権利のない土地の利用

店舗を建てるために借地を探していたところ、適当な土地がありましたので、この地域の知り合いに頼んだところ、大丈夫だということなので、急いでいた関係もあり、建築工事に着工してしまいました。ところが、先日、地主から不動産窃盗ということで告訴されました。この場合はどうすればよいのでしょうか。
昭和三五年に設けられた刑法二三五条の二は、戦後の目にあまる他人の土地の不法占拠を抑圧するために、「他人の不動産を使奪したる者は10年以下の懲役に処す」と規定して、いわゆる不動産窃盗罪を犯罪の一類型としました。ところで、この罪が成立するためには、「権判者を排して他人の物を自己の所有物の如くにその経済的用法に従い使用または処分する」という、いわゆる不法領得の意思と、権判者の占有を排除して自己の占有を確立するという、積極的な現実の行為を必要とします。
やや具体的にいえば、戦争その他の災害を機として、応急的に他人の土地にバラックを建てたり、道路、公園その他監視の手薄な地域にバラックを建てて住みついたり、駅前広場や繁華街の罹災地などを不法占拠し店舗を追って商売を行なうような場合には、一応不動産窃盗罪が成立するとみてよいでしょう。しかし厳密にいえば、このような場合に、土地の占有者、使用者がことごとく不動産窃盗犯だ、ということにはなりません。もっといろいろ細かい事情を考慮に入れなければならないわけで、そのためには、先に述べた主観的要件と客観的要件を、もう少し詳しく検討する必要があります。

スポンサーリンク
土地

窃盗犯人が自分は権利者の権利を持っているのだと意識していなくても、その権利を侵害するようなかたちで、不動産を使用または処分する意思をもっていれば、不法利得の意思があることになります。しかし、権限のない者が使用の目的で土地に侵入しこれを占拠した場合でも、その目的が一時使用であれば、窃盗罪にはならず、また、建造物を築造しても、それが一時的な天幕、小屋がけなどのときにも、窃盗罪は成立しないことになっています。この不法領得の意思がないとみられるからです。ですから、本問では、知人が仲に立って大丈夫だと言ったことを信じて、つまり、借地権がいずれはえられるであろうと確信して、工事に着工されたからには、不法領得の意思があったとはいえません。判例にも、将来買い取るつもりのある隣地に、少額の費用で短時間に取り壊すことのできる排水路を造った場合に、無罪としたものがありますが、本問では、本建築工事がなされていたとしても、あなたの意思を不法領得意思とみることは不可能でしょう。ただ、地主の申入があった以後は、工事を続行されてはいけないと思います。続行されますと、不法に領得する意思があるとみられる余地がでてくるでしょうから。占有侵奪の方法はひそかなものであろうと、大っぴらであろうとを問いませんし、また、被害者が実際に侵奪のあったことを、知っていることも必要ではありません。どういう場合に侵奪があったといえるかは、ひとことでは申せません。侵育の方法やしかた、占有しようとする侵奪者の意思の強弱、占有期間の長短、その外観などすべての事情を考慮して決めるよりほかありません。例えば土地使用権限のない者が勝手に土地に侵入して住宅、店舗を建てる場合や、境界線をこえて隣地を侵略し土地を取り込む場合などは、明らかに侵奪といえるでしょう。判例は、強制執行をうけて一旦明け渡した他人の家屋を、ふたたび権限なしに占拠し、居住を開始する場合には、家屋に対する侵奪がある、としていますし、他人の土地を自分の土地だとだまして第三者に貸し付け、その事情を知らない第三者が土地の上に家を建てたような場合にも、不動産窃盗罪を成立させるとも説いています。本問の建築工事はそれ自体としてみれば、侵奪にあたるようにも思われますが、先にも申しあげたとおり、そもそも不法領得の意思がないのですから、不法領得の意思を外部に表現した奪取行為すなわち侵奪があっべとみることはできません。ですから、地主が告訴したとしても、本問では、あなたが不動産窃盗犯として罪を問われるという結果には、絶対なりません。いままで問題にしてきた侵奪は、事実上の占有の侵奪を意味しますから、地面師などが登記申請書類を偽造して、他人の土地について自己または第三者名義で所有権移転登記をしたような場合には、文書偽造罪は成立しますが、不動産窃盗罪にはなりません。しかし、事実上の占有といっても、実際に権判者が目的物を物理的にもっている場合だけでなく、所持自体も観念化されていますから、権判者の観念化された所持も含まれます。したがって、権限のない者が空地や空家へ無断で侵入し、これを占拠するときは、たとえ権利者がその事実を知らなくても、権判者の占有を侵奪したことになり、不動産窃盗の罪に問われます。
また、先にも例としてあげた、隣地の境界をこえて土地を取り込むような場合には、同時に、境界標ないしこれに準ずるもの、例えば土地の境界を定めるための工作物、立木などを破談したり、移動させたり、または、境界を流れる川の水流を変えるとか、境界にある溝を埋めたり境界の畦を切り崩したりするのが普通でしょうが、もしそのようなことをすれば、刑法二六二条の二条の適用をも受け、不動産窃盗罪のほかに、境界毀損罪が成立します。

土地
借地上建物の処分/ 建物のない借地権の処分/ 急を要する借地権譲渡/ 借地権を近親者に譲渡する可否/ 借地権譲受人の地代支払能力/ 借地権の無断譲渡/ 譲渡担保と借地権譲渡/ 権利金と借地権処分の自由/ 残存借地期間の短い場合/ 借地条件の変更/ 建築請負人と借地権譲渡/ 借地の一部転貸と土地明渡請求/ 転借権の譲渡/ 転貸による借地人中間利得/ 転貸の承諾/ 転貸借の終了/ 賃借人の地代滞納と転借人/ 原賃貸借契約更新拒絶の正当事由/ 原賃貸借の期間満了と転借権/ 借地権の相続/ 借地人の内縁の妻と借地権/ 借地権の相続と遺産分割/ 地主の死亡と共同相続/ 借地関係継続中の権利義務/ 土地利用権の態様/ 借地上建物の賃貸と敷地/ 借地上建物の用法/ 借地上建物の種類の特約/ 借地建物条件の変更/ 借地上建物の無断改築/ 増改築禁止特約と増改築/ 土地用法の制限の効力/ 借地人の隣地通行/ 借地の不法占拠/ 借地権の取得時効/ 権利のない土地の利用/ 借地権消滅後でも借地人が立ち退かない/ 駐車場の利用権/ 屋上の賃借と借地法/ 区分地上権と借地人/ 借地の期間/ 建物の堅固、被堅固/ 短すぎる約定借地期間/ 建物の滅失と借地権/ 建物の朽廃と大修繕/ 建物の滅失と再築/ 借地契約の更新と保証人/ 地主が使うまで貸すという契約/ 賃借権での調停による明渡期間/ 短期賃貸借の更新/

       copyrght(c).土地の買い方ガイド.all rights reserved

スポンサーリンク

プライバシーポリシー