権利金と借地権処分の自由

土地を当時の地価の80%に当たる権利金を払って借地しました。資金が必要になったため、この借地権を他に売りたいと思い、地主に交渉したところ、地主は名義書換は認めないといいだしました。多少の名義書換料は覚悟していますが、まったく譲渡を認めないというのは、高い権利金をとっておきながら、ひどいと思いますが、この場合はどうしたらよいのでしょうか。
借地権の譲渡には地主の承諾が必要です。しかし、この承諾は必ずしも明示であることを要せず、黙示であってもよいと解されています。したがって、地主がはっきりと承諾したことを表示していなくても、周囲の事情から推して、承諾したと考えられるような場合には承諾ありとして借地権の譲渡が有効となります。ところで問題は、多額の権利金を地主が受け取っている場合に、これを借地権譲渡承諾の黙示的意思表示があったものと解することができるか、という点にあります。
実際にあったケースを例にあげると、本案は、昭和二四年九月一日Xが土地をA会社に賃貸したところ、二六年回一月二九日になってAは借地権をYに譲渡したので、XがYに対し、無断譲渡を理由に土地の明渡しを求めたものです。裁判所は、XはAに賃貸した際、権利金を30万円受領しており、この額は、二六年一二月二九日現在の借地権の価格35万円から推量すると、二四年九月一日における借地権の価格にほぼ匹敵し、この頷を受領することによって、Xは完全に借地権の価格を回収したものということができる旨を判示したあと、「このように土地の所有者が当該土地の借地権の価格に相当する対価を得て借地権を設定した場合には、賃借人がその後借地権を他に譲渡するについてあらかじめこれを承諾したものと解するのが相当である。ただし、借地権の価格が土地所有権の五割ないし八割に達することは、当裁判所に顕著な事実であって、このことは借地権が土地の機能の大半を利用し得ることを物語るものである。借地権の設定された土地所有権は、その残滓に過ぎず、主として地代収取の権能にその意義を見出すに過ぎない。従って自ら意識して借地権をその対価を得て設定した土地所有者は、残る地代取得の権能を留保したことに満足したものであって、賃借人が借地権を他に譲渡するについて承諾を云々する権利を放棄したものというべきである。もしかような場合にも土地所有者に承諾を拒否する自由ないし権利が与えられるとするときは、すでに所有権の価値の大半を回収しながら更に完全な所有権を回収する途を開くことになるのであって、その結果は土地所有者に不当な利得を与え、その強欲を満足させる以外の何ものでもない。」と述べ、権利金の受碩を承諾の意思表示あったものと解しています。

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借地権設定の際に、借地人から地主に対して権利金という名目で一定の金銭が交付される慣行が一般に広く行なわれています。もちろん、その性質とか金額については、地方の慣行とか契約の内容などによりまちまちで、地価にほぼ相当する程度の多額の権利金が授受されている場合がある一方、契約の一種の保証的な意味で少額の権利金が授受されている場合もあります。ある調査によれば、東京などの大都会においては更地の価格の70%から90%までが権利金として支払われるのがふつうとのことです。
このような多額の権利金が交付されているときは、この判例が言い尽しているように、借地権譲渡の意思表示ありと解すべきでしょう。本問の場合、地価の80%に当たる権利金を支払っているのですから、当然この理があてはまることと思われます。したがって、まずこの点を主張すべきでしょう。とはいっても、その土地が繁華街にあるなどの特殊事情により、もっと多額の権利金が授受されるのがふつうであるというような場合ですと、あるいはこのように解せられたかもしれません。結局は、権利金の額、授受の際の具体的事情あるいは慣行などを考慮して、各事案ごとに決する以外にはないということになります。したがって、もし周囲の事情から、支払われた権利金の額が借地権価格の相場に満たず、黙示の承諾ありと解してよいのかどうか不安であるというような場合には、裁判所に譲渡許可の裁判の申立をするほうが無難だと思われます。この裁判をするにあたって、裁判所は権利金授受の事実をも考慮にいれなければならないことになっていますから、多少の金銭的負担を覚悟しておられる場合には、おおむね満足すべき結果がえられることと思います。

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