借地権消滅後でも借地人が立ち退かない

借地人が地代を払わないため、契約を解除しましたが、それから二年近くたっているのに、いっこうに出て行きません。不動産窃盗で罰してもらうわけにはいかないでしょうか。
不動産窃盗が成り立つためには、不法領得の意思と侵奪行為のあることが必要ですが、侵奪というのは積極的な行為を意味します。例外的には、例えば、一時使用を許された土地に無断で永久的な建物を建てる場合のように、土地を占有、利用しているという点では前後同一であるが、ある時期から占有の性質が変わって侵奪性が明らかになったときは、積極的に実際上権利者の占有を排除したようにはみえなくても、不動産窃盗が成立することもありますが、借地期間が経過したり、借地契約が解除されることによって借地権を失った借地人が、地主の立退要求に応じないで、土地を従前のまま占有、使用し明渡しを拒んでも、新たに地主の占有を排除する行為がないから、不動産窃盗罪にはならない、とされています。本問は、まさにこの場合にあたるわけですから、借地人を告訴することはできません。

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借地権を特っていたAが契約解除の通知をうけても、そんな解除は効力を生じないと思う場合が一般でしょうし、裁判になって解除は有効であると確認され、土地を引き渡せという判決が確定した場合でも、引渡しをしぶるのが人情というものでしょう。そんな場合には、あくまで強制執行や損害賠償という方法で、あなたは自分の権利の実現をはかるべきでして、引き渡す義務があるのに実行しないのは窃盗ないし横領だなどといえば、金を借りた者が期 日に返済できないときにも、やれ詐欺だ、横領だ、窃盗だと告訴できることにもなりましょう。広い意味の取引を介して財の移動が生じた以上、その取引行為上の義務を守らない者に対しては、あくまでその義務自体を果たすよう強制し、それが不可能なときは金銭で評価して権利者の損失を埋め合わせるのが本筋で、刑罰をもっておどかして履行させる、というのは好ましくない、とみるのが現在の考え方です。本問について考えても、借地人は、十分に資力があれば他所へ移るでしょうし、決して、あなたの土地を種に不当な利益をむさぼろうなどとは思っていないでしょう。つまり、借地人が義務を守らないのは、反道徳的な心情というより経済的な事情によるところが多いのですから、そんな借地人を罪にとわれるのは行きすぎだということは、おわかりいただけることと思います。不動産窃盗が規定されたのは、きわめて悪質な不法占有者を排除するためであって、本問の借地人のような立場にある者は、はじめからその眼中になかったのです。
権利者が自分の力で権利の実現をはかる、いわゆる自力救済は今日ではごく例外を除いて、法律上禁止されています。その理由は簡単で、これを認めると、ややもすれば力の強い者が権利を持つと称して、善良な者の権利を侵害する危険を招き、弱肉強食の世の中になりかねないからです。ですから、所有者が無権判者に占有を奪われた場合に、所有者がこの占有を奪い返すときでさえも、無権利者がすでにいったんえている占有を一応尊重するのが社会観念からみて適当である、と考えられています。したがって、所有者が実力による奪回をすると、遂に、不動産侵奪になるわけです。もし実力をもって借地人を土地から追い出すようなことをされますと、かえって自分が罪に問われるないような結果になるかもしれません。
年末年始で官庁の休暇が続くのを幸いに、他人の土地に短時間でバラックを建てた者(無権利者)に対抗して、権利者が実力でこれを取り壊したため、権利者が建造物損壊罪に問われたさい、権判者の行為は正当防衛だから無罪、とした判決があります。しかし、これは刑法二三五条の二が設けられる以前の判決であって、この条文が自力救済の前提になった不法占拠そのものを無くするため設けられたことを考えますと、この判決がそのまま現在でも維持されるのか、きわめて疑問であるとみなければなりません。つまり、自力救済よりも告訴でいけ、という考えが前提になって、この条文ができたからです。
要するに、本問ではAを罰するとか自力救済でいくなどと考えにならずに、あくまで、土地の引渡しを求めて民事訴訟で勝負をつけられるべきだ、と確信いたします。

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