急を要する借地権譲渡

借地を借り、その上に建物を建てて住んでいます。急に他県への転勤が決まりまり、建物を処分しなければならなくなり、買い手も見つかりましたが、地主に名義書換の承諾を頼みに行きましたら、断られてしまいました。とても裁判所に行って裁判をしてもらう時間的な余裕がないので、どうかればよいのでしょうか。
取引界においては、借地権の譲渡または転貸に際して、地主が名義書換料もしくは承諾料の名目で一定の金銭を請求する慣行があるようです。名義書換を断わられたのは、このような慣行を知らずに手ぶらで頼みに行ったためではないでしょうか。もっとも地主が断わった理由はもっとほかの点にあるかもしれませんが、もう一度、名義書換料支払の意思のあることをほのめかして交渉してみる必要もあります。案外簡単に承諾がえられるのではないかと思います。ただしこの場合に、足下をみられて法外な金銭を要求されることのないよう注意することが肝要です。
次に、借地の所在地を管轄する簡易裁判所に調停の申立をする方法が考えられます。調停は、裁判所が当事者を仲介し互譲により合意を成立させることを目的として生まれた制度で、裁判官一名と民間人二名以上から成る調停委員会のもとで、当事者間の話合いによって、紛争を早期に解決することをねらいとしております。この制度の長所は、裁判によって黒白か二挙に決するというものではなく、あくまでも当事者の自主的な合意の成立をまつという柔軟性に富んだ解決がはかられる点にありますから、地主と喧嘩分かれをしたくないという場合にはよい方法だと思います。しかも、調停には、当事者に出頭義務が課せられており、不出頭の際には法律上の制裁を受けることになりますから、地主が、はじめから面会を拒絶して話合いに応じない場合に、話合いの糸口をつけるという効用をも果たしますので、この場合の最良の方法といえましょう。調停に要する期間は事件によってまちまちですが、うまく話合いがまとまれば、わずか一回の出頭で調停成立ということも不可能ではありません。ただ、この制度は、当事者の合意によって紛争を解決するのを目的とするものですから、話合いがまとまらなければ、結局、調停不成立となって、それまでの努力は水泡に帰してしまいます。したがって、相手方が頑固で、いかなる条件を出しても絶体に借地権の譲渡または転貸を承諾しないという場合には、あまり有効な方法とはいえないようです。

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土地

地主が承諾しない場合には、借地法九条の二の規定によって、裁判所に地主の承諾に代わる許可の裁判を申し立てることができます。この裁判は、いわゆる非訟事件とされていますが、それはこの裁判が権利の内容を変更するという一種の形成的なものであって、性質上、非訟事件と考えられることのほかに、訴訟によると解決までに時間がかかって、当事者の真の救済がえられなくなるおそれかおることを考慮したためであるといわれています。したがって、従来この種の紛争が訴訟によって解決されていたのと比較するならば、かなり迅速化がはかられることと思います。
ここで考えつくのは、この裁判の継続中に、仮の地位を定める仮処分的な中間裁判、つまりとりあえず譲渡に代わる許可だけを与え、これに付随する条件、たとえば地主に対する財産上の給付などについてはあとまわしにする、という形式の裁判はできないだろうか、ということです。もしもこのような裁判ができれば、あなたにとって非常に好都合だと思います。しかしながら、一般に借地権を合む建物の譲渡価格というものは、地主にいくら払うかという対価を考え合わせた上できまるものです。したがって、許可が与えられたからといって直ちに売却してしまいますと、あとから予想以上の金額を地主に支払えという裁判がされたりして損をするというおそれもないではありません。そこで許可が与えられても、地主に支払う金額が確定しない以上は、譲渡はなかなかできないのではないでしょうか。そのほかにも難点がありますので、このようにまず許可だけを与える裁判のなされる余地はないと思われます。
地主が借地権の譲渡をどうしても承諾せず、またこのいずれの方法もとりうる時間的余裕のない場合に考えられる手段は、借地権を建物とともに無断譲渡し、譲受人から地主に対して、借地権の譲渡を承諾せよ、しからずんば建物を買い取れ、という請求をしてもらうという方法です。この買収請求権を行使されますと、地主は、承諾を与えないかぎりどうしても買い収らなければならないことになっています。したがって、地主がその建物を買い取ることを欲しないか、または買い取るだけの資力をもたない場合には、承諾を与えなければならないというはめに落ちいりますから、この制度は地主に対して承諾を間接的に強制する作用を営んでいるといえます。
しかしながら、実際の取引においては、借地権は大きな価格をもち、借地権付き建物の譲渡価格の大部分を占めているようです。にもかかわらず、判例によれば、買取請求に対して支払わるべき建物等の時価の中には、借地権の価格は合まれないと解していますから、買収価格は譲受人が買ったときの価格の何分の一というように、きわめて低い値段になっているのが現状です。したがって、地主が買取請求されることをおそれて承諾を与えるということは現実にはほとんど考えられないもののようです。しかもこの請求権は、譲受人が行使しなければならないものですから、本問の場合のように、買手が譲り受けることにためらっている段階では行使のしようがありません。しかし、いざとなればこういう方法も使えるぞ、という取引の手段として、地主との交渉の際に使われるならば、案外効果的であるかもしれません。

土地
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