借地上建物の種類の特約

知人のAから居宅を建てるからというので頼まれて、所有地を200坪ほど貸しました。ところが、Aは、この土地の上にアパートを建て、幾世帯もの人々を入居させて儲けているようです。騙されたようで腹の虫がおさまりません。たんとかならないでしょうか。
借地契約を結ぶ際に借地人が建てる家屋を、店舗か居住用家屋か、あるいは、店舗だとして魚屋か石材商か雑貨屋か映画館か、というように限定して約束したのに、借地人がそれに違反したときは、土地の用方違反を理由とする解除が問題になる場合が多いでしょう。例えば、住宅地の一画を居住用家屋建設地として貸したのに、鉄工所を建てられたりなどしては、地主としてもたまったものではないからです。変わった例としては、住居の用に供する建物の敷地に、借地人が営業用の瓦を保管するための建物および工作物を築造し、再三にわたる撤去の要求にも応じなかった場合には、地主は敷地の保管義務違反を理由として、賃貸借契約を解除できる、とした判決があります。しかし、居宅用として貸したのに、アパートを建てた場合、それを理由として解除できるかどうかは、なかなか微妙な問題です。

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土地

本問ではそれよりもまず、地主が居宅を建てるという条件で貸したのかどうか、が問題となります。契約書に居宅を建てることと明記してあれば、建物の種類を制限する特約があったということになりますが、単に建物所有のため貸すという旨の約束しかされていないときは、交付をうけた権利金や地代が、かなり安いというような客観的事情がなければ、この特約があったとは申せません。居宅を建てるという明示の条件ないし特約もなく、権利金、地代もとにかく世間並みにとっておられれば、商売を営むためではなく、とにかく人が居住する家屋を建てる目的で貸した、ということになり、借地人はアパートを建てるか居宅を建てるかの自由をもつでしょう。もっとも、付近が高級住宅地でアパートを建てるなどとは考えられもしなかったというような事情があれば、暗黙のうちに右の特約がなされた、とみられるかもしれません。
もし、居宅しか建てないという特約があれば、Aの行為は土地の用方違反になることは明らかだと思います。しかし、違反になるからといって解除ができるとは申ません。地主がアパート建設中に、それでは約束に反するからといって、その模様がえなどをしばしば促されていたとすれば、解除できるかもしれませんが、建ってからでは裁判所はなかなか解除を認めてくれないでしょう。最高裁判所は、増改築禁止の特約がある場合でも、借地人が建物の二階部分六坪を拡張して総二階造り一四坪とし、二階居室全部をアパートとして他人に賃貸するよう改造したケースにつき、建物の同一性をそこなわないとして、解除を否定しました。つまり、正当な対価を支払った借地人が、自己の才覚で家屋を他に賃貸してもうけたとしても、地主との間の信頼関係を破談するおそれがない、とみているからです。ただ、このケースでは借地人自身もその家屋に住んでいるようですから、本問でA自身がアパートに住んでいないとすれば、あるいは解除できるかもしれないと思います。つまり、Aが住む土地を求めているのに同情して土地を貸したのに、それにつけこんで実はもうけるのが目的だったというのならば、Aに対して居住の安定を保障する必要はなく、Aは信頼関係を破壊した、といえないことはない、と考えられるからです。
Aとの借地契約を解除できないとした場合、地主は騙されたような、ふんまんのやり場がなく、黙ってAのすることを見ていなければならないものでしょうか。せめて、Aがもうけた一部のわけ前を、地代の値上げというかたちで要求することくらいは、認められてよいと思います。なぜなら、一応土地の価格したがって借地の権利金、地代などが客観的に決まっていることは否定できないにしても、場合によっては、借地人の資力なり土地の用方によって個々的に規定されることも、現状ではかなりありうる、と考えられるからです。本問では地代家賃統制令の適用は問題にならないでしょうから、地代はあなたとAの約定だけで決まっているはずです。そして、その際、居宅を建てるのだから一平方メートルあたり1000円としていたが、アパートを建てるのなら2000円にするはずだった、という主張も言けると思います。つまり、もし将来、Aが他に転居するに際して借地契約を合意解除する場合を考えるとすれば、地上建物にAだけが居住していたのなら土地は更地となりうるに反し、アパートを建てそこに賃借人がいるときは、彼らに退去してもらえない、したがってアパートを壊し更地とすることができない、という結末になるからです。2000円と1000円との差はこういったことをも考慮して出てくるのだと思います。
ただし、近隣のアバート建設用地と同じ地代を決めておられれば、増額のできないことはいうまでもありません。ここでは、ここに述べたような事情を問題にする余地はないものと思われるからです。

土地
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