土地用法の制限の効力

地主の居宅の隣の空地を借りましたが、そのとき二階を建てられると日当たりが悪くなるということだったので、二階建にはしないという契約をしました。しかし、近所はみな二階家ですし、私どもは家族も多いので、いざ建てる段階になると、二階にしたいものだと考えるようになりました。二階家でも建て方によっては、地主の家の日当たりに影響のないようにできると思いますが、それでもダメなのでしょうか。
この特約それ自体は借地法一一条により無効である、とはいえないと思いますが、それに反したとき地主は契約の解除ができるか、ということになりますと、一概にはいえません。一般的にいえば、その特約に合理的な理由があるときとないとき とで違ってきます。仮に地主が二階建は嫌いだから、縁起が悪いから、などという理由で、土地を貸す際にこのような特約をしたとしたら、借地人がこれに反したとしても、解除権は発生しません。つまり、このような特約も有効であり、借地人は契約を守らなければならないのですが、借地人に二階家を建てなければならない必要性があり、そのつくり方が一般的にみて不当でないというような事情があるときは、解除の前提となる信頼関係の破談がない、ということになるのです。判例にも、増改築を一般的に禁止する特約があるときでも、借地人の家族の成長、自然増加、社会事情の変遷にともたって、二階を新設することは、前記特約の発動を合理的ならしめる理由にはならないとか、増改築が周囲の土地を日陰にして利用度を低下させ、もしくは貸主の利害に特に悪影響を及ぼす場合を除いては、貸主は同意を拒みえないとするものがあります。

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本問では二階を建てられると日あたりが悪くなることを理由にしているのですから、特約には合理的理由があるといえます。地主が隣接地にアパートを経営しているのに、1.8メートルの道路を隔てた借地上にある平家建の建物を二階建に増築し、アパートに日があたらないようにした借地人の行為を、その他の事情を参酌して、信義則違反の行為として解除を認めた判例もあります。ただし、この判例の場合には、地主が女性であるのにつけこんで借地人が再三強引な契約違反をくり返している事情も、解除を認めた大きな原因であろうかと思います。しかし、借主のいい分によりますと、地主の家の日あたりに影響のないようにできるのですから、そのような建てかたをすれば、用方違反による解除をされることはありません。ただ、ここにあげた判例は、いずれも増築が問題となっているのに反して、本問では、これから建てる場合ですから、多少考えに入れる要素が違ってきますが、根本的には同じように考えられます。
しかし、二階建にしたいからということで、もう一度地主と交渉することが望ましいとはいえます。これをしないで建てはじめますと、意地になった地主から、賃貸借解除、土地明渡しの訴訟を起こされ、工事禁止の仮処分をかけられるかもしれません。しかし、地主に話をもちかけても、ラチがあかないような事情にあるときは、困るわけです。そこで、本問の場合、借地法八条の二によって、借地条件をかえることとひきかえに、二階建にするにつき地主の承諾にかわる裁判を求めることができないか、を考えてみる必要があります。本問によると、近所はみな二階家ということですが、それなら二階家を建てることが土地の通常の利用上相当とすべき利用方法といえないか、と考えるわけです。八条の二第二項は増改築についての規定ですが、本問の場合、もともと約束された建物の大きさをこえる二階部分は、まさに、増築部分とみられますから、近所が二階家ばかりなら、二階建にしてしかるべきだ、とも思われます。ただその際、地代は、おそらく借地上にどのような大きさ、構造の家屋を建てるか、ということも考慮のうえ決定されている、と思われますから、もしそうなら、地代も値上げされるでしょう。もちろん、地主の家の日当たりが悪くならないように建てるべきことを、裁判所は命ずるでしょうから、これに違反するときは、解除される危険が大きいでしょう。
仮に本問で、どのように建てようとも二階建にするなら、必ず地主の家の日当たりに影響するときは、絶対に二階家を建てることはできないのでしょうか。八条の二が本問の場合にも適用可能としますと、絶対にできないともいえないように思われます。だいたい八条の二は、土地の合理的利用をはかるため置かれた規定なのですから、平家建を二階にする社会的必要があるのなら、多少地主側の日当たりを犠牲にしても、二階家建設を許すべきだ、というふうにも考えられましょう。もちろん、地主の従来享受してきた日照をうける利益は、無視すべきでぱありませんので二階建にすることによって、地主が半永久的にこうむる不利益は、借地人の財産的支出によって埋め合わされる必要はありましょう。八条の二ができる以前なら、このように考える余地はほとんどなかったでしょうが、現在の段階では、二階を建てないことによる社会的不利益と、日照をうけられないことによる不利益との比較において、前者に軍配があがることも考えられます。しかし、このことは、本問の事情のもとでは問題にならず、将来この地域が高層建築街とたってしまった段階で議論されるべきでしょう。

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