地
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