都市計画を理由にした土地収用に反対するにはどうしたらよいか

私の家の前に二〇メートル幅の高速道路をつくる計画があり、私の家もその計画にかかって土地をあけわたさなければならないときかされました。都市計画としては、数年前にきまっていたといいますが、私どもにはまったく寝耳に水でびっくりしています。私はここで商売をして生活をしてきましたので、今さら他の場所に移れといっても無理な話です。このような場合にどうしたらいいでしょうか。

 憲法第二九条は、第一項で「財産権はこれを侵してはならない」として、所有権の保障をうたっていますが、その第三項では、「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用いることができる」と規定しています。つまり、憲法によっても、その事業に公共性があること、正当な補償がなされることを条件に、国民の私有財産である土地や家をとりあげることができる建て前になっているのです。
 しかしながら、現在の高速道路や新幹線は、排気ガスや騒音といった公害発生の原因をつくり、また交通事故を増加させるなど、地域住民に大きな災難をまき散らしています。この狭い日本の中で、住民の被害もかえりみず、多くの大型幹線道路や新幹線をつくるというのは、明らかに産業、経済優先の考えによるもので、国民全体の福祉のための公共事業といえるかどうかはなはだ疑問です。また補償についても、決して充分なものではありませんので、現在すすめられている土地の収用はほとんど、憲法第二九条三項の要件に合致していると言いにくいものばかりです。だからこそ、土地収用の対象になった住民の多くが、反対運動にたちあがっているのです。

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土地

土地の収用をしていく手続は、「土地収用法」という法律によってすすめられます。道路の場合は、都市計画によるものが多いですが、その他にも、土地を収用することができる公共性をもつ事業の範囲が、土地収用法第三条できめられており、ここに列挙されている種類の事業は、土地収用法にもとづき、強制的に土地をとりあげることができることになります。
 これらの事業を行なう者を、法律では起業者といいますが、たとえば、都や市など地方自治体であったり、また、道路公団であったり、日本鉄道建設公団であったり、さまざまの場合があります。
 起業者は、その事業のために土地を収用しようとするときは、まず、事業認定をうけなければなりません。起業者が、国、都道府県であるとき、またはその他の特殊の事業のときは、国土交通大臣に対し、市、町、村その他の事業者の場合は都道府県知事に対して、事業認定の申請をします。事業認定の申請がなされたときは、市町村長はこのことを公告し、公告のあつた日から二週間、その書類を住民に縦覧させなければならないことになっています。住民が、この事業にもとづく土地の収用に対して、法律手続上、何かをいえるのは、まずこのときであって、この縦覧期間内に知事に対して、意見を提出することができます。
 事業認定がなされると、起業者は、収用する土地については地番、土地の面積、所有者の住所氏名、収用しようとする土地の面積を記載した土地調書、家屋その他土地の上にある物件については、家屋その他のある土地の所在、地番、数量、所有者の住所氏名、建物については床面積、構造などを記載した実測平面図をつけた調書を作成しなければなりません。そしてその一方で、起業者は、当事者と買収の交渉などを行なうわけですが、事業認定の公示のあった日から、一年以内に、土地収用委員会に収用裁決の申請をしなければ、事業認定は効力がなくなります。
 そのような手続を経て、いよいよ裁決の段階にはいるわけですが、収用委員会では、起業者と収用される者の双方を呼びだして審理を行ないます。当事者は、収用委員会に対し意見書を提出することができます。
 しかし、収用委員会は、特別の例外的場合を除いては、収用、使用の裁決をしなければならないことになっていますから、収用委員会の審理は収用を前提としたものと言うことができます。また、この裁決によって、収用される土地、物件の権利を失う時期や補償金額が決められることになります。
 補償額や収用に不服があれば、行政訴訟で争うことはできますが、訴訟を提起しても、収用裁決によって、土地や建物の所有権は起業者に移るので、事業自体の停止はできないことになります。
 以上が、土地収用法の大まかな流れですが、これをみると、一度、事業地域にくみこまれ、事業認定がなされると、住民は何もできないようにみえるでしょう。たしかに、この法律はそういう建て前でつくられていることは明らかです。しかしそれでは、住民は高速道路ができることに対して反対はできないか、というと、実際には住民が力を合わせるなら、いろいろな運動をすすめていくことができます。
 そのためには、この事業の計画をできるだけ早く知ることが大切です。都市計画にもとづく道路など、地方自治体が起業者になって行なう事業についていえば、この計画を実行するために測量をすることが必要ですから、予算にその費用が計上されます。もし住民の側に立つ議員がいる場合は、その計画を早く知ることができるでしょう。その段階で、地域の人たちが集まって相談し、この計画が住民のためにならないならば、請願とか、陳情とかの方法で、それを白紙にもどすよう関係当局や議会に働きかけるのが効果的でしょう。
 事業計画がたてられると、事業認定を申請するまでの間に、準備のための測量が行なわれます。この測量のための土地の立入りは、事前に住民に通知をすることになっていますから、関係住民がこの測量に対し、どこまでやらせないでがんばれるか、ということも大きなわかれめとなります。納得のいく補償額を示さなければ測量に同意しないとか、事業についての説明があるまでさせない、とか、各地で、それぞれの実情にあわせた運動の方法をあみだして頑張っていますが、これらの貴重な経験をよく学ぶ必要がありましょう。測量反対にどれだけの力を結集できるか、起業者側をどれだけ孤立させることができるか、が、後の運動に大きな影響を与えることになります。
 事業認定の申請がなされた場合には必ず多くの人の意見書を提出し、事業認定については、住民の意見を充分慎重に審議してきめるように認定の権限をもつ自治体に、請願、陳情すると同時に、公聴会の開催を要求して、住民の意見を反映させることに努めるべきです。土地収用法では、「その土地を当該事業の用に供することが土地の利用上、適正且つ合理的であるときは、この法律の定めるところにより、これを収用し、又は使用することができる」とされているのですから、その事業が、ほんとうに公共の利益になるものかどうかを住民の運動の中で明らかにさせていくことが大切です。地方自治体の側も、このような住民の要求に応える積極的な姿勢を要求されています。
 土地収用に対抗するには、どうしても住民の固い団結がなければなりません。たとえば、環状八号線の場合、関係住民は地域毎に反対の会をつくり、測量についても住民の納得のいく段階まで実施を延ばさせ、また、補償についても、一人がみんなのためにという合言葉で生活再建を可能にするように運動をすすめて、大きな成果をあげました。この経験は、被害をうける人が、それぞれ自分だけのことを考えるのではなく、被害を共通にしているというところで、いっしょになって考え、行動していくことが必要なことを示しています。

土地
都市計画を理由にした土地収用に反対するにはどうしたらよいか/ 土地収用をされるときに納得できる補償額を得るには/ 区画整理で土地を削り取られないためにはどうしたらよいか/

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