転貸の承諾

Aからその所有地を借り、建物を建てて営業していましたが、店舗、営業権などをBに譲渡し、敷地はBに転貸することとし、Bの納める転借料のうちから、Aとの契約どおりの地代をAに納めておりました。転貸のことはAにはことわりませんでしたが、建物登記もB名義になっておりますし、同じ町内のことであるため、建物所有権移転の事実は当然間もなくAも知ったはずですが、これまで別に文句もいわず、私から地代を受け取っておりました。ところが、先月、突然、Aから無断転貸を理由に借地契約を解除するという内容証明郵便がきました。どうしたらよいでしょうか。
借地を転貸する場合には、地主の承諾を必要とします。もしもこの承諾がえられないときには無断転貸となり、地主に借地契約の解除権が発生することになります。しかし、この承諾はかならずしも明示であることを要しません。地主がはっきりと承諾したことを表示していなくても、周囲の事情から承諾したと考えられるような場合には、承諾ありとして借地の転貸が有効なものとなります。
それでは、借地を転貸する場合に、いったいどのような事実があったときに承諾ありとされるでしょうか。具体的な実例を二つほどあげてみましよう。その一は、借地上の家屋に関する「家屋建築申請書並家屋所有権保存登記申請書」に申請人として借地人以外の者の氏名が記載されている用紙に、地主が借地人の求めに応じて土地所有者名義の押印をし、これを借地人に交付した事案について、特段の事由なきかぎり地主は借地の転貸を承諾したものと解すべきである、と判示した事例であり、その二は、借地人による借地の転貸承諾の要請に対し、地主が諾否いずれとも受け取れるような「ああそうですか」と返事したのみで不承諾の意思をうかがわせるような言動はなにも見当たらなかったこと、および、後日、借地人、転借人などが地主を訪れたときも、懇談的に家屋質受代金の額をたずねたのみで、転貸についてなんら異議を述べず、転借人が家屋に居住するのを認める態度で対話したこと、などの事実から、地主は転貸につき暗黙の承諾を与えたものと認むべきであると判示した事例です。

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本問のように、建物譲渡の事実を知りながら、従来どおり地代を受け取っている場合はどうでしょうか。本問とぴったりの事例は、借地の転貸に関する判例の中にはちょっと見当たらないようです。しかし、借家に関する判例の中には類似のものがありますので、それをみてみましょう。それは、家屋の転貸借契約にもとづいて昭和二一年四月にその家屋に入った転借人が、たまたまその頃銭湯で家主と会い、その際この事情を述べて家主の承諾を求め、これに対し家主は確答はしなかったが、その後二二年四月末に至るまで、毎月、当時賃借人が他所に疎開中で転借入が家屋に居住している事実を知りながら賃料の支払を受けていたという事案についてのもので、裁判所はこれに対し黙示の承諾ありと判示しています。同様の事例は、ほかにもあります。例えば、X所有の家屋の賃借人AがYに賃借権を譲渡し、Yは、Xから一切の権限を与えられている管理人Bに交渉したがBが病気のため直接Bには会えず、その明示の承諾をえることはできなかったが、BはYの入居の事実を知りながら一ヵ月以上これを放置しておいたという事案につき、下級審は「以上の認定によれば本件家屋に付賃貸その他一切の管理の権限 を有するBがYの賃借権譲受及び本件家屋への転入の事実を知ったのが同年九月中旬のことであるに拘らず、たとえ病気のためにせよ同年一〇月下旬にXからYの居住することに付不服の意向を表明する迄の一カ月半の間Yに対し何等の異議も述べなかったのであり、一方Yは賃借権譲受及び本件家屋への転入の前後に管理人Bの承諾を求めるため十分手をつくしているのであって、世間に往々見られるような家主もしくは管理人に全く無断で賃借権を譲受け家屋に入ったあとで承諾を求めるのとは著しく事情を異にするのであるからこのような諸般の状況を綜合して考慮するときは、結局、家屋管理人BはAよりYに対する賃借権の譲渡に付積極的に承諾を与えたことはないが、此の事実を知りながら之を暗黙の裡に承諾したものと解すべきである」と判示し、最高裁もこれを支持しています。
以上のような判例の傾向からすれば、本問の場合に借地の転貸について地主Aの黙示の承諾があったものと解される可能性が強いといえましょう。したがって、あなたや転借人Bとしては、あくまでもAの黙示の承諾がおり、解除は無効であるという主張を続けるべきだと思われます。ただこの場合に、承諾の存否についての立証責任はあなた方にありますから、Aの承諾があったことを主張するためには、あなた方みずからその旨を立証しなければならず、立証できないときは承諾がなかったものと認定されますので、この点注意が肝要です。

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