収用の際の移転料はいくらもらえるか

 A氏は、満州開拓移民として渡満していましたが、終戦後内地に引き揚げ、岩手の山奥に、開拓農民として入植したものです。こんど、その開拓地がダムの湖底になるので、この機会に、郷里の鹿児島に帰郷したいと思いますが、その旅費等も、移転料としてもらえるものでしょうか。移転料としては、どのくらいが相場なのでしょうか。

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 収用される土地に物件がある場合、移転料が支払われることについては疑いがありません。なぜというのに、土地収用法七七条には「収用し、又は使用する土地に物件があるときは、その物件の移転料を補償して、これを移転させなければならない」とあるからです。
 被収用地にある物件というとなにか、という問題があるが、いちばん多いのは「建物」です。もっとも、山林とその上にある病院建物等を一括して収用するような場合は、建物も必要であって、それは移転する対象とはならないから、被収用地にある建物だからといって、いつでも移転料が補償されるというわけではありません。この場合は、買収補償がなされることになります。建物のほかに、庭木、工場の機械、井戸、溜池、といった独立の動産または土地と一体とならない施設等もまた移転料の対象です。
 そして、収用法には、もう一つ別の意味の移転料がある。つまり、日常生活に必要な家具、道具等、または店内にある商品のようなものを移転する場合に要する移転料である。これらは「土地にある物件」ではないから、収用法七七条の移転料ではなくて、同法八八条の規定する「移転」に伴う費用なのです。
 冒頭に示した実例にいう移転料というのは、主として、この後者の意味する移転料のことですが、これは原則として実費です。実費ではありますが、ダム設置で収用されるのを機会に郷里に帰るのに要する旅費、日当、その他郷里まで家財道具を運搬する経費等のすべてを支給してくれるわけではありません。
 それは、普通は、その被収用地から四キロ以内に移転するとして、その家財道具または商品が、トラック何台分に該当するかという計算をし、その積込費用、積卸費用等を含めて、一台五万円あるいは安い場所では一台三万円と算定して、これを基準に補償するものです。
 だから、岩手県から鹿児島県までといった運賃、旅費等は、収用から生ずる当然の損失ではなく、当人の個人的希望から生ずるものであるから、その分の費用を請求しても、それは収用上の損失でなく、また収用から生ずる当然の経費でもないから補償されることはありません。
 ただ、現実の交渉としては、そういう特殊事情を訴えて、正面から、帰郷費用を支出してもらうことはできませんが、建物も郷里に持って行くことはできないから放棄するわけだというような事情を話し、ほかの補償額を増額してもらうことで、調整するのが得策だと考えられます。
 移転料の額がどれだけかは、その所有物件に差があるから、一概にいえません。まったくケースバイケースです。

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