区画整理で土地を削り取られないためにはどうしたらよいか

私は、主人の定年も近いので、近郊に小さな土地を買い、家をたてるのを楽しみにしていました。ところが、最近、この地域に区画整理が行なわれ、土地が削られると いう話をききました。私のように、ほんとうに苦労して土地を買ったものにとっては、たとえ一坪でも二坪でも、けずられることは大変なことです。ただで人の土地を取り上げるというようなことがほんとうに許されるのでしょうか。

 区画整理は、現在、日本各地で行なわれています。なぜ、政府が、区画整理がよいかというと、区画整理は、減歩という形で、土地所有者から一定割合の土地を提供させ、そのでてきた土地を道路その他、公共施設の用地にあて、その地域の整備を行なうことができる方式になっているからです。端的にいえば、この方式をとった場合には、事業者には買収方式とちがって、金を使わずに用地が手に入るという利点があるわけです。逆にいえば、区画整理事業地域にある土地所有者にとっては土地をただどりされることになります。そこで、この区画整理事業に対し、各地の住民が反対運動にかもあがっているのです。
 区画整理に反対する住民によってつくられている「区画整理対策全国連絡会議」という組織がありますが、ここでは、住民の利益に反する区画整理事業に反対する住民が、連絡をとりあって、民主的街づくりを考えて運動をすすめてきています。

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土地

憲法第二九条には、私有財産の保障が規定され、ただ公共のために用いるときは正当な補償のもとに、収用、使用ができる、とされています。ところが、区画整理では、無償で土地を提供させられるのですから、この憲法の規定に反するのではないかという疑問が当然起こります。これに対して、行政側の考え方は、土地区画整理事業が、公共施設の整備改善とともに、宅地の利用の増進をはかるために行なわれるものであるから、その利用が増進する範囲内で減歩をうけるかぎり、利害関係者に損失を与えることにならない、つまり、区画整理事業が行なわれ、街が整備されることによって利用価値もあがるし、土地の価値があがるから、減歩されて土地の面積が減っても、損失はないという解釈です。
 区画整理は、土地区画整理法という法律にもとづいて行なわれます。この法律の制定は昭和二九年ですが、それ以前は特別都市計画法により、同一の手法により関東大震災の後に震災復興土地区画整理事業や第二次大戦後は戦災をうけた都市を復興するために戦災復興区画整理が、各地で行なわれました。ところが、近年の事業をみると、住んでいる住民の意思とはかかわりなく、自治体が幹線通路の用地を取得するための手段としての区画整理が行なわれることが多くなりました。このことは、昭和四三年に対比して昭和四四年度の区画整理施行が二倍以上になっていることからも明らかです。この場合は、住民の生活環境をよくするためではなく、ただ道路用地を住民の負担の中で生み出すためだけのものとなります。地域住民にとって、三〇メートル、四〇メートルの幹線道路は、公害と交通事故を生み出すだけのものですし、今まで道路に面して商売をしていた商店が、幹線道路に面したため、通過するのは自動車だけで、地域の人は交通事故の危険のため道路をよこぎっては買物にきてくれなくなるということにもなり、住民にとっては、決して宅地の利用の増進にはならないのです。住民は、住宅として土地をもっているのであり、投機のために土地を所有しているのではありませんから、幹線道路ができて、土地の価値が上がったから満足しろ、と言われても納得できないのは当然のことでしょう。
 まず、区画整理事業を行なうには、その施行区域が都市計画区域内に合まれていなければなりません。都市計画区域の決定は、都市計画法にもとづいて決定されますが、この区域に属さない農村部では、区画整理はやれないのです。
区画整理の目施行者は誰かというと、個人施行、組合施行、自治体施行、行政庁施行、公団施行、の五つと定められています。この中でもっとも多いのが市町村の行なう自治体施行であり、組合施行も最近だんだんふえてきつつあります。
 組合施行というのは、土地所有者や借地人が、土地区画整理組合をつくって、区画整理をやる方法です。組合をつくるには、対象となる土地の三分の二以上の面積をもつ土地所有者と借地人の同意、並びに対象区域の土地所有者と借地人のうち三分の二以上の数の者の同意があることが必要です。この条件がそろえば、組合が成立し、それ以外の人が反対でも、区画整理事業を施行する権限をもつことになります。
 区画整理事業をやるうと決定すると、地方公共団体の施行の場合には事業計画を作成し、これを住民に縦覧させなければなりません。組合施行の場合は、組合の定数及び事業計画を作成し、知事の認可を申請しなければなりませんが、この申請がなされると、市町村が事業計画の縦覧の手続をとります。この事業計画の縦覧の段階で、自治体施行の場合も組合施行も利害関係人は意見書を提出し、この事業に対する意見を述べることができます。
 以上の手続を経て区画整理事業が決定されると、減歩、換地、清算という内容で事業がすすんでいくわけです。
 減歩というのは、簡単にいうと、現在もっている土地から(これを従前の土地といいます) 区画整理の後の土地は何坪に減るかということです。もっとも事業計画の段階では、いわゆる平均減歩率というものが決められるだけで、個人の土地の減歩の坪数までははっきりわからないのです。平均減歩率というのは、この区域内で、これから新しくつくられる道路などの公共用地にどれ位の土地面積が必要かを計算して区域内の土地所有者の土地をどれだけ減らせばよいかを平均的に算出するものです。これを公共減歩といいます。これ以外に、保留地減歩というものがありますが、これは整理後売却して、区画整理の事業費にあてるためにとっておく土地を生みだすための試歩であり、この二つの目的のために必要な土地の面積を基礎に、区域内の土地所有者の土地の総合計画の中で何割の土地を減らせばそれが生みだせるかを示すのが平均減歩率といわれるもので、大体二〇%から三〇%というのが各地の例です。
 しかし、この事業計画は、区画整理事業の概略であって、具体的に自分の土地がどうなるかは、換地計画によって初めてはっきりします。そもそも換地というのは、区画整理、以前の土地にかえて、整理後の一定の土地を代わりにやるということで、区画整理は土地の交換分合であるといわれるゆえんです。換地として与えられる土地は、従前の土地とまったくちがう場所になることもありますし、また現地換地といって、現在もっている土地が一部試らされただけで、それが換地として指定される場合もあります。
 いずれにしても、換地を与える場合には、照応の原則にもとづいて指定がなされねばなりません。わかりやすくいうと、従前の土地と換地として与えられる土地とが、大体同一の条件にあることが必要であるということです。この原則からすると、減歩の率も同率で行なわれることが最もよいのですが、整理前の道路の位置や利用状態によっては、一率の減歩が行なえない結果が生まれます。この場合、区域内の所有者間の換地処分による不公平を金銭で是正しようというのが清算金とよばれるものです。換地処分の結果、減歩の少なかった人、あるいは道路に面した土地を換地として指定された人は他の人より利益があるとして、減歩の上に清算金をとられることになります。
 区画整理事業は、整理によって土地の価格が上がったことを前提にして、すべてが処理されていきます。しかし、従前の土地と整理後の土地の評価は、評価の方法によって左右され、それほど客観性をもつものではなく、真に土地所有者のために土地利用の増進があるかどうかを中心に区画整理事業を施行すべきかどうかを決定されるべきです。
 通過幹線道路などは、当然、国や地方自治体の負担によりなされなければならないので、住民の土地を利用して、住民の負担でつくることは明らかに間違っています。さらに、減歩のみでなく、清算金に至っては、最も問題があるといえるでしょう。清算金算出については比例清算方式という算出方法がとられますが、これは、施行区域全体の区画整理施行前の宅地評価の総額と区画整理施行後の宅地評価の総額を同額にして、両者の比例価額を出し、清算金の出し入れを決めるわけで、たまたま土地の評価を高く見積られ、他の人より有利であるとみられれば、減歩の上、清算金を多額にとられる結果になり、二重の負担を負うことになります。
 このように、区画整理事業については、さまざまな矛盾があり、住民の土地に対して住民が納得できない事業のために土地を勝手にとりあげているという面が強くみられます。区画整理事業の区域決定においても、大会社の土地は、区域外にはずして決定したり、道路をわざわざ迂回させたり、また、換地についても、ある特定の人間には有利な換地を指定したり、いろいろと恣意的なことが行なわれることがあるのは、区画整理方式というものが、現在の社会状況の中では、矛盾をもっていることを示すものと言えるでしょう。
 区画整理事業の施行区域が決定されると、自治体の説明会がひらかれます。これは、法律で義務づけられているわけではありませんが、ほとんどの自治体で行なわれています。このときに、いいことづくめの説明にごまかされないで、当該区画整理が、自分たちの土地に対してどのような影響を与えるのかをはっきり追及し、説明をさせる必要があります。この後、測量が行なわれ、事業計画が作成されますが、この事業計画を充分検討し、この事業が何の目的のために行なわれるのかをよくみきわめることが必要です。
 土地の面積が公簿上と実測とが異なることが多く、この場合、公簿上の面積で減歩率をだすと、実測の場合と比べてさらに実際の減歩率が高くなるという結果になるので、こうした点もよく調査をする必要があります。減歩についていえば、区域外に自治体の土地がある場合には、これを区域内に指定することによって、住民からの減歩の幅を減らすことが可能となりますから、こうした区域決定の内の土地についての調査をし、区域決定が合理的であるかどうかを研究することが必要です。このようなことは、地域の住民の力を合わせないと不可能ですから、住民の運動としてすすめていくことが大切です。
 この調査にもとづいた意見をまとめて事業計画の縦覧に対する意見書を作成します。この意見書は都市計画審議会で審議されますが、意見書は単に出せばよいということではなく、意見を口頭で陳述させるように要求し、住民の参加のもとで審議することを認めさせましょう。意見書の審議は、行政不服審査法にもとづく手続で行なうことになっていますから、同法に保障された住民の権利を充分に活用すべきです。
 たしかに、私たちの都市は、下水道の設備や道路の整備については不充分で、住宅環境として改善を要求すべきところがたくさんあります。自治体は、区画整理によってそれらの整備をやるのであって、反対されるとこれができず、住民の不利益になるといっておどかすところがあります。しかし、これら都市生活環境の整備は、当然、住民意思の尊重という大前提にたち、国々地方自治体の責任においてなされるべきであって、一部住民に犠牲をしわよせすべきではありません。区画整理に反対する住民の中では、これらの自治体の怠慢を追及する中で、ほんとうに自分たちの住宅環境をよくするためには、どのようにすべきかを考える会にまで発展しているところが沢山でてきています。真に民主的な方法で都市生活環境の改善整備をすすめるように、政府や自治体の姿勢を変えさせる運動が、決宅的な重要性をもってきていると言えましょう。

土地
都市計画を理由にした土地収用に反対するにはどうしたらよいか/ 土地収用をされるときに納得できる補償額を得るには/ 区画整理で土地を削り取られないためにはどうしたらよいか/

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