得意先が減った場合の営業補償

 川の上流にダムがつくられることになり、集落の大半が水没することになりました。A商店は、この集落の住民を相手に、唯一の雑貨商として繁盛していましたが、五集落一四二戸のうち八七戸が他町村に移転し、三六戸は他集落に移築することになったので、従来の営業を継続することが困難となりました。この場合、商店は収用にかからぬが、補償の請求権があるのでしょうか。

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 ダムを設置するような場合、常にこうした問題が発生して、その解決に困難をきたしています。たとえば、寺といったものは、何十戸か、何百戸の檀家があって、はじめて、その維持管理ができるわけです。ところが、寺は高台にあったので何一つ、収用にかかることはありませんが、集落がバラバラに移転してしまったために、何百戸の檀家で地元に残る家は、わずかに七戸しかないという場合、住職は生活もできないし、檀家も負担に堪えきれなくなります。この場合、だれが責任を負うか、という問題が生じます。
 理論的にいうと、何一つ、収用されるものがないところに、収用補償の問題は生じないわけです。しかし、そこにダムがつくられなければ、檀家が消えたり、お得意が減ったりすることはありません。そうすると、直接の被害者ではないが、間接の被害者として、損害は現実に発生しているのだから、それはやはり起業者に負担してもらうほかないわけです。
 ところで、これを損害賠償の問題として、取り上げようとすると、不法行為を規定した基本原則である民法七〇九条は「故意又ハ過失二因リ、他人ノ権利ヲ侵害シタル者ハ」と条件づけてあります。収用裁決というものは、土地収用法という法律に基づいて実行するものだから、それは合法的なものです。合法的である限り、それは形式的にみて「他人ノ権利ヲ侵害」するようにみえても、そこには「故意又ハ過失」はない。そうすると不法行為に基づく損害賠償は成り立たないのです。だから、その損害を、不法行為を理由とするわけにいきません。
 しかし、現実には損害があります。そこでこれを救済するために、少数残存者補償という理論を考え、「公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱」という閣議決定の形式で発表された補償基準にも、四五条で、これを規定して救済を図ったものです。一種の社会政策的規定です。
 この規定によると、補償を受けることのできる者は「生活共同体から分離される者」です。そして補償条件としては「受忍の範囲をこえるような著しい損失があると認められたとき」です。またその補償の範囲は、「個々の実情に応じて、適正と認められる額」です。具体的には、従来の商業帳簿、貸借対照表、営業報告書、損益計算書等が、基本となります。会社でない小商人等であれば、仕入帳、売上帳、金銭出入帳等が、基本となるであろうし、寺のような場合は、檀家の戸数などの数字その他具体的事情によ る。そして、この補償は被害者の「請求」により補償されることになっています。

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