譲渡担保と借地権譲渡

所有地をAに賃貸し、Aはその上にアパートを建て、自分もその一室に往み、他の部分を他人に貸して暮していました。数カ月前にアパートの名義人が代わったらしいという話を聞き、調べたところ、AはアパートをBに売り、建物の登記はB名義になってました。ただ、AがBの差配として借室人から間代を取り、Bに納めているらしいことが分かりました。そこで、借地権の無断譲渡を理由に、Aに借地契約解除の通知をしましたところ、Aはアパートの間代の収入で漸次返済して行く約束でBから借金をし、その借金の担保にアパートを譲渡担保に入れただけだから、借地権譲渡などはなく解除は無効だといっています。法律上はどうなるのでしょうか。
融資を担保するために被融資者(債前者)が財産を融資者(債権者)に移転する慣習法上の担保制度を譲渡担保といい、取引界においては売渡担保、売渡抵当などの名称でもよばれています。広い意味の譲渡担保の中には、財産の移転を売買の形式によって行なう買戻とか、再売買の予約なども合まれますが、普通、債権の担保のためという当事者間の約定によって目的物の所有権が債権者に移転する場合だけを譲渡担保といいます。譲渡担保は目的物の占有を移転することなく担保に供しうる点に特徴をもっています。つまり、目的物の所有権を債権者に移転はするが、債務者はこれを債権者から借り受け、従来同様それを使用するという形態をとるのがふつうです。ですから、抵当権制度が原則として認められていない動産の場合にこれを利用するのが多いのは当然ですが、抵当権制度の認められている不動産の場合においても換価方法が手続的にきわめて破格なために、これを利用する例は決して少なくないようです。
譲渡担保当事者の間では、目的物は債権者に帰属し、債権者はこれを担保の目的のために所有するという債務を債務者に対して負担することになりますが、第三者からみれば所有権は完全に債権者に移転していますから、第三者は債権者のみを所有権者として扱えばよいということになります。

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土地

本問で借地人の弁明が真実であると前提して、考えましよう。この場合がそうであるように、借地上の建物が譲渡担保に供された場合に、建物所有権が債権者に移転するのは当然ですが、これに伴って借地権の譲渡が行なわれたものと解すべきかどうかが問題になります。これには二つの考え方があります。
(1)建物は土地なくしては存立不可能です。したがって、この点を強調すれば、建物所有権の譲渡は借地権の譲渡を伴うということになります。そこで、借地上の建物の譲渡担保においては、事前に地主の承諾を必要とし、これがえられないときには、借地法九条の二の規定により譲渡許可の裁判の手続をとることができるということになります。地主の承諾をえずに無断で譲渡担保に供した場合には民法六一二条二項により借地契約の解除原因となります。もっとも、地主に解除権が発生するためには、借地人に背信行為がなければなりませんが譲渡許可の裁判の申立が可能となった現在、この手続をふまないと、それだけで背信行為ありとの認定を受け、借地契約が解除されることになりかねないものと思われます。
(2)建物の譲渡担保は、たしかに、建物の所有権を債権者に移転はしますが、債務者が引き続きその使用を許されているかぎり、土地の使用状況には変化がないわけです。したがって、この点に注目すれば、借地上の建物の譲渡担保は、通常、借地権の譲渡を伴わないということになります。この見解によれば、借地権の譲渡はないのですから、地主の承諾を要しないのはもちろんのこと、無断で譲渡担保に供したとしても、地主に解除権が生じないのは当然だということになると思われます。
それでは上述の(1)と(2)のいずれが妥当でしょうか。権利の帰属を観念的にとらえるかぎり、建物所有権の譲渡は必然的に借地権の譲渡を伴うという(1)の言い分はもっともです。しかし、これは、債務者が建物を譲渡しても、引き続きそれを使用しているという実状をあまりに無視しすぎているきらいがあります。そのうえ、この見解をとるならば、譲渡担保に供する際に、地主の承諾またはこれに代わる許可の裁判を要するばかりでなく、債務者が弁済期に元利を合せて返済したとき、債権者から債務者への借地権譲渡に再びこの手続をくりかえさなければならないということになってしまいます。これは非常に繁雑であるばかりでなく、これでは譲渡担保の機会をみすみすのがしてしまうことになりましょう。したがって、(2)をとるべきだと思われます。最近の学説の傾向もこの立場に賛成のようです。
この問題についての下級審の判例は、おおむね地主の解除権を否認しています。しかし、その理由づけについては二つに分かれています。ひとつは、特段の事由がないかぎり借地権の譲渡、転貸はないとして(2)の立場をとるものであるのに対し、他のひとつは、借地権の譲渡、転貸ではあるが、地主に対する背信行為と認めるに足りない特段の事情があるから、解除 権は発生しないと、説き(1)の立場に立つものです。後者は、借地法九条の二の規定がないときの判例ですから、今後はたしてこの態度をどこまで維持できるかは疑問です。それはともかく、下級審はこのように二つに分かれていますが、最高裁の判例はまだ現われていません。しかし、広い意味の譲渡担保に含まれる買戻約款付売買 のケースにおいて、最高裁は、債務者つまり借地人が建物譲渡後も引き続きその使用を許容されていて、土地の使用状況には変化がなかったという原審の認定した事情から、本件建物の譲渡は債権担保の趣旨でなされたもので、いわば終局的確定的に権利を移転したものではなく、したがって、建物の譲渡に件い、その敷地である本件土地について、民法六一二条二項所定の解除原因たる賃借権の譲渡または転貸がなされたものとは解せられないから、上告人(地主)の契約解除の意思表示はその効力を生じない」と判示して(2)の立場を支持したものがあります。したがって、最高裁はおそらく譲渡担保の場合においても同様に解するのではないかと思われます。
つまり本問の場合に、解除の主張をすることができないということになるものと思われます。

土地
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