補償金に代え替地を要求できないか

 先代以来、表通りで洋服商をしていたA氏は、道路整備のため、店を撤去しなければならなくなり、替地の要求をした。ところが、市役所は、替地を渡さなければならない義務はないし、また替地に提供する場所もないという。強いて替地を要求するなら、収用委員会に申し出さないと突っぱねられました。

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 法律上の理屈はどうあれ、収用された土地代金で付近の土地を購入しようとしても、とても補償価格で、土地を売ってくれる者はないというのが現状です。
 その辺に、土地所有者の不満があり、また収用事件が起きると、多くの者は判で押したように、金はいらないから替地で補償してくれと要求するわけです。
 しかし、被収用者が考えているように簡単に替地があるわけではありません。それで、結局はゴネ得の方便として、替地を要求するように悪口をいわれるのです。
 しかし、必ずしも、そうでないのです。被収用者にとっては、自分の土地を取り上げるのだから、それと同じ方法で、起業者に提供する替地がないのならば、他人の土地を取り上げて渡したら、なんでもないではないかと思っているのです。それは、土地収用のできる事業は収用法三条に列挙されてあって、そこには収用の替地にするために、第三者の土地を収用していいとは書いていないから、できないのです。
 それでは、土地収用法は、全然替地を認めないのかといえば、そうではなく、八二条には「土地所有者又は関係人は、収用される土地又はその土地に関する所有権以外の権利に対する補償金の全部又は一部に代えて、土地又は土地に関する所有権以外の権利(替地)をもって、損失を補償することを、収用委員会に要求することができる」と規定しているのです。この規定によると、替地要求の請求権は、収用委員会にするのだから、つまり任意交渉の段階では請求できなくて、収用事件がこじれて、土地の収用裁決の申立てが、収用委員会に申請されて、その事案の審理中でなければ、請求できないのです。
 公共事業の用地取得は、ほとんど起業者の用地担当者と所有権者との間で、任意交渉で行なわれるのです。しかし、この段階では、起業者側に対して強制する権利はないのです。ただし、起業者も好意であって、義務ではありません。
 それなら収用委員会は、要求があれば、いつでも替地補償の裁決をするのかといえば、そうではありません。第一に、起業者側に、替地に適する土地がなければならない。第二に、その要求が相当でなければならない。第三に、替地を譲渡させても「起業者の事業又は業務の執行に支障を及ぼさないと認め」られるときでないと、替地補償を裁決することができないのです。第三者の土地を指定した場合は、起業者に替地の提供を勧告するだけです。

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