土地収用をされるときに納得できる補償額を得るには

私の家が道路計画にかかっているので土地を売ってほしい、と市の人がやってきました。どうせ、公共事業なので反対しても駄目だから、市から言ってきている金額で売った方がよい、という人もいますが、私は、あまりに安い値段なのて売る決心がつかないのです。反対して収用されれば、よけい補償金は安くなるといかれますが、ほんとうでしょうか。また、正当な補償額というのはどういうものなのでしょうか。

 自治体が道路などをつくる場合には、まず、その用地になる土地を手に入れなければなりません。そのために、土地を買収にくるので、これを任意買収方式による取得といいます。土地を持っている人が、みんな任意に売ってくれれば、この任意買収方式で道路用地が手にはいるわけですが、この場合には、当然、引換条件や補償額等について、当事者の同意を得ることが前提となります。
 任意買収方式が成功しない場合には、公共事業として、土地収用法に基づく事業の認定の申請をしておいて、補償額を決定し、土地の所有者に額を提示します。しかし、ここでも納得をえられない場合は、土地収用委員会に裁決の申請をし、補償額を裁決によって決定することになります。これを任意買収方式に対して、俗に強制買収方式とよんでいます。
 実態をみると、公共用地の取得はほとんど任意買収によって行なわれており、強制買収は僅かであるといわれています。ところがこれは、自治体が、権力的なやり方をとらず、大変穏やかに取引によって公共用地を取得していることを意味するのではなく、むしろ、どうせ反対しても、強制的に収用され、立ち退かされるのであるし、そのときの補償金は、当然低く押さえられるから、今、売った方が得ですよ。というアメとムチの交渉によって、土地の取得が行なわれているのが実情であるといえます。
 では、はたして任意買収の額と土地収用法による収用裁決の補償額とが、違いがあるがといえば、実際はほとんど差がありません。これは、昭和三七年六月一九日、政府が公共用地取得に伴う損失基準要綱という補償の一般的基準を閣議決定しており、それが任意買収、強制収用のいずれにも適用されているからです。

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土地

損失基準要綱による補償は、どのような原則を定めているか説明しておきましょう。
 (1) 土地等の財産権に対する補償である。従って、それ以外に土地を奪われたことによって生活の基盤を失われたことに対する補償はしない。
 (2) 土地の補償額算定の時点は、任意買収のときは契約締結時の正常な取引価格、収用のときは事業認定の告示のときの価格に裁決までの物価変動率をかけたものとする。取引価額は、近傍類地の取引価格を基準として定める。
 (3) 通常生じる損失の補償としては移転料、立木補償、営業補償、漁業補償、残地補償その他とする。
 (4) 補償は金銭補償を原則とする。代替地による補償は例外的なものとして、起業者の倫理的な義務として行なわれるに止まる。
 (5) 精神的損失に対する補償にしない。
 以上の原則に基づいて補償金額が決定されます。しかしながら、どの公共事業においても、決して、土地を立ち退いて移転する人のうける損失を、充分補償しうるものとはなっていません。
 まず、土地についていえば、土地収用法の改正前は、土地収用法に基づく、「補償裁決の時点での土地の価格」が補償の基準点になっていたのが、「事業認定の告示の日」と変更されました。現在のように、土地の値上がりの急速な時代に、これがまったく実情に合わないことは明らかです。
 土地以外のものに対する補償については、補償項目として次のものがあります。
 建物移転補償、仮住居補償、工作物移転補償、動産移転補償、移転雑費、家賃減収補償、営業損失補償、立木移転補償
 ただ、収用される人に示されるのは、この項目の金額だけであって、どういう根拠で計算されたものかはわかりません。例えば、建物移転補償は

 1平米当りの推定再建設費×移築補償率×建物延面積=建物補償

として計算されます。
 推定再建設費は、現在ある建物を建築するとすればいくらかかるかというものですが、この評価は、建物の等級により一平方米あたりの金額がきまるわけです。移築補償率は、建物の建築年数により、何年は何%としてきめられます。
 しかし、ここに矛盾があるわけで、建物をとりこわせば、その材料でそのままの建物を再建することは不可能であり、いやでも新築をしなければなりません。従って、この補償金額では、とても他に土地を買って移ることは困難なことになってしまいます。
 また、営業補償についても、要綱第三二条一項によれば、営業補償の内容としては、休業中の営業用資産に対する固定的経費及び従業員に対する休業手当相当額、通常休業を必要とする期間中の収益叔、休業することにより、または、店舗等の住設を変更することによって得意先を喪失する場合は、それによって通常生じる損失額、とされており、この通常休業を必要とする期間については三〜六ヵ月とされています。
 しかし、これでは、立地条件の差による収益減少や休業することによってうける収入減はなんら補償されません。憲法第二九条は、公共の用に国民の財産権を収用するときは、正当な補償をすべきことをうたっていますが、現実の土地収用における補償の実態は、これとはかけはなれたものになっているのです。
 正当な補償というためには、同等の生活環境を再建できる補償でなければならないはずであり、そこで、金銭補償ではなく、代替地、代替建物をほしいという要求が住民の中で出てきています。しかし、土地収用法自体では、収用されるものは起業者に対して替地を要求することができ、収用委員会は、相当とみとめるときは、替地の提供を勧告することができるとしているだけで強制する力がありません。しかし、財産権保障では、生活再建ができないという強い運動の中で、ダムによる水没部落については、一定の行政措置として、生活再建計画がたてられ、移住地の造成や資金融資が行なわれてきています。
 東京都でも、公共事業による立退者に対して、低利の融資制度を設置していますし、また、借家人に対しては都営住宅への優先入居の措置をとるなどが、これまでの運動の成果として行なわれてきています。

土地
都市計画を理由にした土地収用に反対するにはどうしたらよいか/ 土地収用をされるときに納得できる補償額を得るには/ 区画整理で土地を削り取られないためにはどうしたらよいか/

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