転貸による借地人中間利得

駅前の所有地をAに一坪当たり年50万円で賃貸し、Aは食料品店をやっていました。先日、AがB銀行の人と一緒にやってきて、B銀行でぜひそこに支店を開きたいから、転貸を認めてくれという申入がありました。様子では、Aは多額の権利金か少なくとも年一坪当たり10万円ぐらいの地代を取ってただもうけをするつもりらしいので、それくらいなら、土地を取り戻して、私から直接にB銀行に貸したいと思います。そうするにはどうしたらよいのでしょうか。私が転貸を認めないといったらどうなるのでしょうか。
民法の規定によれば、賃貸借契約に期間の定めがない場合には、当事者の一方がいつでも解約の申入をすることができ、解約申入の意思表示が相手方に到達したのも、解約申入期間が経過することによって契約は終了するものとしていますが、借地法は借地人の地位を安定させるために、この民法の規定に大幅な修正を施し、解約の自由を制限しています。つまり堅固な建物所有を目的とする借地権の存続期間を六〇年、その他の非堅固な建物所有を目的とする借地権の存続期間を三〇年、とそれぞれ法定し、その期間内に解約申込をすることができないものとしています。そのうえ、存続期間経週後においても土地所有者が解約できるのは正当な事由ある場合に限られており、正当な事由のない場合には、期間が更新されて契約が継続することとしています。したがって、本問の場合は、たまたまAとの借地契約の存続期間満了時にあたり、しかも、貸主に解約の正当事由があれば格別、それ以外の場合ですと、解約は不可能ですから、Aから土地を取り戻してBに貸すということはできないものといわなければなりません。

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土地

貸主が転貸を拒絶しますと、おそらくAは借地法九条の二の規定により、転貸許可の裁判を申し立てることと思われます。そこで、本問の場合のように、借地人が転借人から多額の権利金か転貸地代をえようとして転貸を望んでいる場合に、裁判所が転貸の許可を与えるかどうかが問題となります。
一般的にみて、建物の敷地につき借地権の譲渡でなしに転貸がなされる場合には、転貸人が賃料の差額を中間利得しようとしている場合が多いようです。このような場合でも、転貸によって土地の荒廃が甚だしくなるのでなければ、別に地主の収益が少なくなるわけではありませんから、経済的には地主は不利益を受けていることにはなりませんが、借地人が中間利得をしているということは、地主の所有者としての感情を著しく傷つけ、転貸を不当なものと感じさせるようです。同様のことは借家の転貸の場合についてもいえますが、とりわけ敷地の転貸の場合は、建物所有権を譲渡しておきながら、借地権だけは留保しておいて、永続的に賃料の差額を利得するものですから、その不純さがいっそう目立つものといえましょう。
このような賃貸人の感じ方は、従来の判例においてもだいたい承認されているようです。借地に関する判例があたりませんので、借家に関する判例をみてみますと、借家人が家主の承諾をえずに次々と数人の者から相当の権利金をとって家屋の一部に居住させ、さらにその後、他の者から保証人名義で3万円を受け取り、光熱費として月々少なくとも1000円の賃料を徴収してその一家数人を同居させ、家屋の全部の使用を許していた場合とか、借家人がさし迫った必要がないのに、一人に七畳を貸し、さらに広告を出して権 利金2万円をとって土間四坪を他の一人に貸した場合とか、あるいは、賃料月8円の借家の一部をさし迫った必要がないのに権利金5000円転資料月1500円をとって友人に転貸した場合など、いずれも解除の原因となると判示しております。
このような判例の傾向から推察すると、本問の場合に、今回新設された転貸許可の裁判制度を利用する際においても、裁判所が転貸の許可を与えないという可能性が強いといえましょう。ただここで注意すべき点は、この裁判制度は許可を与えるか与え ないかの二者択一的な裁判をするばかりでなく、許可を与える場合にも、当事者間の利益の衡平をはかるために、一定の金銭の支払を借地人に命ずるとか、あるいは、地代を値上げするなどの条件を付して、条件付許可を与えるという措置がとれるようにだっていることです。したがって、本問の場合も、転貸不許可の裁判があるとは断言できず、この条件付許可の裁判がなされる可能性もかなりあるように思われます。
借地人が転貸許可の裁判を経由しないでいきなり無断転貸を強行したとき、あるいは、この裁判を申し立てたところ不許可となったにもかかわらず転貸を強行したときに、とりうる手段としては、民法六ー二条により、無断転貸を理由に借地契約を解除し、土地の明渡しを請求するという方法があります。
もちろん、無断転貸があるからといって、直ちに解除できるものではなく、無断転貸が貸主に対する背信行為にあたると考えられる場合にのみ解除権が生ずるものです。しかし、ここに述べたように、従来の判例理論によれば、借地人が転貸によって多額の中間利得をおさめようとしている場合は、背信性ありと認定されているようですし、そのうえ、転貸許可の裁判制度があるにもかかわらずこれを利用しなかったとか、不許可となったにもかかわらず転貸を強行したなどの事情は、ただそれだけで背信行為と認定される可能性が十分にあると考えられます。したがって、このような場合に貸主の勝つチャンスは大いにあるといえます。

土地
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