借地条件の変更

借地権譲渡許可の裁判、正確にいえば、借地権譲渡の際に必要な地主の承諾に代わる許可の裁判は、借地法の改正により新しく設けられた裁判制度です。これまで借地権の無断譲渡をめぐる紛争は、無断譲渡が地主に対する背信行為となるか否かの観点から、地主に解除権が発生して土地の明渡請求を正当なものとして是認するか、あるいは地主に解除権が発生しないとして土地の明渡請求を否定するかの二者択一的な解決を常に迫られていたわけですが、譲渡、または転貸許可の裁判は、このような当事者のいずれか一方に軍配を挙げて勝敗を決するというやりかたではなく、具体的事案に即して当事者の利益の均衡をはかろうとする点にねらいをおいています。したがって、裁判所が借地権の譲渡に許可を与える場合においても、必要と認めたときは、借地条件の変更を命じたり、あるいは財産上の給付を命じるなどの裁判をして、地主側が不当に不利益を受けることのないように配慮しています。
ここでいう借地条件とは、借地契約を締結する際に当事者である地主と借地人との間で取り決めた種々の条件のことをいいます。例えば権利金や敷金を支払うことにするかどうか、支払うとした場合にその額をいくらにするか、借地期間をどの程度にするか、地代の額とその支払の方法をどうするか、債務の履行を確実にするために借地人から担保をとったり、あるいは保証人をたてるなどの取決めをするかどうか、損害賠償額の予定をするかどうか、借地上に一定の規模以上の建物の建築を認めないことにしたり、あるいは増改築の禁止を特約するかどうか、などはすべてここにいう借地条件にあたります。このような借地条件の取決めは、契約自由の原則により、本来、当事者の自由に定めるところですが、公益的見地から最近次第に制約が課せられるにいたっています。例えば借地期間を契約で定める場合には、借地法二条二項の規定により、堅固な建物の所有を目的とするものについては三〇年、その他の建物の所有を目的とするものについては二〇年を最短期とし、これより少ない期間を定めた場合は無効となる、などはその代表的なものといえましょう。

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借地権が譲渡されると、譲渡人たる前借他人が地主に対して有していた借地契約上の地位が、その同一性を変えることなく、そのまま譲受人たる新借地人に移転します。したがって、譲渡人と地主との間で取り決めた借地条件が譲受人と地主との間にもいざることになります。もちろん、借地権の譲渡が有効なものとなるためには、本来、地主の承諾をえなければなりませんから、地主は、承諾を求められた際に借地条件の変更を希望するならば、新しい借地条件を承諾の代償として要求することができますので、この場合はとくに問題はありません。しかし、譲渡許可の裁判では、地主のこのようなチャンスを実質的に奪うこと となりますので、当事者間の利益の衡平をはがるためには、とくに裁判所に借地条件変更の権限を与える必要があります。借地権譲渡許可の裁判に借地条件の変更を伴いうるものとしたのは、おそらくこのような立法者の意図にもとづいたものと考えられます。とはいうものの、これによって地主の希望が全面的に受け容れられるようになったと判断してはいけません。この裁判は裁判所が主宰するものであり、借地条件変更の権限は裁判所にありますから、地主側の勝手な要求はかなりチェックされることになりましょう。借地法九条の二第二項が譲渡許可の裁判をする際には一切の事情を考慮すべきであるとし、また同条六項がこの裁判をする前に鑑定委員会の意見を聴くべきであると規定しているのはまさにこの趣旨です。
それでは、借地権譲渡許可の裁判に伴う借地条件の変更にはいったいどのようなものがあるのでしょうか。
地代の増額、最近の土地ブームを反映して、地価は上昇の一途をたどっています。それに件い地主の負担する公租公課のたぐいも増加しているものと思われます。したがって、借地契約締結時において適当と考えられた地代の額が、その後の経済事情の変動により不適当となり、譲渡許可の裁判の際にはそれが甚だしくなっているため、たとえ譲渡許可を与えても、地代の額をそのままにしておいたのでは地主に酷だと考えられるような場合が生じてきましょう。このような場合に裁判所によって地代の増額が命ぜられることかあります。どの程度増額するかについては、鑑定委員会の意見がかなり大きな比重を占めることになろうかと思われます。
担保の提供または保証人の設定、地主にとって、借地人の地代支払能力の有無が、重大な関心事であることはいうまでもありません。ところが、十分な支払能力のある者に土地を貸したにもかかわらず、その借地権が勝手に支払能力の弱い者に譲渡されたのでは地主はとてもたまりません。そこでこのような場合に、裁判所は譲渡許可を 与える代わりに、将来の地代債務の履行を確保するために担保の提供を命じたり、あるいは保証人の設定を命じたりして、支払能力の増強をはかることもありうるものと思われます。

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