建築請負人と借地権譲渡

土地を借り、Aに一切を請け負わせて新居の建築をしましたが、金繰りがつかず、請負代金の半額がまだ未払いですので、Aからまだ建物の引渡しをうけることもできず、私名義の登記もしてないままに、一年あまりすぎました。先日、地主からAに建物をもたせておくことは借地権の無断譲渡だから借地契約を解除するという申入がありました。こんな場合の解除は可能なのでしょうか。
請負契約とは、請負人がある仕事を完成することを約し、注文者がその仕事の結果に対して報酬を与えることを約することによって成立する契約をいいます。この請負契約にもとづいて請負人が有形物を完成した場合に、その完成物の所有権は注文者、請負人のいずれに帰属するかという点が問題となりますが、この点について、判例、学説はほぼ一致した見解をとってきています。
(1)注文者が材料の全部またはその主要部分を提供する場合には、その完成物が動産であると不動産であるとを問わず、完成と同時に所有権は原始的に注文者に帰属する。
(2)請負人が材料の全部またはその主要部分を提供する場合には、原則として、完成と同時に請負人が製作物の所有権を取得し、引渡しによって注文者に所有権が移転する。ただし、特約によって、完成した製作物が原始的に注文者に帰属すると定めることができる。
というように二つに分けて考えています。そこで本問の場合も、一応、建築資材の全部または主要部分を提供した場合と、請負人Aが提供した場合とに分けて考えることにしましょう。

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土地

本問がかりに(1)の場合だとしますと、借地人であるあなたは借地上に自分の所有に属する建物をもっていることになりますから、この場合には借地権の譲渡はないものと解されます。したがって、地主が借地権の無断譲渡を理由に借地契約を解除できないのはもちろんです。たとえあなたが建物の引渡しをまだ受けていない場合であっても、また登記がなされていない場合であっても、それは全く関係ありません。
問題なのは、本問が(2)の場合だとしたときです。建物が土地の利用なくしては存立しえないという点を考慮にいれるならば、この場合、建物所有権はAに帰属し、それと同時に借地権もAに帰属する、つまり、あなたからAに借地権が譲渡されたと解さなければならないということになりましょう。しかもこれは無断譲渡ですから、地主の解除権発生原因になると思われます。
しかし、ここで見方を変えてみましょう。判例や通説は(2)の場合に請負人が所有権を取得すると述べていますが、本問のように製作物が建物である場合に、請負人が建物に対して完全な所有権としての権能をもち、かつ、これを自由に行使でぎるのかどうかについてはなにも触れていません。おそらく、所有権が帰属する以上、所有権者としての権利の行使はすべて可能と解しているのではないでしょうか。しかし、これを肯定すれば、都心地などの地理的好条件の下にあるビルとかアパートを建築した請負人がそれを賃貸することにより短期間でも莫大な利益を収めることができることになりますし、またそのために引渡時期の延引をはかるという不合理な結果を招くことにもなりかねません。実際上、請負人もそこまでの権能があるとは意識していないようで、所有権があるといってもそれはせいぜい代金回収を確保するためのいわば心理的効果を期待するものであって、実質的には留置権をもつのとほとんど変わらないものと思われます。そうだとしますと、(2)の場合においても(1)の場合と同様、材料の提供者がだれであるかに関係なく建物は原始的に注文者に帰属すると考えるのが妥当ではないでしょうか。最近こういう見解を唱える学者が少数ながら現れてきております。この見解によれば(2)の場合も借地権の譲渡はないことになりますから、地主は解除することができないことになりましょう。
裁判所が右の二つの見解のうちいずれを採るかは興味のあるところですが、まだ判例がでていませんので、実際に訴訟になってみないとわからない問題だといえましょう。
ただ本問の場合に注意しなければならない点がひとつあります。それは、この(1)(2)の場合にかりに建物の所有権があなたに帰属していて地主の解除を否定できると考えても、それは現在の地主に対する関係においてそういえるというだけで、地主がその土地を第三者に譲渡し、その第三者から明渡請求をされたら明け渡さざるをえないということです。本来、借地権はその登記がなければ第三者に対抗できませんが、建物保護法は、借地人がその土地の上に登記した建物をもっていれば借地権の登記がなくても対抗力を与えるという便法を請じております。
本問の場合、おそらく借地権の登記をしていないでしょうし、建物所有権の登記もしていないのですから、借地権に対抗力はないことになるわけです。ですから、地主の解除を否定しえても、地主が土地を第三者に譲渡すれば結局はなんにもならないことになります。ここは、できるだけ早く請負代金を完済して、自分名義の建物登記をするように努めるべきだと思われます。

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