借地人の隣地通行

Aの所有地の一部を賃借して家を建てました。契約のとき、市道から借地までAの所有地上を自動車を通させるという約束でした。ところが、最近その通路の片側の土地をBが借り、塀を立ててしまいましたので、通路の幅は三メートル足らずになってしまいました。Bに交渉しましたが、Bは自分がそこまで借りたのだからという返事で、Aに交渉しても一向煮えきりません。なお、通路の反対側は以前からAの居宅があり、立派なコンクリートの塀があります。どうしたらよいでしょうか。
Aの所有地を借りた際、市道から借地までのAの所有地を自動車を通させるという取決めをされたということですが、この約束を通行地役権の設定契約ないしその部分の土地の賃貸借契約とみることは無理だとしても、地代、権利金の額などは自動車を通させることを勘定にいれて定められているとみるのが通常でしょう。
ところで、民法二一〇条から二一三条までには、袋地所有者の地通行権に関する規定が置かれ、これらの規定は袋地の借地人にも適用されることになっています。借地部分は、誰か他人の所有または利用している土地を通らなければ公路(市道)に出られない位置にあるのですから、本来袋地であったといえます。ですから、当然、この特約がなくても、借地利用に必要最小限の範囲で、A所有地を通行する権利をもつということになります。本問では、Bが既存通路の一方側の土地を借り塀を立て、通路の幅を三メートル足らずにしたわけですが、それでも通路は残っているのですから、自動車が通れなくても、袋地とはいえない、というふうにも考えられます。
しかし、すでに古い判例において、「民法が袋地の所有者に囲繞池を通行する権利を認めたる所以は、一般公益上土地の利用を全たからしめんが為めにして、仮令公道に通ずる経路ありと誰も自然の産出物を搬出すること不能なる限度に於て囲繞地を通行することを得るものと謂はざるべからず。若し然らずとせば其の土地の利用は不能に帰するものと謂ふを妨げざればなり」と説かれていますように、袋地であるか否かは、その土地の利用状況と通路の状態をにらみあわせて決められるべきものなのです。本問では、Aとの間で、自動車を通させることを約束しているのですから、借地の利用のためには、自動車を家の前まで通さなければならない必要がある、といえましょう。Aと特に約束したことの意味は、このように理解されると考えます。そして、この通行権は、袋地自体に付着する権利とみられますから、当然に囲繞地の承継人つまり本問のBにも主張できるわけです。ところが、通行権の内容は、とくにあなたが通路を開設していないかぎり、Bにはわからないかもしれませんし、また、その後の事情の変化によって、自動車の通行をあなたが必要としない事態になっている場合も考えられます。したがって、あなたが、あくまで最初のAとの約束を楯にとることができるかは、一概には言えません。

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土地

袋地所有者から囲繞地譲受人に対して通行権確認訴訟が起こされたケースにつき、「本件土地は幅員約四米の道路の形状をなしている土地であるから、単身歩行して通行するには十分すぎる広さがあるけれども、Xら所有の各土地は、その坪数や附近の環境に照らし、自動車の出入を要す高級住宅の敷地として適当な土地であるから、Xらは幅員四米の本件土地全部を通行する必要があり、他方本件土地は、もともとこのような道路の形状をなした土地であるから通行の場所とする以外に殆んど使用価値がないばかりでなく、その使用は極めて限局されているのであるから、Yはその一部を通行されても全部を通行されてもその損害にさしたる差異はないのであって、従ってXらは本件土地全部につき通行権を有するものと認めるのが相当である」とした判決があります。本問では、通行地の一部の使用がBにとってかなり重要性をもっているとみられますから、この判決と同じようにはいえないでしょうが、Bによほどの必要性がないかぎり、あなたは従来どおりの通行権を主張できると思われます。Bが、あなたの通行権の存在ないし通行していた事実を知っていたときは、なおさら、そうといえましょう。
建築基準法四三条は、建築物の周囲に広い空地があるなど、安全上支障のない場合を除き、建築物の敷地は、原則として、幅員四メートルの道路にニメートル以上接していることを要求していますし、地方公共団体は、条例でこれ以上の制限をつけ加えることができます。したがって袋地に建築する場合、この法規にてらして適法であるためには、少なくとも幅員四メートル以上の通路に、間口二メートル分だけ接していることが必要とされます。
本問では、建築されたときは差し支えなかったのですが、Bの塀設置により通路幅が三メートル足らずになったのですから、結果的にはあなたの建物は違法建築物とみられましょう。ですから、この点からみても、あなたは、基準に適合する幅員の通路を要求できると思います。もちろん、いちおう、建築関係諸法令にもとづく必要性は「通行権そのものの問題ではない」といえますが、通路が狭いため新築ないし改築できないというのでは、土地利用を著しく妨げますから、どのような通路にするかを決定するさい、この事情は大いに考慮されるべきであると考えられます。今まで述べてきたところから、Bの塀を、もとの通路を確保しうる限度まで、引込めることを請求できると思われます。

土地
借地上建物の処分/ 建物のない借地権の処分/ 急を要する借地権譲渡/ 借地権を近親者に譲渡する可否/ 借地権譲受人の地代支払能力/ 借地権の無断譲渡/ 譲渡担保と借地権譲渡/ 権利金と借地権処分の自由/ 残存借地期間の短い場合/ 借地条件の変更/ 建築請負人と借地権譲渡/ 借地の一部転貸と土地明渡請求/ 転借権の譲渡/ 転貸による借地人中間利得/ 転貸の承諾/ 転貸借の終了/ 賃借人の地代滞納と転借人/ 原賃貸借契約更新拒絶の正当事由/ 原賃貸借の期間満了と転借権/ 借地権の相続/ 借地人の内縁の妻と借地権/ 借地権の相続と遺産分割/ 地主の死亡と共同相続/ 借地関係継続中の権利義務/ 土地利用権の態様/ 借地上建物の賃貸と敷地/ 借地上建物の用法/ 借地上建物の種類の特約/ 借地建物条件の変更/ 借地上建物の無断改築/ 増改築禁止特約と増改築/ 土地用法の制限の効力/ 借地人の隣地通行/ 借地の不法占拠/ 借地権の取得時効/ 権利のない土地の利用/ 借地権消滅後でも借地人が立ち退かない/ 駐車場の利用権/ 屋上の賃借と借地法/ 区分地上権と借地人/ 借地の期間/ 建物の堅固、被堅固/ 短すぎる約定借地期間/ 建物の滅失と借地権/ 建物の朽廃と大修繕/ 建物の滅失と再築/ 借地契約の更新と保証人/ 地主が使うまで貸すという契約/ 賃借権での調停による明渡期間/ 短期賃貸借の更新/

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