借地建物条件の変更

土地を借りて木造建物を建て商売をしていたところ、近年は近所にも立派な建物がふえてきたので、鉄筋コンクリートの建物に建てかえたいと思いますが、どうしたらよいでしょうか。
今までは借地人が木造からコンクリート造りにしようとすれば地主の許可をえなければならず、勝手に変更しますと、地主から用方違反を理由として土地の引渡しを要求されました。昭和四一年の借地法政正によって八条の二が新しく設けられ、一定の事情があるときは、建物の種類、構造を地主の意思いかんにかかわらず、変えることができるようになりました。
つまり、借地契約を結んだのも土地に関する社会経済事情の変動が生じて、社会通念からみて、従来の木造建物をコンクリート造りなど堅固の建物に建てかえること、または増改築をすることが妥当である、と認められるときは、裁判所に申し立て、建物に関する借地条件の変更、または増改築に関する許可の裁判をしてもらうことができるのです。事情変更が認められるのは、次の三つの場合です。
防火地域の指定、防火地域というのは、建築基準法六〇条によって、都市計画区域内で都市計画の施設として指定された地域のことで、その地域内の建物は耐火築造物または簡易耐火築造物でなければなりません。防火地域の指定は、「永久に公共の安寧を維持し又は福利を増進する為」に、「国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もって公共の福祉の増進に資することを目的」としてなされるのですから、指定地域内の木造建築を耐火建築に変えるについて、地主も協力することを拒めたいでしょう。
付近の土地の利用状況の変化、防災建築物の建設を促進するという住宅政策や、土地の合理的利用の度合いを高めるという社会的要請によって、付近の土地一帯に堅固な建物が多く建設され、土地の利用状況が一変し、現在ならば堅固な建物を建てるのが当然と認められるような場合には、従来木造建物を所有していた借地人は堅固な建物に建てかえることができます。本問の場合は、ちょうどこれに該当すると思われます。
事情の変更、以上述べた二つの場合以外に、建物建設および土地利用に関する客観的な事情の変更があり、現在借地契約を結ぶとすれば、堅固の建物を目的とするのが相当と認められる場合があげられます。具体的にどのような場合がこれにあたるかは、ケースごとに判断しなければなりませんが、例えば商業地域で建築物の多くが中高層ビルである場合とか、消防署の命令による場合には事情変更にあたる、といえましょう。しかし、住宅地域に木造建築が多いのに、ある借地人だけが鉄筋コンクリート造りの建物に建てかえるのが相当だと思ったとしても、さきに述べた許可の裁判をしてもらえません。

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上述のような事情があるときは、まず、地主、借地人間の合意で、借地権が非堅固の建物を目的とするものから、堅固の建物を目的とするものへと変更されるのが、望ましいことはいうまでもありまん。借地法八条の二が制定されるまでは、借他人は借地条件の変更料として、平均的にみて借地権の価格の13〜23%くらいを地主に支払って、木造建物から堅固の建物へ変更するのが、都市における慣行であった、と思われます。しかし、当事者の間に合意がととのわないときは、借地人としては、動きがとれなかったわけで、これを打開するために八条の二が設けられたのです。ですから、八条の二は、当事者間の合意を排斥するものではありませんし、また、はじめになんら話合いもせずに、いきなり裁判を申し立てることも、禁止してはいません。借地人としては、まず地主と話し合うか、それとも、いきなり裁判を申し立てるか、どちらでもよいと思うほうを選ばれればよいわけです。ただ、いきなり申し立てられた場合には、裁判所が調停などにまわすことかあります。筋としては、一応の話し合われるほうがよいとは思います。なお、本問とは直接関係はありませんが、以上の裁判の申立は、地主の方からも、できることに留意してください。
建物に関する借地条件変更が裁判によって許されますと、借地権はコンクリート造りなど堅固の建物を目的とするものに転換されることになります。そうしますと、地主は早くいえば損をしたことになりますから、地主、借地人間の利害を調整するために、借地権の転換に付随して、地代の改訂その他の財産上の給付などを、裁判所が命ずることになっています。ここにいう財産上の給付とは、金銭の支払を意味します。地代をいくらに上げるか、どの程度の金銭を支払うかは、だいたい、先ほど申しましたような借地権価格の13ないし25%くらいが基準になると思いさすが、借地権の残りの期間、土地の状況、借地に関するこれまでのいなさつなど、一切の事情を考慮するほかに、裁判所が委嘱した鑑定委員会に諮問して決定されます。その際注意しなければなりませんのは、昭和二五年七月一一日以降に建設された建物およびその敷地については、地代家賃統制令の適用がないということです。
八条の二第三項は、ここに述べた裁判において「其の往相当の処分を為すことを得」と規定しています。地代の改訂、金銭の支払以外の相当の処分とは、具体的にどのようなものなのでしょうか。例えば、借地人の希望によって適当な替地を見つけるとか、借地契約を合意によって解消することにして、相当の移転料を支払うというようなことは、相当の処分にあたる、といえましょう。しかし、かなりの金銭を支払うとしても、借地人の意に反して借地権を消滅させる裁判はできないものと言われます。ことを認めると、あまり資力のない借地人が、事情変更を理由として、一時的な金銭支払をうける代わりに借地権を失うという結果になるからです。ここで、八条の二の裁判は地主からも申し立てることができることを思い出してください。相当の処分のなかに借地権の消滅が入らないことは、立法の過程からもうかがえます。すなわち、よい町づくりのためには借地権消滅の裁判を認めるのが適当であるという意見が述べられたのに対して、政府側が、借地権消滅の裁判をすることは違憲の疑いがないとはいえないだけでなく、行きすぎである、と答えているからです。

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