借地権の相続

私の所有地の借地人が死に、相続人としては未亡人はじめ子供が六、七人いるようで、子供たちは各地に分かれて住んでいます。いままで滞納している地代の請求その他の交渉は、誰を相手にしたらよいのでしょうか。
借地人が死亡したときは、借地上の建物の所有権は相続人のものとなり、それに伴って借地権も相続人に移転しますが、相続人が数人いる場合に借地関係がどうなるか、特に借地関係から生じる債権や債務が誰にどれだけ属するかは、共同相続財産の法的性質にかかおる難しい法律問題で、戦前からの判例や学説によって様々な見解が出されていますが、現在でもまだ結論が固まっていません。ですから、この問題については相続法の解説書などを読んでも、そこに説明されている立場がそのまま通用するかどうか分かりませんから、実際問題の解法にさいしては、なるべく慎重な態度が望まれます。
被相続人の個々の財産は、最終的には遺産分割によって個々の相続人のものになりますが、それまでは、借地上の建物の所有権や借地権を含む被相続人の全財産が、全共同相続人に帰属することになります。各相続人の持分は、一応法定相続分を基本とします。分割前の共同相続財産の法的性格については議論が多く、共有か合有かなどと争われています。具体的には、まず、共同相続人中の一人が特定の相続財産または特定の相続財産上の持分を第三者に譲渡できるか、などが問題とされますが、賃借権としての借地権の場合には、地主の承諾または裁判所の許可がなければ、相続人以外の者に借地権を譲渡することはできません。
次に、地代の請求や催告、地代増減の請求、更新の請求や拒絶、建物の買取請求、借地条件の変更や譲渡、転貸の許可の申立、解除の意思表示などは、原則として相続人の全員に対してまたは相続人の全員からしなければならないとされています。もっとも、相続人中の一人に対するまたは一人からの意思表示でも全員について効力を生じるという意見もあり、とくに、相続人中の一人が借地人としてふるまっていることを他の相続人が黙認しているとみられるような事情がある場合には、この者へのまたはこの者からの意思表示が全員のために効力を生じるとみられる可能性が大きいといえましょう。しかし、はっきりした代理権の授与がない以上、遺産分割前に借地人と交渉しようとする地主としては、なるべく相続人全員を相手にするように心がけた方が安全なことに変わりはありません。

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分割前の共同相続財産を、共有とみるか合有とみるかによって、実際問題として最も影響が生じるのは債権や債務の帰属です。被相続人が滞納していた地代の債務は、いもおう全相続人に帰属することになりますが、これを分割債務とみれば、各相続人は、それぞれ相続分に応じた単独債務を負担し、それぞれの固有財産で責任を負うことになります。また一人について生じた事由は他の者については効力をもたないとされます。このような立場によると、債権者は各相続人に対して請求する必要があり、相続人の中に無資力な者がいると、そのぶんだけとれなくなるおそれもあるので、債権者にとってより有利な合有債務説や不可分債務説も有力に主張されていますが、まだ確定していません。
しかし、借地人の相続人の中に借地関係の継続を希望する者があり、地主がそれを認める場合には、延滞地代は実際にはその者によって支払われることが期待されます。また、地主には、地代について借地上の建物の上の先取特権が認められています。さらに、資力がなく債務の多い相続人が多数いて相続財産からもとれなくなるおそれのあるときは、相続財産が相続人の固有財産と混合しないように財産分離を家庭裁判所に請求することもできます。
遺産分割の協議、調停または審判によって、借地上の建物の所有権や借地権が相続人の中の特定の一人または数人の者に最終的に帰属したときには、借地関係はこの者とのあいだに継続することになりますから、相続開始以後の地代の請求や解除の意思表示はこの者に対して行ないます。
被相続人時代の地代が残っている場合、各共同相続人がこの地代債務をどのように負担すべきかについては、判例や学説は必ずしも一致していません。法定相続分に応じて各相続人に分割されるとするもの、指定相続分や特別受益分も加えた実質的な相続分によって分割されるとする説、不可分債務だとする意見などがあります。しかし、ともかく遺産分割の協議や調停において債務の帰属についての一定の合意がなされれば、共同相続人の内部的な負担関係としては有効ですし、債権者がこれを承認して債務を引き受けた者に対して請求することができるのも明らかです。また、資力の乏しい者や多額の固有債務を負っている者に相続債務が帰属するような遺産分割を行なった場合、債権者としては、他の相続人に対して少なくともそれぞれの相続分に応じた割合で請求することができます。
地主にとってまず大切なのは、交渉の相手を確認し確定することです。それには、まず相続人とその相 続分を確認することが必要です。相続人を確認するためには、被相続人の戸籍謄本を求めて調べるのがよいでしょう。これによって、その未亡人は法律上の妻であったか、子は何人いるか、嫡出子であるかなどを確認し、さらに子の中に死亡したり相続権を失った者がいるときには、その者を代襲して相続すべき者がいないかどうかをたしかめます。
相続人を確認できても、本問のように多数の相続人が各地に分かれて住んでいるような場合に、そのひとりひとりに対して地代の請求、催告、解除や更新拒絶などの意思表示をし、ひとりひとりと交渉をするのはたいへんなことですし、相続人のうちに無資力な者などがいると地代なども全額はとりにくくなります。そこで、地主としては交渉相手をなるべく一人または少数の者にしぼった方が便利なわけです。
そのためには、現に借地上に住んでいる者その他交渉に便利な者を通じて、なるべく早く遺産分割の協議をするように、またそのさいになるべく借地上に住んでいる者に家屋所有権、借地権および借地関係にもとづく従来の債務などをまとめて帰属させるように要求するのがよいでしょう。遺産分割が早急に期待できない場合には、相続人の中の一人、できれば借地上に住んでいる者に、他の相続人から代理権の授与を受けて、借地の問題についてはすべてを代理できるようにしておいてもらえれば都合がよいでしょう。もっとも、遺産の分割も代理権の授与も、地主の側から借地人側に強制することはできませんから、借地人側がこれに同意してそのような方法をとるのでなければ、直接にこれを実現する方法はありません。

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